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イヴ・サンローラン

【イヴ サンローラン】ロム(アン・フリッポ/ピエール・ワーグニー/ドミニク・ロピオン)

イヴ・サンローラン
©YSL Beauté
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ロム

原名:L’Homme
種類:オード・トワレ
ブランド:イヴ・サンローラン
調香師:アン・フリッポ、ピエール・ワーグニー、ドミニク・ロピオン、ジュリエット・カラグーゾグー
発表年:2006年
対象性別:男性
価格:60ml/11,330円
公式サイト:イヴ・サンローラン

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イヴ・サンローラン存命中に発売された最後のメンズ・フレグランス

©YSL Beauté

2006年は私たちにとって重要な年でした。組織をスリム化し、営業とマーケティングに関しては、より実践的になりました。例えば、私は社長としてアメリカと日本を直接担当しています。その結果、焦点を絞った真の戦略が生まれました。

メンズ・フレグランス市場では、私たちは少しまずい状況でした。1980年代には大きな成功を収めましたが、そろそろ新しいメンズラインを作る時期に来ていました。

シャンタル・ルース

2002年1月にイヴ・サンローラン(1936-2008)が引退した時、イヴはすっかり老人のように老け込んでいました。しかし、当時彼はまだ65歳でした。LSDやアルコールの乱用の影響もあったのでしょうが、それと同じくらい、若い日々のプレッシャーが彼の肉体も精神も蝕んでいったのでしょう。

少しだけ振り返ってみると、1957年10月24日にクリスチャン・ディオール(1905-1957)が急死した時、弱冠21歳のイヴが、クリエイティブ ディレクターとしてディオールの運命を託されることになりました(1955年6月にディオール入社)。

そして1958年1月、最初のコレクションで「トラペーズライン」を発表し、ディオールを救ったのでした。その後ディオールで5つのコレクションを発表し、1959年には、イランのパーレビ国王との結婚式にのぞむファラ・ディバのドレスをデザインし、ディオールの若き天才として、世界中のセレブから羨望の眼差しを集める存在になったのでした。

しかし、順風満帆だったイヴは、1960年にアルジェリア独立戦争で戦っていたフランス軍に徴兵されることになりました。そして軍隊内でイジメにあい、僅か20日後に精神病院に収容され、電気ショック療法などの治療を受け、1961年11月14日、神経衰弱を理由にディオールから解雇されたのでした。

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『灰とダイヤモンドの香り』ここに誕生する。

©YSL Beauté

元CAのシャンタル・ルース。

話を21世紀に戻しましょう。2000年にYSLパルファムを買収したグッチ・グループのトム・フォードは、YSLボーテの復興という一大野心を果たすため、シャンタル・ルースをYSLボーテの最高責任者として起用しました(2007年まで)。彼女の力量により、YSLのメイクアップ部門は5年間で56%の成長を遂げました。

彼女こそが、1976年から1990年までイヴ・サンローラン・パルファムのインターナショナル・プロダクト・ディレクターとして「オピウム」「パリ」などのクリエイティブ・ディレクターの役割を果たし、1992年には、イッセイ・ミヤケの最初の香水「ロー ドゥ イッセイ」も作り上げたオゾン革命の立役者でした。

2004年4月、トム・フォードは、グッチ及びイヴ・サンローランのクリエイティブ・ディレクターを辞任しました。その後、シャンタルの指揮により、YSLからはじめて発売されたフレグランスが、2006年に発売された「ロム」でした。この香りは、イヴ・サンローラン存命中に発売された最後のメンズ・フレグランスでした。

カリスマ性のある男性のオーラを演出することを標榜して生み出されたウッディ・フローラル・ムスクの香りは、アン・フリッポピエール・ワーグニードミニク・ロピオンジュリエット・カラグーゾグーの4人によって調香されました。結果的に、2007年にフランスで6番目に売れたメンズ・フレグランスとなりました。

