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エリザベス・テイラー

エリザベス・テイラー11 『クレオパトラ』3(3ページ)

エリザベス・テイラー
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作品名:クレオパトラ Cleopatra (1963)
監督:ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ
衣装:アイリーン・シャラフ/レニー・コンリー/ヴィットリオ・ニーノ・ノヴァレーゼ
出演者:エリザベス・テイラー/リチャード・バートン/レックス・ハリソン/ロディ・マクドウォール/マーティン・ランドー

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ローマがローマ帝国だった20世紀

子供が生めそうなふくよかな肉体。それが古代の美女の条件でした。

「子を産めぬ女は、水のない川と同じよ」とシーザーに迫るクレオパトラ。

クレオパトラ・ルック8 ナイトガウン
  • 三連のクリスマスツリーのようなおかっぱ頭
  • ペールパープルのフロントスリット・ナイトガウン、金の刺繍入り
  • その下にさらに薄いパープルのネグリジェ

全ては1960年に公開されたフェデリコ・フェリーニの『甘い生活』が頂点でした。そして、この前後の10年間こそが、ベニート・ムッソリーニが作り上げた20世紀のローマ帝国ともいえるチネチッタ撮影所の最盛期(『ローマの休日』(1953)『戦争と平和』(1956)『ベン・ハー』(1959)『甘い生活』(1960)などの撮影で使用された)であり、この時代に撮影のためにローマを訪れたハリウッド・スター達が、イタリアのラグジュアリー・ブランドをハリウッドやニューヨークへと持ち帰って紹介していったのでした。

特に、グッチ、フェンディ、フェラガモ、ブルガリといったブランドがそういった恩恵を受けました。

ローマでの『クレオパトラ』の撮影は、1961年9月25日から1962年7月28日という長期間にわたり行われました(一日2分間分が完成するペースで撮影されました)。撮影された総フィルム数は、96時間になりました。

撮影開始前に、脚本が完成していなかったため、マンキーウィッツが昼に撮影をし、夜に脚本を書いていたため、全て順番づつに撮影されました。そのため、当日、出演者自身ですら今日出演シーンがあるのかどうか分からない状況で、長期間のローマ滞在を余儀なくされたのでした(そのため彼らには、ローマで遊ぶ時間とお金も沢山生まれたのでした)。

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真のハリウッド・スターとSNSセレブの違い

ハリウッドスターはもう存在しない。だからこそ、過去のハリウッドスターは崇拝に値するのだ。

この時代を知らぬものが、ファッションについて何を語ろうとも、そこに説得力は全く生まれない。

豪華なセットと衣裳を着るスター達。彼らには、時空を飛び越える翼があった。

リズ・テイラーのためにウエスト・ハリウッドの高級レストラン「Chasen’s 」のチリが、定期的にローマに空輸されました。

ワードローブ・テスト。

クレオパトラ・ルック9 ゴールドヘッドドレス
  • ウラエウスの紋章がついたエジプト風ゴールド・ヘッドドレスとイヤリング
  • パープルシルクサテンのロングローブ(カラシリス)、金の刺繍入り
  • パープルのギリシア風ドレープドレス
  • ゴールド・バングル

私は昔からすべてに対して誠実で、真正直であるように努めてきた。言い訳や弁解は避けてきた。人の気に入ろうと気に入るまいと、自分に正直であれ、が私の座右の銘だった。

エリザベス・テイラー

ハリウッド・スター哲学。それは一般的な社会通念から離れた生活を送るところにあります。それは昔の日本の映画スターにも共通していたのですが、そういったスター哲学を小市民が排斥した果てにあるのが、今の日本の芸能人総小市民化なのです(ちまちまとSNSで自慢することも含めて)。ハリウッド・スターとは、自己発信しないからこそスターだったのです。

現在の一部のラグジュアリー・ブランドは、もはや10代の少女の親の七光りにすがりついたり、芸能人達の自己発信に振り回されるミーハーな人々(カメラを持たないパパラッチたち)に、便乗して生きている寄生虫のような惨めな一面も存在するのです。それがいい例として、ラグジュアリー・ブランドで働く販売員の生活環境は、これだけ店舗が増えているにも関わらず、労働環境は全く改善されずに、ジリ貧になっていく一方なのです。

話は『クレオパトラ』からずれているのですが、グッチのアレッサンドロ・ミケーレというデザイナーと、CEOであるマルコ・ビッザーリの恐ろしいところは、そういった現代のラグジュアリー・ブランドの気質を、良くも悪くも完璧に捉えているところにあるのです。

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リズ・テイラーのブラントバング

CGが存在しない時代。それは本物に囲まれ、俳優が芝居をしていた時代でした。

キャサリン・ゼタ=ジョーンズが憧れたリズ・テイラーのブラントバング。

ワードローブ・テスト。

クレオパトラ・ルック10 黒魔術ルック
  • ちびまる子ちゃんのようなおかっぱ頭、内巻き
  • パープルのラメ入りロングガウン、金の刺繍入り
  • パープルのスクエアネックのロングドレス
  • 黒のロングヴェール

当時のエジプト人は、酷暑のため男女共に頭髪を剃るか、短く刈り、ウィッグをつけていました。クレオパトラのウィッグは、ヘアスタイリスト・シドニー・ギラロフ(1907-1997)によってデザインされたものでした。彼は50~60年代のハリウッド映画界において屈指のヘアスタイリストで、グレース・ケリーのロイヤル・ウエディングも担当したほどの人です。

そんな彼とリズ・テイラーが発案した20世紀のエジプト・ルックとして、ブラントバングが大流行しました。いわゆる前髪ぱっつんのおかっぱスタイルです。この作品以降、60年代において、ウィッグをファッション・アイテムと考える女優が激増したのでした。