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シャネル

【シャネル】31 リュ カンボン(ジャック・ポルジュ)

シャネル
©CHANEL
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31 リュ カンボン

原名:31 rue Cambon
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:75ml/33,000円
公式ホームページ:シャネル

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シャネル本店の4階建ての香り

現在のカンボン通り31番地のシャネル本店。©CHANEL

このフレグランスを示すキーワードは3つです。ドライ、ムスキー、木の実っぽい。

ジャック・ポルジュ

2007年にシャネルのプレステージ・コレクションとして「レ ゼクスクルジフ ドゥ シャネル」がスタートしました。そのなかの最初の10種類の香りのひとつとして、「31 リュ・カンボン」(オード・トワレ)が、シャネルの3代目専属調香師ジャック・ポルジュによって調香されました。

シャネルの歴史とこれからを象徴するフレグランスとして創造された香りです。

「31 リュ カンボン」=カンボン通り31番地を意味する。1910年にアーサー・カペル(ボーイ・カペル)の出資により一号店を出したのは、カンボン通り21番地に帽子専門店 「シャネル・モード」 としてでした。

大繁盛のため、さらに広いスペースが必要になり、1918年に、カンボン通り31番地の建物全体を購入しました。

3階のココ・シャネルのプライベート・ルーム。©CHANEL

1階はブティック。2階はコレクションの発表、オートクチュールドレスやスーツのフィッティング専用の広いレセプション ルーム。そして、鏡張りの階段を上った3階にはココ・シャネルのアパルトマン。さらに、4階には、1983年からクリエイティヴ・ディレクターをつとめたカール・ラガーフェルドが使うアトリエがあります(現在は、ヴィルジニー・ヴィアールが使用している)。

カンボン通り31番地、それは〝マドモワゼルの美の創造の発祥の地〟なのです。

豪奢なバロック様式と究極のミニマリズムというアンバランスなバランスが生み出すハイセンス。そのシャネル本店の4階建ての美学をシプレノートのフレグランスの中に反映させたのがこの香りです。

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オークモスを排除したモダンシプレ

ココ・シャネル存命中の、カンボン通り31番地のシャネル本店。©CHANEL

香りの中に奥深さを生み出す一方で、格調の高さも生み出してしまうため現代ではシーンを選んでしまうシプレノートからオークモスを排除したことにより(その役割をパチョリにゆだね)、シャネルは、21世紀のあらゆるシーンで使えるシプレ・フレグランスを誕生させたのでした。

〝新感覚のシプレ〟それは芳醇な柑橘類からはじまり、シャネル本店の4階それぞれの階の役割を連想させる香りの変化により、シャネルのスタイルの真髄である<厳かさと豪華さの二面性>を投影させた香りです。

間違いなく、ジャック・ポルジュは、21世紀にココ・シャネルが生きていたならば、「これが、私の香りだわ!」と歓喜する香りを作ろうとしたのでした。そして、その試みは見事に果たされました。

ベルガモットにアルデハイドの金属音が追加され、祝福するシャンパンのようなシトラスのきらめきからこの香りははじまります。

やがて、ベチバーが大地の香りを馥郁に漂わせ始めます。と同時にジャスミンの甘さとイランイランのクリーミーさがN°5を想起させる芳醇なフルーツのような香りで包み込んでいきます。

すぐに円やかなフルーティーベチバーに触発されたかのようにブラックペッパーが目を覚まします。そして、バター風味のアイリスをはじめとする、透き通るようなローズとイランイラン、さらにはヒヤシンスを呼び寄せ、淡いヴェールのようなフローラルブーケを奏でてくれます。

さぁ、いよいよパチョリの指揮の下で、厳かなレザーのようなラブダナムの伴奏と共に、深緑のベチバーとパウダリーなフローラルによるシンフォニーが始まるのです。荘厳たるシャネル交響曲第6番のはじまりです。

この香りを魅力的かつ特別なものにしているのは、アイリスの役割です。まず最初に、ペッパーと意気投合し、すぐにパチョリに靡き、ラブダナムが目立ち始めると易々とラブダナムに乗り換える機を見るに敏なアイリスの存在です。

服、バッグ、コスメをはじめとするシャネルを愛するすべての人々が、必ず持っておかなければいけないマストハブ・アイテムです(通常、そんなアイテムは存在しないはずなのに、存在するところに、このフレグランスの魔性はあります)。

