ツア ツア
原名:Tóor Tóor
種類:オード・パルファム
ブランド:レジーム・デ・フルール
調香師:ドミニク・ロピオン
発表年:2023年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/47,300円
販売代理店ホームページ:NOSE SHOP
アメリカを中心に「ザ ロウ」に置かれている香り
レジーム・デ・フルールのすべての香りに共通している点は、サプライズという要素です。私はいつも、今まで嗅いだことのない香りを作ろうとしています。過去に愛用し、身につけていた香水、日常の物の香り、人生で出会う新しい香りを取り上げ、それらを微調整し、リミックスし、変化させます。
休暇や思い出など、現実または文字通りの何かを捉えようとしているわけではありません。香りは記憶に関するものだという陳腐なナンセンスは嫌いです。私の作品は思い出や郷愁に関するものではなく、絵葉書でもありません。
アリア・ラザ
アリア・ラザとエズラ・ウッズによって、2014年にアメリカ・ロサンゼルスで創業されたレジーム・デ・フルールは、フランス語で〝花の統治〟と名付けられたニッチ・フレグランス・ブランドです。そこには、人間ではなく、自然が統治する世界を想像して香りを生み出していくという思いが込められています。
ブランドのクリエイティブ・ディレクターもつとめるアリアは、元々はニューヨークでビジュアル・アーティストとして、〝毒々しい夜にだけ咲き誇る花〟というアイデアからインスパイアされた一連のアートビデオを作り、一定の評価を得ていました。
しかし、自身もインタビューで答えているように、映画監督になりたかったが、好きな分野で生計を立てていくのは大変なため、元々、香水と花に魅せられていたこともあったので、ニッチ・フレグランスの会社を設立しました。ちなみに日本に初上陸したのは、2017年9月にエストネーションからでした。
2019年にはクロエ・セヴィニーとコラボしたフレグランスを誕生させ話題になりました。そして、勢いに乗って、2023年に、アリアが〝フレグランスのマーティン・スコセッシ〟と呼ぶ、ドミニク・ロピオンの協力により調香された、四つ目の香り「ツア ツア」が発売されました。〝Tóor Tóor〟とは、ウォロフ語で〝花〟の意味です(ウォロフ語は、セネガルの共通語です)。
このメンズ・フレグランスが発売されるきっかけは、7年前にアリアが、ニューヨークを拠点に活動するフランス人作家兼スタイリストのクリストファー・ニケとラデュレでマカロンを一緒に食べたことからでした。
ニケは、10代の頃に、パリでセルジュ・ルタンスのパレ・ロワイヤルのブティックを偶然見つけて以来、革新的な数々の香りに魅了されていました。
そして、2019年にクロエ・セヴィニーとのフレグランスを誕生させたアリアは、この香りを手に、ニケに、ブランド初のメンズ・フレグランスを一緒に創造しないかと持ち掛けたのでした。
当初は一つの香りを作る予定だったのですが、5つのコレクションへと進化し、「ツア ツア」はそのうちの四番目の香りとして誕生しました。
ずっと「カーナル フラワー」を愛してきた創業者。
この型破りなチューベローズを、ドミニク・ロピオンに作ってもらうために、アリアは、「カーナル フラワー」を身に纏い対面しました。パキスタン移民の娘であるアリアは、ヴィンセント・ギャロの映画『バッファロー’66』(1998)の舞台にもなったニューヨーク州バッファローで育ちました。
彼女がはじめてチューベローズの香水を嗅いだのは、10歳の時に、母親の化粧台に置かれていたゲランの「ジャルダン バガテール」でした。当時、温室で育てられていたジャスミンなどの花々に強い興味を持っていました。
そして16歳の時、マンハッタンの香水屋でオーナーと話していた時、「あなたはどうやらチューベローズがお好みのようですね」と言われたのでした。以降、ロベール・ピゲの「フラカ」に魅了され、彼女のシグネチャー・フレグランスとなり、20代に「カーナル フラワー」に出会い、その地位は取って代わったのでした。
このチューベローズの香りの、インスピレーションの源。
