ZEN フォーメン
原名:Zen for Men
種類:オード・トワレ
ブランド:資生堂
調香師:フランシス・クルジャン、フランソワーズ・ キャロン
発表年:2009年
対象性別:男性
価格:不明
1964年、東京オリンピックの年に発売された『ZEN』
1868年の明治維新により、日本は200年以上続いた鎖国の呪縛から完全に開放され、文明開化が進んでゆきました。そんな中、1872年に福原有信氏により「資生堂薬局」が創業され、資生堂の歴史ははじまりました。
しかし、日清戦争・日露戦争・韓国併合・第一次世界大戦などを経て、日本は帝国主義化し、1940年の日独伊三国同盟により、第二次世界大戦の波に飲み込まれてゆきます。そして、1945年に敗戦を経験することになるのでした。
そんな焼け野原から見事に蘇り、東京五輪を迎えた1964年にオーデコロン「ZEN(禅)」は発売されました。日本国内において欧米の美しさに対する憧れがピークに達していたこの頃、資生堂は、アメリカとヨーロッパに向けて、巧妙に考えを逆転させ、東洋に対する深い関心を見事に捉えたこの香りを、資生堂としてはじめて世界に向けて発売する香水としてローンチしました。
この香りの開発にあたり資生堂は、〝日本文化は日本人の手によって〟という狭い価値観から脱却するため、海外の一流調香師による日本のイメージを香りにしようと考えました。そして、1953年にエスティローダーの最初の香り「ユースデュー」を調香したIFFのジョセフィン・カタパノに調香を依頼したのでした。ちなみに「ZEN」の二年後の1966年に、彼女は歴史的名香ギ・ラロッシュの「フィジー」を発表することになります。
そして2007年、『第三のZEN』が世界に解き放たれる。
翌1965年資生堂は、ニューヨークに資生堂コスメティックス・オブ・アメリカを設立し、福原義春氏(セルジュ・ルタンスを生み出した男)が社長に就任し、アメリカ市場開拓に乗り出したのでした。一方、日本航空の機内販売品として「ZEN」は取り上げられたこともあり、欧米人の間に徐々に浸透するようになったのでした。
そして、1973年に、日本人形のような山口小夜子様と専属モデル契約(1986年まで)を結ぶことにより、「ZEN」は彼女のイメージと共に、「禅」として日本に逆輸入されるようになったのでした(1982年には「Spirit of ZEN」というフランカーも発売されています)。ちなみに現在の「禅」は、1986年に、欧米の香りの流れに合うように改良されたものです。
あたらしい「禅」の誕生は、2000年にナタリー・ローソンにより再調香され(白ボトルになる)、そして、2007年にミシェル・アルメラックとマイケル・フォスターにより、さらにあたらしい「ZEN」が生み出され、欧米を中心に発売後1年で、工場出荷130万個を突破する大ヒットとなりました。
この香りを身にまとう男性と対面すると、思わず背筋がすっと伸びる。
2009年8月に、〝男性のための禅=Infinite passion. Endless possibilities.(無限の情熱と、終わりなき可能性)〟というコンセプトで「ZEN フォーメン」が発売されました。フランシス・クルジャンとフランソワーズ・ キャロンにより調香されました。
長い瞑想の時間を経て、全身を満たす情熱の炎を解き放つように、ベルガモットに弾き出されたムスクの風に乗り、みずみずしく酸味を煌めかせる和梨(Pyrus pyrifolia)とキンカンの香りが、金箔のように彩やかな和の閃光を、全身に降り注いでゆきます。
この和梨がとにかくフレッシュで、冷たい水に洗われたようで、強くではなく、軽やかに酔わせるような繊細なジューシーさがあります。
〝禅〟がイメージさせる〝静寂〟〝侘び寂び〟〝孤高〟の先にある、〝高揚感〟〝華やぐ心〟〝無限の歓喜〟に着目したというその精神が伝わるように、すぐに肌を透かして魂に到達するような甘やかかつハーバルなシャクナゲと青々しいヴァイオレットの花々が、温かくスパイシーなナツメグと、静謐なる苦みを湛えたパチョリと溶け合いながら広がってゆきます。
やがて、男性的なスモーキーなレザーがパチョリと共鳴し合い、神秘的な森を、男性の素肌の上に生み出してゆきます。あくまでも静けさの中に、躍動するフルーツのタマシイを感じさせる〝不屈の精神〟を感じさせる香りです。
ボトルデザインは、資生堂の菊地泰輔氏により、茶室をイメージして作られました。メタリックシルバーのキャップが特徴的です。
香水データ
香水名:ZEN フォーメン
原名:Zen for Men
種類:オード・トワレ
ブランド:資生堂
調香師:フランシス・クルジャン、フランソワーズ・ キャロン
発表年:2009年
対象性別:男性
価格:不明
トップノート:和梨、ベルガモット、キンカン
ミドルノート:ヴァイオレット、ナツメグ、シャクナゲ
ラストノート:パチョリ、レザー、ムスク