確実にあなたの美が格上げされる、シャネルで販売されているあらゆる美容品を超えた美容効能を生み出す〝ビューティー・フレグランス〟

2016年9月には、オード・パルファム・ヴァージョンが発売され、これが現行品となっています。そして、トワレが抱えていた唯一の問題点である軽さが克服されたのでした。

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世界的に最も評価されているレ ゼクスクルジフの香り

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ひとたび香りを嗅ぐやいなや、ここまで魂を奪われるような美しい印象を刻み付けられたことがあっただろうか?しかし心にしみる柔かさ、優雅さがこの香りの本質ではない。こうした古典的な傑作は定義として、巨人の肩に乗っているといわれる。そして抗いがたいほどの自らの魅力を承知している。」

「31はときおり昔の「シャンダローム」を思い出させる。むろんゲランの質が落ちる前の話だが。それからかすかに最初の「ディオレッセンス」の雰囲気もある。そのラクトンからくる、熟れ過ぎたしどけないミルキーな果実香は「グッチ・ラッシュ」ではぎりぎりのところまで強調されていた。しかしシャンダロームはつんと澄ました感じだし、ディオレッセンスは誘惑し過ぎ、ラッシュは突き放した感じだ。」

「しかしシャネルの31には、じらしたり誘惑したり、クールにみせようといった下心が微塵もない。たぶん31の先駆けは、あのいわくつきの傑作、イヴ・サンローランの「シャンパーニュ」だろう。シャンパーニュも柔らかなフルーティシプレだが、その金属的で激しく打ち寄せる波のような主題の扱いは、今はなきデカダンスさえ感じさせる。それに比べると31は芸術としてより高い境地に達していて、ときを超えている。いつの時代でも10本の指に入る名香。そして香水の未来を感じさせる逸品だ。」と5つ星(5段階評価)の評価をつけています。

同じくタニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「シャネルのご自慢は、おきまりの材料(オークモス=東ヨーロッパの樫の木などに生えるレースみたいな地衣類からとった樹脂)を使わずにシプレのフレグランスを完成させたということ。」

「オークモスの樹脂をしぼると、濃くてべたついて、中世のおとぎ話に出てくる煙、インク、森の朽ち葉の匂いなんかがして、それがリッチで甘いシプレの主題に深みを与える。じゃ、いったいオークモスなしのシプレがどうかっていうと、ほのめかしては幻想を抱かせる練習。似たようなヒントを幾つも用意して、31 リュカンボンは次々と名作を連想させる。古いものも新しいものも。」

「そしてあなたに思い出させる、足りない要素のことを、濃厚なアイリスで始まって、ドライで胡椒のようなレザーに変わるときには、「キュイール ド ルシー」の予感がする。」「入ったり出たり、せわしないのは「ディオレラ」のジャスミン。きらきら泡立って冷たいセブンアップのよう。レモンカスタードの瞬間には「シャリマーライト」を思い出す。そうそう、それからあの高らかに歌っているアンバーはどう?ゲランの「ゲット アポン」で会ったことないかしら。」

「このフレグランスは、大いなる遺産の跡継ぎとしてデザインされているから、家族の写真にぴったり。どこかでルカが、映画『裏窓』のグレース・ケリーの一瞬にして部屋中に光が射すような美しさにたとえていたけれど、ケリーの美しさには深みがない。むしろリタ・ヘイワースの翳りのある官能美(バガリ)、ベティ・デイヴィスの少女っぽい残忍さ(ジョリ・マダム)、エヴァ・ガードナーの肉食獣を思わせる迫力(タバブロン)などと比べてほしい。」

「正直なところ、私は31 リュカンボンを可愛いとは思うけれど、心を動かされるほどじゃない。なぜならふしぎがないから。シャネルが新しいパルファムの処方を作ろうとしているといううわさも伝え聞く。本当なら、もっと濃厚にして性格づけもしっかりさせてくれるといい。このちょっぴり未完成の香水が傑作に成長する可能性は十分にある。その日までは、シャネルの服をじっくりと眺めて待ちましょう。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:31 リュ カンボン
原名:31 rue Cambon
種類:オード・パルファム
ブランド:シャネル
調香師:ジャック・ポルジュ
発表年:2016年
対象性別:女性
価格:75ml/33,000円
公式ホームページ:シャネル


トップノート:ベルガモット、グリーンノート、ブラックペッパー
ミドルノート:アイリス、ローズ、イランイラン
ラストノート:パチョリ、ラブダナム、ウッディノート