実物のボニーとクライドのファッションは?
本物のクライド・バロウ(1909-1934)の残された写真を見ていても、すごくお洒落な青年だったことが分かります。1930年代前半は、世界大恐慌と禁酒法真っ盛りの暗黒時代でした(その後に待ち構えるのが第二次世界大戦です)。そして、そんな時代に、若者たちは、飢えながら惨めに生きながらえることよりも、束の間であっても、華やかな夢を見て、太く短く燃え尽きたいと考えたのでした。
そんな男達のファッションは、どこまでも自分自身の晴れ姿を追い求めた当時の最先端のファッションであり、そのファッションの背景に映るのが、荒涼としたアメリカの中西部の荒野であることが、逃亡者であり、犯罪者に過ぎない彼らの、追い詰められつつある現実の惨めさを伝えてくれます。
しかし、こういった現実さえもが、何十年後のファッションに影響を与えるという真実が、ファッションというものの魔力なのかも知れません。ファッションには善も悪も存在しないのです。
クライド・バロウのファッション3
ライトブラウン・ジレルック
- ライトブラウンのウールジレ
- ホワイト・ドレスシャツ
- ベージュ×ブラウンのレジメンタルタイ
- グレーのウールスラックス
クライド・ルックの中に潜む、遊び心。
クライド・ルックを象徴するのが、このスタイルです。銀行強盗をするための30年代のギャングスーツ・スタイルを自分の日常生活のスーツ・スタイルに取り入れること。そんな遊び心が、男っぷりをグレード・アップさせてくれるのです。
女性から見た、磨き上げられている男性を見分けるポイントとして、筆頭にあげられるのは、その男性のファッションの中に遊び心があるか?ということなのです。
クライド・バロウのファッション4
30年代のギャング・スタイル
- ブラウン・ヘリンボーン・3ピースツイードスーツ、シングル、スリムノッチラペル、3つボタン、シングルベント、7つボタンのベスト
- 白のリネンのポケットチーフ
- アロー・ハイカラーのホワイトシャツ
- ダークグリーン・シルクタイ、黄色のポルカドット、フォア・イン・ハンド・ノット
- ダーク・ブラウン・レザーベルト
- ダーク・ブラウン×白のウイングチップのスペクテイターシューズ
- オフ・ホワイトのストロー・パナマハット、ブラックバンド付き
さらりとベストのボタンを開けているカッコよさ!
バック・バローのファッション2
- ブラウン・ドニゴールツイードの3ピース・スーツ、シングル、2ボタン、ノッチラペル、シングルベント、バーガンディー色のライナー
- フライト・ジャケットの時と同じベルト
- ホワイト×グレー・ドレスシャツ
- レッドシルク・ショートネクタイ
- ブラウンのカーフスキンのメダリオン・ウイングチップ・ブルーチャー
- ブラックのフェドーラ、赤の絹のリボン
バック・バロー役のジーン・ハックマン(1930-)が、初めて掴んだ大役が本作でした。それまでジーン・ハックマンは、同じような境遇のダスティン・ホフマンとロバート・デュバルと共にルームシェアをして生活していました。
クライド・バロウのファッション5
デス・バレエ・スタイル
- グレーのウールベスト。フロントボタンは閉めず。ブラックシルクの柄入りのバック
- ホワイト・ドレスシャツ
- ライトグレーのトラウザー
- ブラック・レザーベルト
- ブラックレザーのプレイン・トゥ・オックスフォード
- ブラウンのプラスティックのラウンド・サングラス
実物のクライド・バロウ
実物のクライド・バロウは、オクタゴン・レンズの細いメタル・フレームのサングラスをつけ、ピーク・ラペルのシングルのダークブルーのウールスーツ。インディアナポリスの百貨店ワッソンズで購入したライトブルーのウエスタン・スタイルのシャツ。ウエスタン・スタイルの太めのベルト、ライトブラウンのフェドーラにブラウン・リボンを愛用していました。
作品データ
作品名:俺たちに明日はない Bonnie and Clyde(1967)
監督:アーサー・ペン
衣装:セオドア・ヴァン・ランクル
出演者:フェイ・ダナウェイ/ウォーレン・ベイティ/マイケル・J・ポラード/ジーン・ハックマン