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その他の男優たち

『タクシー・ドライバー』Vol.4|ハーヴェイ・カイテルのポン引きファッション

その他の男優たち
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『タクシー・ドライバー』のもうひとつの伝説

ソフト帽にランニングシャツ、タイトな黒パンツという異様な出で立ちで登場するのが、12歳の売春婦アイリス(ジョディ・フォスター)のポン引きスポーツです。ハーヴェイ・カイテル(1939-)が演じるこの役柄のファッションは、その後、本物のポン引きの間で大流行しました。

当初、ハーヴェイは、ベッツィー(シビル・シェパード)の同僚の男性の役柄をオファーされていました。しかし、黒人の予定で僅か5つのセリフしかないポン引き役をしてみたいとマーティン・スコセッシに提案したのでした。

それまでハーヴェイは、ポン引きの役柄を演じたことがなかったのですが、ヘルズ・キッチンに住んでいたので、ポン引きの演技指導として協力してくれる本物を紹介してもらい、2週間実地トレーニング(一緒に商売をしたらしい)して、このファッションを作り上げたのでした。

そのアイデアの1つはコカインをすくうために、小指の爪を伸ばしているということでした。

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このファッションセンス。チカーノマフィアみたいです。

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ゾクリと気味の悪いダンスシーン

アイリスとダンスする気味の悪いシーン。

(演技指導してくれた本物のポン引きは)娼婦の扱い方を教えてくれた。「女をいたぶるのはもう古い。心から女を愛さなくちゃいけない」よく理解できなかった。「娼婦たちを本当に愛する?」「そう、愛するんだ。外で食事しようと約束したら、すっぽかしちゃいけない。女が遊びに行きたいと言ったら連れていってやる」。彼の指導は、ジョディとダンスをするシーンに生かされてるよ。

ハーヴェイ・カイテル

このダンスシーンは、「カイテルの中のデーモンがはじめて顔をのぞかせた」と批評家たちに大絶賛されました。

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スポーツのファッション1

ポン引きの部屋着
  • オルターネート・ストライプのリネンのシャツ
  • ネッカチーフ
  • 赤いタックパンツ

お世辞にも似合っているとは思えないこの長髪は特殊メイクです。

このリネンシャツはなかなかポイント高いです。

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長い小指の爪の赤マニキュア

よく見ると小指の爪が長く、赤いマニキュアがほどこされています。

トラヴィスが売春婦をたばねるスポーツに侮辱される場面がある。スポーツは片時もじっとしていられない男だが、この場面、リズミカルに体をゆするこの気取り屋と、呆然として立ちすくむトラヴィスとが気味の悪いほど対照的だった。こういう場面を、見る者がうっとりするような画面に仕上げるのがスコセッシの得意とするところだ。映画全体にめまいのするような感覚が流れている。

ポーリン・ケイル

ハーヴェイ・カイテルの演じるポン引きは、汚らわしいながらも敵意に満ちた、ひと癖ありそうな目つきと落ち着きのない物腰が人を引き付ける。

ポーリン・ケイル

この役柄を演じたハーヴェイ・カイテルの素晴らしさは、以下の彼自身の言葉の中にあります。「ポン引きをやってる男と幼い娼婦。おぞましい話だ。でも俺はそうはとらえなかった。あのポン引きをプロとして考えたんだ。ポン引きをやってる男たちは頭がいい。たまたま人生にツキがなかっただけで」。

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スポーツのファッション2

ポン引きファッション
  • ランニングシャツ
  • タイトな黒パンツ
  • ブラックレザーベルト
  • ソフト帽(三菱銀行人質事件の梅川昭美や『探偵物語』の松田優作に影響を与えた可能性大)

デ・ニーロのモヒカンに匹敵するランニングにソフト帽という突き抜けたスタイル。

スコセッシのママと談笑するポン引きファッションのハーヴェイ・カイテル。

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スポーツのファッション3

ポン引きファッションPART2
  • ダブルストライプのアイボリーシャツ
  • グレンチェックのベスト
  • 赤いタックパンツ
  • バンダナ

ポン引きというのはとっても人間的なんだ。人間的といっても慈悲深いという意味じゃなく、苦悩する存在として人間的なんだ。彼らは絶えず飢餓を感じながら育ってきた。たいていは貧しい家の生まれで家庭が崩壊していて、チャンスに恵まれたことなんて一度もない。そんな環境で育った者はポン引きか泥棒か麻薬中毒にでもなるほかないんだ。そんな場所で生まれ育ったら、普通の人間のように他人を愛したり世話をやいたり助けたりといったことを学べるはずがない。何かと食事にありつくこと、見つけた食べ物をネズミに横取りされないように気をつけることで精一杯だったんだから。

ハーヴェイ・カイテル

ロバート・デ・ニーロと同じく、ハーヴェイ・カイテルもまたこの役柄に戦いを挑んでいたのでした。彼は本作で好評を得て、注目され『地獄の黙示録』(1979年)の主役に抜擢されるのですが、フランシス・フォード・コッポラ監督により2週間でクビになった挙句、80年代ハリウッドから干されることになりました。

彼が復活したのは同じスコセッシ監督の『最後の誘惑』(1988年)でユダを演じてからでした。それにしてもこのスポーツの最後のファッション、よく見るとかなりハイセンスです。


作品データ

作品名:タクシー・ドライバー Taxi Driver (1976)
監督:マーティン・スコセッシ
衣装:ルース・モーリー
出演者:ロバート・デ・ニーロ/ジョディ・フォスター/シビル・シェパード/ハーヴェイ・カイテル