クリストファー・ニケは、二人のイメージをより明確にしていくために、アリアに、ロマン・ラプラードが撮影したセネガル建築の写真を提供してくれました。そして主に、セネガルの初代大統領を務めた詩人、レオポール・セダール・サンゴール(1906-2001)のセネガルの自宅のファサードがインスピレーションの源となっていったのでした。
サンゴールは、富裕な地主の息子として生まれ、フランス植民地下のセネガルにおいて、1928年にパリ留学し、ソルボンヌ大学で学びました。1935年アフリカ人としてはじめてアグレジェとなり、リセと大学の両方で教えることができた。
1939年9月、第二次世界大戦が始まったときにフランス軍に徴兵され、1940年にドイツ軍に捕らえられ、ナチスの捕虜強制収容所で2年間を過ごし、そこで彼の最高傑作の詩のいくつかを書きました。そして釈放後、フランスでレジスタンスに参加しました。
1960年8月20日にセネガル共和国の初代大統領に就任し、親フランスの穏健改革路線を採用して1980年12月31日まで長期政権を維持しました。1984年にアフリカ人としてはじめちぇアカデミー・フランセーズの会員に選出されました。
そしてサンゴールは、1957年に結婚していたノルマンディーの古い貴族の家系出身の妻コレット(1925-2019)の影響を受け、1978年に、ダカールに約8000平方メートルの土地にスーダン様式とブルータリズム様式をミックスした自宅を建てました。
チューベローズ×ベチバーの唯一無二な香り
私は子供の頃からチューベローズに魅了されてきました。自分で香水を作り始めてから、天然のチューベローズ・アブソリュートの複雑さ、つまりグリーン、クリーミー、アーシーな香りに衝撃を受けました。
誰もが認めるホワイト フローラルの王者、ドミニク・ロピオンが、魅惑的で官能的なことで有名な白い花を再現したチューベローズの香水。グレープフルーツの皮がフリージアと輝くピンクペッパーとともに爽やかさを添えます。希少なチューベローズ・アブソリュートがほんのり甘くクリーミーな芳醇さを醸し出します。3種類の抽出法で抽出したベチバーが、この香りにウッディな深みを加えます。
アリア・ラザ
〝ブルータリスト・チューベローズ〟とアリア・ラザが呼んでいるこの香りは、「アマリージュ」から「カーナルフラワー」まで、チューベローズ香水の超一流の作り手であるドミニクが、ブルータリズム様式で生み出したチューベローズの香りです。
それは、綿菓子やマシュマロの中に白い花が彷徨いこんだようなチューベローズの香りではなく、自然のチューベローズに近い、〝美しく、突き刺さるような、皮膚に塗る軟膏のような、クールな香り〟がします。
ドピオンが〝自然の宝石商〟と呼ぶラボラトリー・モニーク・レミーで調達したインド産チューベローズ・アブソリュートは、通常非常にフェミニンな成分なのですが、ここにひねりを加えるため、爆発的で非常に男性的なベチバーの抽出物を傍に佇ませたのでした。かくして〝ミステリアスで歪んだチューベローズ〟が生み出されたのでした。
そんな、センスの良いハイソサエティの人々のためのチューベローズの香りのはじまりは、とても渋くて苦いベチバーとピリっとしたグレープフルーツの皮とヴァイオレットの葉のグリーンシャワーからはじまります。とても乾燥した苦い自然の匂いを浴びていくようです。
すぐにバターのようなチューベローズの甘さが広がる中、その甘さを別のものに変えていくように(打ち消すようにではなく)ベチバーとレザーが溶け込んでゆきます。
ベチバーを中心に回る滑らかなレザーとバターを感じさせるチューベローズが素肌の上で温かく引き伸ばされていくようです。チューベローズというよりも、今まで存在しなかった珍しいベチバーの香りと言って良いでしょう。
このブランドのフレグランスは、どの香料も飛びぬけて高品質なものが使われているように感じられます。日本の「ザ ロウ」で取り扱われても、相性が良いブランドだと思います。
香水データ
香水名:ツア ツア
原名:Tóor Tóor
種類:オード・パルファム
ブランド:レジーム・デ・フルール
調香師:ドミニク・ロピオン
発表年:2023年
対象性別:ユニセックス
価格:75ml/47,300円
販売代理店ホームページ:NOSE SHOP
トップノート:ベチバーオイル、グレープフルーツ、ヴァイオレットリーフ
ミドルノート:チューベローズ・アブソリュート、ベチバーハート、フリージア
ラストノート:ベチバー・コンセントレイト、ディタックスウッド、レザー