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フレデリック・マル

【フレデリック マル】ザ ナイト(ドミニク・ロピオン)

フレデリック・マル
©FREDERIC MALLE
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ザ ナイト

原名:The Night
種類:オード・パルファム
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ドミニク・ロピオン
発表年:2014年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/176,030円
販売代理店ホームページ:24S

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100%天然のウードが使用されたブランド初のウード・フレグランス

©FREDERIC MALLE

フレデリック・マルが、2014年からリリースしている「Desert Gems(砂漠の宝石)」コレクションの5種類の香りのうち1番目の香りとして2014年に発表された香りが「ザ ナイト」です。ドミニク・ロピオンにより調香されました。

現在、市場に出回っているウード・フレグランスのほとんどが天然のウードを使用していない(もしくは単にそれを主張するためにごくごく少量使用されている)のですが、「ザ ナイト」には100%天然のウードが使用されています。この香りがフレデリック・マルによる最初のウード・フレグランスでした。

公式ホームページの紹介文の一番目立つ所に〝初心者向けではありません。濃縮された天然ウードを大量に使用したフレグランスの傑作です。〟と明記してあるところからもこの香りの本気度が分かります。

ターキッシュ・ローズ、サフラン、天然ウード、フランキンセンス、サンダルウッドというこの並びを見ているだけで、香水愛好家にとって胸のときめきを覚えることでしょう。

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『ウード・ブーム』の中生み出された「これぞ本物!」の香り。

天然のウードは、サフランのようにスパイシーで、カストリウム(海狸香)やシベットのようにアニマリックで、同時にベチバーやパチョリのようなウッディさと、ラブダナムのような側面もあります。とにかく天然のウードの第一印象はアニマリックなのです。

ドミニク・ロピオン

2002年にトム・フォードがプロデュースし、ジャック・キャヴァリエアルベルト・モリヤスが調香したイヴ・サンローランの「M7」により、西欧の香水市場に、本格的なウード・フレグランスが疾風のように現れて、疾風のように去ってゆきました。

その大失敗から5年後の2007年にトム・フォードが、キャリン・コーリーという一流のクリエイティブ・ディレクターの手を借り生み出した「ウード ウッド」により、西欧の香水市場で、史上初めてウード・フレグランスが人々の好評を得ることに成功しました。

まさにこの『逆襲のトム・フォード』により、新たに〝ウード〟という香水のジャンルは生み出されたのでした。以降、各ブランドが『ウード旋風』に便乗し、ウード・フレグランスを乱発してゆきました。

そんな中、フレデリック・マルはすぐには、ウード・フレグランスを作りませんでした。彼は「どうせ作るのなら、本物のウードを使い、一流のシェフの手による、一切の妥協なきウードを世に示そう」と考えていました。

「ザ ナイト」が生み出されるきっかけは、ニューヨークのディナーパーティーでサウジアラビアの王女と隣り合わせになったマルが、彼女の独特な香りに魅了されたことからでした。2人はすぐに親しくなり、王女はついに彼女のシグネチャーフレグランスの成分を明らかにしました。

かくして生み出されたのが、この「ザ ナイト」でした。まるでフランス人のクチュリエが、日本市場に向けて着物を織り上げたように、その偉大なる文化に敬意を示しながら、天然のウードを21%使用し、中東市場に向けて生み出された香りです。本物を知る顧客をターゲットにすることこそフレデリック・マルの真骨頂なのです。

〝中東では、日没は絶対的なものが現れる新しい人生の始まりを意味する〟という公式サイトの前置きが示すように、フレデリック・マルが〝西欧のウード・フレグランスの日没〟として誕生させた香りです。

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ウード愛好家に、死ぬまでに一度は一夜を共に過ごして欲しい香り

ウード・フレグランスの永遠のセンターがここに誕生しました。まさにモーリス・ジャールによる『アラビアのロレンス』のテーマ曲が素肌を駆け抜けるように、壮大なるウードの旋律が奏でられてゆくのです。

天然のアッサム・ウードの獣の咆哮が途切れることなく、ターキッシュ・ローズと(スパイシーな)サフランを翻弄し、それぞれに独特な妖しい煌めきと厳粛さを与えてゆきます。だんだんと、ローズは生命力を吸い取られてゆき、砂塵に乾いたローズのように香ってゆきます。

この香りの最大の特徴は、この〝だんだんと〟まで、3、4時間の時間を要するところにあります。つまり、獣を飼い馴らすために5分から30分待たねばならないのではなく、かなりの時間を待たないと、素肌にとろけて匂い立つ、魅惑のひとときがはじまらないのです。

しかし、ひとたびウードが素肌に飼い馴らされていくと、信じられないほどの至福の瞬間に満たされることになります。まるで滑らかに流れるようなムスク、アンバーの養分を受け止めた枯れたローズが再び勢いよく輝いてゆくようです。どこか「ポートレイト オブ ア レディー」の記憶が呼び覚まされるようです。

やがて、燃え盛り、流れるようなフランキンセンスとクリーミーなサンダルウッドとひとまとめになり、すべての光を吸い込み、暗闇へと誘い込み、心の奥で揺れるようなとても繊細なウードローズの煌めきに包まれていくのです。

エポワスやマロワール、ロックフォール、カマンベール・ド・ノルマンディなどといった上質なチーズが、とんでもなく臭くて美味しいように、このウードはとんでなく臭い中から、とても美味しいウードローズを立ち上らせてゆくのです。

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香水データ

香水名:ザ ナイト
原名:The Night
種類:オード・パルファム
ブランド:フレデリック・マル
調香師:ドミニク・ロピオン
発表年:2014年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/176,030円
販売代理店ホームページ:24S


トップノート:ターキッシュ・ローズ、サフラン
ミドルノート:アッサム・ウード
ラストノート:アンバー、インセンス、サンダルウッド