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ルイ・ヴィトン

【ルイ ヴィトン】オンブレ ノマド(ジャック・キャヴァリエ)

ルイ・ヴィトン
©LOUIS VUITTON
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オンブレ ノマド

原名:Ombre Nomade
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2018年
対象性別:男性
価格:100ml/55,000円
公式ホームページ:ルイ・ヴィトン

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ルイ ヴィトン初のオリエンタル・パフューム

©LOUIS VUITTON

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私はルイ・ヴィトンで、中東の人々が賛同しないウードの香りを作るつもりはありませんでした。つまり西洋のブランドから見たウードではなく、本当に中東から来たウードの香りを作りたいと思いました。

ジャック・キャヴァリエ

中東ではどの家の玄関にも、少なくとも20種類以上の香水が揃えられたトレイが置いてあります。フランスの香水、ルイ・ヴィトン、シャネル、純粋なアラビアの香水、そしてウードが入ったごく小さな瓶が1つか2つ。

男性も女性も若い頃からそれを見ています。だから、彼らは香水が大好きなのです。子供の頃、両親が外出の直前に香水をつけているのを見て、自分も若い頃から香水をつけるようになるのです。

ジャック・キャヴァリエ

2016年9月に、ルイ・ヴィトンが、70年ぶりのフレグランスであるレ パルファン ルイ ヴィトン(一挙、7種類の香り)を、ルイ・ヴィトンの専属調香師に就任したジャック・キャヴァリエの調香により発表しました。

そして、2018年5月31日に、ブランド初のメンズ・フレグランスを5種類同時に発表しました。

そのすぐ後の、同年8月3日より、松屋銀座&表参道店限定で発売されたのが「幻のルイ・ヴィトン」と呼ばれる中東向けに作られた「オンブレ ノマド」でした(ちなみに5月4日から7月末までドバイでのみ販売されていた)。このコレクションは、後に「オリエンタル・パフューム」と呼ばれ、シリーズ化されることになります。

2022年11月現在、オリエンタル・シリーズは、表参道店、松屋銀座店、渋谷メンズ店、並木通り店、御堂筋店、神戸店、阪急メンズ店などの一部店舗でのみ取り扱われています。

調香とは、愛を育むことと同じです。考え過ぎると死んでしまいます。つまり、直感と合理性の絶妙なバランスが求められるのです。合理的でなければならない時もあれば、感情的で直感的でなければならない時もある。だから、香水作りは恋のようなものなのです。つまり、いくつかのステップを経て、炎を維持するようなものなのです。

ジャック・キャヴァリエ

「オンブレ ノマド」とはフランス語で「遊牧民の影」という意味です。それは砂漠への旅をイメージした香りであり、香料の中でも最も神秘的な成分の1つ、ウードに特化した香りです。この香りのプロトタイプは同年に発売された「ヌーボー モンド」でした。

2018年8月当時最も高価な香りであり、マーク・ニューソンがデザインしたボトルのカラーが、この一本だけはダークカラー(ダークブラウン)でした。それはまさに『ルイ・ヴィトンの影』と呼びたくなるほどにルイ・ヴィトンのダークサイド(暗黒面)を映し出した香りのようでもありました。

私は長い間、東洋の香水(Eastern perfumery)に対する強い情熱を持っていました。2002年ぐらいにはじめてドバイとサウジアラビアを訪問してからその虜になりました。 調香師だった父が数十年前に中東を訪れ、帰ってきたとき、中東の人たちは自分よりも香水に詳しいと言っていたのを覚えています。 香水の本当のルーツは東洋にあり、そこは香水が本物の香水のように香る場所なので、私はいつも深い感銘を抱いてきました。

私がまだ若かった頃、湾岸地域からカンヌに女性たちがやって来て、彼女たちに会う前からいつも彼女たちの香水の匂いを嗅ぐことができました。 これらの特徴的な香りは常に私にインスピレーションを与えてきました。

