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【ドリス ヴァン ノッテン】レイビング ローズ(ルイーズ・ターナー)

その他のブランド
©Dries Van Noten
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レイビング ローズ

原名:Raving Rose
種類:オード・パルファム
ブランド:ドリス・ヴァン・ノッテン
調香師:ルイーズ・ターナー
発表年:2022年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/40,700円

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ドリス・ヴァン・ノッテンのファースト・フレグランス・コレクション

ドリス・ヴァン・ノッテン©Dries Van Noten

©Dries Van Noten

たとえば嫌いな花がある場合、なぜそれを嫌うのか、そしてそれを違う方法で使えないかを探ることに興味があるのです。

私が興味を持つのは、何かのバランスを崩すものなのです。

ドリス・ヴァン・ノッテン

ドリス・ヴァン・ノッテン(1958-)とは、2024年6月の2025年春夏メンズ・コレクション(1986年のブランド立ち上げから38年、150回目のコレクション)を最後に引退した、ベルギー・アントワープ出身のファッションデザイナーです。彼は1990年代にファッション・シーンに革命を起こした「アントワープの6人」の一人です。

自身の名を冠したファッション・ブランドは、完全にインディペンデントに活動しています。アントワープ郊外のリアにある、19世紀末に建てられた城のような邸宅に住んでいます。そこには鹿やキツネなどの野生動物が生息する55エーカーもの広大な庭園があり、ドリスは、庭仕事に従事することを至上の喜びとしています。

そんなドリスが、最初に香水に関わったのは、フレデリック・マルより2013年に発売された「ドリス ヴァン ノッテン」からでした。ちなみにドリスの母はシャリマーを愛用しており、ドリスもその影響で、大人になると香水に興味を持つようになりました。

この経験をもとに、2018年に(コムデギャルソンのフレグランスも創造してきた)プーチ社と提携し創造し、2022年3月にパリで発表したドリス ヴァン ノッテン ビューティーの中のラグジュアリー・フレグランス・コレクションが「ザ・アート・オブ・コントラスト」です(日本発売は、2023年4月22日、ドリス ヴァン ノッテン 青山店から)。

その10種類のオードパルファムのうちのひとつとして発売された「レイビング ローズ」は、90%天然由来成分でルイーズ・ターナーにより調香されました。フランスでストロベリーにペッパーを振りかける伝統からインスパイアされた作品です。

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10人の調香師をアントワーヌ郊外の自邸の大庭園に招き創造した香り

自身の邸宅のローズガーデンに佇むドリス・ヴァン・ノッテン。2014年3月 ©François Halard, Vogue

自身の大庭園 2014年3月 ©François Halard, Vogue

ムンステッドウッド

香水の制作は、ファッションコレクションを制作する時と同じようにチームと作業しました。ですから、彼らにはかなり幅広い指示を与えました。自分のストーリーを話しました。

彼らを自宅や庭に招待し、私が植物、特に花とどのように向き合っているかを見てもらいました。花を奇妙な組み合わせで組み合わせるという、リスクを冒すようなことをしているんです。

ドリス・ヴァン・ノッテン

ドリスは自身のフレグランスを創造すると決めた数年前のある夏、10人の選抜された調香師を率いて55エーカー(東京ドーム約5つ分)の敷地を案内しました。そこでドリスが〝最も美しいバラのひとつ〟と考えるデビッド・オースチン社製のベルベットのような濃いボルドー色の「ムンステッド・ウッド」の隣に、ほぼネオンピンクの品種が咲いていました。調香師たちはその対比に驚かされました。

そして10人の調香師たちに「なぜ私のローズガーデンが他のローズガーデンと違うのか?それは不釣り合いなものを隣り合わせにしているからです」と説明しました。

つまり「美しさと奇妙なものを隣り合わせにする」ことこそが、彼のビューティー・コレクションの核心だということです。

対立するものを組み合わせることは、素晴らしい生産的な実践であり、それぞれが相手の価値をさらに高め、対比によって本来の魅力が強調されるのです。
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あなたの素肌に、至上のバラのトゲを突き刺してくれる香り

©Dries Van Noten

©Dries Van Noten

私は、甘く美しい女性的なものではなく、むしろパンチのあるローズの香水が欲しかった。男性が気軽に使えるものでなければならなかった。ただし市場に溢れているような〝気楽な香り〟は一切求めていません。

私の考えは、すべての香水が物語を語るべきだ、というものでした。私のファッションも、物語を語るものですから。この香りは、私のフレグランス・コレクションの象徴のようなものです。

ドリス・ヴァン・ノッテン

薔薇はドリスにとってアイコン的存在ですが、私は薔薇がもつ古典主義を崩し、薔薇であることをあまり深刻に考え過ぎずに、この上なくモダンでスパイシーな薔薇を作りたかったのです。

ルイーズ・ターナー

狂乱のローズ〟と名付けられたこの香りは、花が凛凛と咲き誇る赤い薔薇に、ふたたび若さを与えていくかのようにローズウォーターが注ぎ込まれる情景に、シャンパンのようなピンクペッパーと電流が走るような挽きたてのブラックペッパーが振りかけられる〝情熱の赤い薔薇〟を全身で受け止めるような感覚からはじまります。

実にセンセーショナルなはじまりです。すぐにカシュメランとホワイトムスクが厳かに広がる中、ある種、絵画的で斬新な色と素材の組み合わせが、香りの世界においても、花盛りの赤い薔薇と花を咲かせたばかりのピンクローズ、情熱のピンクペッパーと暗黒のブラックペッパーの組み合わせというように展開してゆきます。

ドリス・ヴァン・ノッテンの庭園では、すべてのバラが見た目通りの姿ではありません。このバラは大胆でモダン、そして爆発的な魅力を放ちます〟という公式文のイメージそのままに、情熱の赤いバラと若々しいピンクローズは、強烈なペッパーにより、フレッシュでありながら燃えるようなメタリックな感覚を広がらせてゆきます。それはまるで赤い血を流すピンクローズのようです。

心をよろめかせるほど、大地の広がりと甘さと苦みと酸味のバランスがドラマティックな、トゲを感じさせるペッパーローズ。官能的でありながらここまで予想外のローズの香りはあまりない気がします。それでいてゾワゾワするのではなく心安らぐ不思議な居心地の良さがあります。

バブルガムピンクのボトルに、鮮やかな赤の光沢のある金属を組み合わせたボトルデザインも印象的です。それはドリスのシャリマーのボトルから得た、香水に対する以下の哲学が反映されています。「ボトルは、私が掲げる理念、つまり創造的な思考、つまり様々なものを衝突させ、融合させる姿勢をすべて反映したものでなければなりません」。

最後にドリス自身はこの香りについて「まるで顔に蹴りを入れられたような」香りだと表現しています。

私にとって美しいものが、あなたにとってはとても醜いものになるかもしれませんし、その逆もまた然りです。多くの人が美しいと考えるものが、私には退屈に思えるのです。だからこそ、私はコントラストを巧みに取り入れるのです。私の美の中に、どこか奇妙さがあるのが好きなのです。

ドリス・ヴァン・ノッテン

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香水データ

香水名:レイビング ローズ
原名:Raving Rose
種類:オード・パルファム
ブランド:ドリス・ヴァン・ノッテン
調香師:ルイーズ・ターナー
発表年:2022年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/40,700円


トップノート:ピンクペッパー、ブラックペッパー
ミドルノート:ローズウォーター、ダマスクローズアブソリュート
ラストノート:カシュメラン、ムスク