ヴィトリオールドゥイエ(最高級のカーネーション)
原名:Vitriol d’Oeillet
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2011年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/13,000円
カーネーションの持つ二面性
2018年3月21日に「ブラック&ベージュ コレクション」が「コレクションノワール」に変更され、10種類もの名香が2017年末から一挙に廃盤になりました。
この「ヴィトリオールドゥイエ(最高級のカーネーション)」もそのうちの一つでした。この香りを直訳すると「カーネーションの硫酸」という意味です。
「母の日(5月の第2日曜日)」の創設者アンナ・ジャーヴィス(1864-1948)により白いカーネーションがシンボル・フラワーとなったのですが、後に赤いカーネーションが生きている母を表わし、白いカーネーションが亡き母をたたえるようにと振り分けられていきました。
一方で、19世紀の英国で、舞踏会やパーティにおいて、男性がジャケットのボタンホールにカーネーションを付けるとき、白は紳士の象徴となり、20世紀に入り、赤はマフィア(イーノック・”ナッキー”・ジョンソンという禁酒法時代のマフィアのボスが愛用)の象徴という真逆の意味合いを持つようになりました。
ジキル博士とハイド氏になれ!
特に、『ゴッドファーザー』(1972)のオープニングで、娘の結婚パーティーのためにタキシードを着用しているドン・コルレオーネがつけていた赤いカーネーションは決定的でした。
つまり同じカーネーションであっても、白と赤で全く違う意味合いを持つのです。そのジキル博士とハイド氏のような二面性にフューチャーした香りそれが「ヴィトリオールドゥイエ」なのです。
オイゲノールが主成分であるカーネーションの香りは、現在香水に対するオイゲノール規制が行われているため、クローブによりその一面を創り出しています。このクローブとナツメグ、三種類のペッパーが絡み合い実に繊細なスパイスノートからこの香りははじまります(ナツメグがスパイスに甘さを付け加えている主犯である)。
やがて立ち上る百合とイランイランを主体としたフローラルに、スパイスが見事に絡み合わず、それがフローラルの持つ甘さを突出させず、シャープな官能性を際立たせる効果を生み出しています。
クールビューティーの官能性に酔いしれる
どこかショートカットに眼鏡姿で、スカートスーツの上から白衣を着ている聡明そうな美女をイメージさせる香りです。そして、所々で漂う仄かな甘さが、こういった美女と接するときに、違う彼女の側面を連想させ、異常なまでの官能的な妄想を掻き立てるのです。
それはクールな美女の眼鏡越しの冷ややかな眼差しに酔いしれる香りなのです。
三種類のペッパーが実に効果的に使用されており、昔ながらのカーネーションの香りにならないように調香されています。
この香りは、2011年にクリストファー・シェルドレイクにより調香されました。ルタンス/シェルドレイク同盟がフレグランス文化にもたらした革命を語るとき、この香りはひとつの好例でしょう。
それは、どのように香るのかではなく、その香りがどのように妄想を掻き立てるのか?という領域にはじめて踏み込んだということなのです。そういう意味において、セルジュ・ルタンスの香りは、「香りの知性と変態性」を的確に結び付ける人間心理に働きかけるスイッチとも言えるのです。
香水データ
香水名:ヴィトリオールドゥイエ(最高級のカーネーション)
原名:Vitriol d’Oeillet
種類:オード・パルファム
ブランド:セルジュ・ルタンス
調香師:クリストファー・シェルドレイク
発表年:2011年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/13,000円
シングルノート:ナツメグ、クローブ、カイエンペッパー(赤唐辛子)、ピンクペッパー、ブラックペッパー、パプリカ、カーネーション、ニオイアラセイトウ、百合、イランイラン