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彼氏から、女性が借りることが出来るジンジャーの香り

©YSL Beauté

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これ見よがしに、メイクアップを施し、美しさをひけらかすのではなく、ただありのままの姿を、ひときわ明るく美しい素肌と共に見せていくように、ジンジャーとベルガモットが素肌に灰とダイヤモンドを振りかけるようにしてこの香りははじまります。

はじまりから終わりまで、滑らかに澄み渡るジンジャーが、素肌と心に心地よいスパイスの刺激を与えてくれます。すぐにみずみずしい青りんご/洋ナシのようなオゾンノートの水の流れに、素肌は洗い清められてゆきます。とにかく香りの広がり方がうつくしく滑らかです。

やがて清らかなヴァイオレットリーフとバジルと共に、穏やかなフゼアの風が全身を包み込んでゆきます。そしてそれらすべてが、クリーミーなトンカビーンとベチバーによって、ほんのり甘く、ひとまとめになりながら、素肌と一体化していくジンジャーに磨き上げられたシダーウッドの余韻に満たされていくのです。

イヴ・サンローランのシルクのシャツのように風通しがよく、軽やかで、女性から見ても、こなれており、洗練されている、控えめのエレガンスが凝縮された「男」という名の香りです。春夏秋冬、それぞれのデイタイムに活躍してくれるであろう万能型メンズ・フレグランスです。

しかし、何よりもこのフレグランスの素敵な点は、シャンタル・ルースがアン・フリッポに「女性が借りることが出来る香り」にして下さいねと耳打ちしていたという点です。だからこそ、この香りの中には「ほとんど浮遊しているような花の神秘」が感じられるのです。

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ジャン・ヌーヴェルによるスペシャル・ボトル

ジャン・ヌーヴェルによるスペシャル・ボトル ©YSL Beauté

電通本社ビル

ナットとボルトとネジのイメージを取り入れたボトル・デザインは、メタルとガラスの対照的な組み合せが特徴的で、メタルキャップには、カサンドラロゴが施されています。

さらに、フレグランスの成功を祝う意味も込めて、フランスの建築家、ジャン・ヌーヴェル(代表作として、『カルティエ現代美術財団』『電通本社ビル』など)が、「男らしさと儚さが混在する『イヴ・サンローランの男』の矛盾を表現したかったのです」という思いで生み出した、試験管型のスペシャル・ボトルが、2008年3月3日に限定10万本(90ml/86ユーロ)で発売されました。

ヌーヴェルが2005年に、バルセロナで完成させた超高層ビル、トーレ・アグバールが、男根を連想させるように、こちらも同じような連想を抱かせるデザインです。

シャネルの「アリュール オム」「エゴイスト プラチナム」、ディオールの「ディオール オム」と同じ系統の香りでありながら、それらの香りよりも遥かに、人当たりの良い、上品さを兼ね備えている香りと言えます。それでいて、若々しさよりも、成熟した大人の余裕も感じさせます。

キャンペーン・モデルはフランス人の俳優オリヴィエ・マルティネス(1966-、ハル・ベリーの元夫)です。そして、長編のキャンペーン・フィルムに出演している女優は、ファッション・モデルのキャサリン・マクニール(1989-)です。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ただの爽やかな水を売って金を稼げるなら、簡単にイタリアのベルルスコーニ首相よりも大金持ちに、エディット・ピアフよりも有名になれるだろう。そして数え切れないほどの貧しい子らが調香師を目指し、ルーブル美術館は印象派の絵画をヴェルサイユ宮殿の地下室に送り込み、香水ミュージアムに変身するだろう。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ロム
原名:L’Homme
種類:オード・トワレ
ブランド:イヴ・サンローラン
調香師:アン・フリッポ、ピエール・ワーグニー、ドミニク・ロピオン、ジュリエット・カラグーゾグー
発表年:2006年
対象性別:男性
価格:60ml/11,330円
公式サイト:イヴ・サンローラン


トップノート:ジンジャー、ベルガモット、オゾニックアコード
ミドルノート:ホワイトペッパー、バジル、ヴァイオレット・リーフ
ラストノート:トンカビーン、タヒチ産ベチバー、シダーウッド