ジャック・キャヴァリエ

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本物のウードを使用した、妥協なきウードの香り

©LOUIS VUITTON

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香りはとても力強く、「ヌーボー モンド」と同じく、ウード・アッサムを使用しています。でも、この成分の濃度はこちらの方がとても高いのです。もちろん、とても高価なものですが、5回シャワーで流しても落ちない香りだと言えます。私は、濃度を西欧向けにして、中東のウードの調香スタイルを冒涜したくはなかったのです。

ジャック・キャヴァリエ

暗黒の砂漠の波切り進む中、終に太陽が現れた。太陽の光彩が砂漠を灼熱で包み込む前に〝影〟のように進むのだ!この香りの名は、「オンブレ ノマド」。さあ、漆黒のヒジャブのようなレザー(バーチ)と甘くクリーミーなベンゾインに、ジューシーなラズベリーを吹きかけ、野性の本能を研ぎ澄ますのだ!

すぐに、ゆっくりとスモーキーなインセンスの風に乗り、灼熱の砂漠さえも溶かしてゆく滑らかなウードが、砂漠に、つかの間のオアシスを生み出してゆきます。そして、その中で、ローズがラズベリーの果汁を栄養分にして、妖しく咲き誇るのです。

スモーキーなレザーとインセンス、フレッシュかつ酔わせるようなラズベリー、ダークなローズ、スパイシーなサフラン、それらすべてをウードが主催するサバト(魔宴)のさなかに煮つめてゆくのです。

神秘的で、黒魔術的でありながら、あくまでもルイ・ヴィトン的なのです。つまり、きわめて都会的かつ現代的な感覚に包まれていくのですが、都会的なウードを生み出すことが出来ているのはどうしてでしょうか?

それは恐らくジャック・キャヴァリエという調香師が、アルベルト・モリヤスと共に、2002年に生み出した西欧社会におけるはじめてのウード・フレグランスであるイヴ・サンローランの「M7」の大失敗の中から16年の時空を経て見つけ出した、〝英知〟が濃縮されているからではないでしょうか。

明らかに腐敗していくラズベリーの腐臭の中で、ベンゾインが溶け込んだスモーキーウードが注ぎ込まれ、新たなる生命を蘇らせるが如く、肌の上に〝復活の呪文〟を唱えてゆくのです。夢のようでありながら、スマートで洗練された〝永遠に肌の上に刻み込まれそうなウードの香り〟です。

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ルイ・ヴィトンのウードの旅がはじまる。

©LOUIS VUITTON

中東の人々は香水をレイヤリングすることをマスターしています。女性は通常2つか3つ、5つの香水を重ね付けしています。パリでもロンドンでも中東の女性の香りを感じることができ、ドバイ空港に降り立つとすぐにこれらの美しい香りを、心おきなく感じることができます。

ジャック・キャヴァリエ

ルイ・ヴィトンのウードの旅は、この香りから本格的にはじまるのです。それは、太陽と砂漠をラクダの上で感じるように、肌と心で感じる〝未知なる感覚〟を愉しみ嗜む、ラグジュアリーな香りの旅の始まりなのです。

ジャック・キャヴァリエがトム・フォードのために生み出した「タスカン レザー」と「ノワール デ ノワール」の延長線上にある香りとも言えます。

ちなみにこの香りで使用されているウード・アッサムは、インド北部アッサムが原産のウードです。その中でも最高級のものをジャック・キャヴァリエ自身が数ヶ月かけて探し、ついにバングラデシュにあるウード・アッサム農園を探し出したのでした。この家族経営の農園で、何百年もかけて栽培されたアガーウッドが使用されています(ルイ・ヴィトンが独占契約しています)。

ジャック・キャヴァリエ自身は「クール バタン」もしくは「レ サーブル ローズ」との重ね付けを提案しています。

「オンブレ ノマド」は、中東へのオマージュです。そして、この香りは世界で最も売れている香水のひとつです。なぜなら、このような香りは、今トレンドの香りのルールとは全く別の次元に存在するからです。

私は、この香りを作っているときから感じていました。妻や娘が付けて、グラース、パリ、ローマあらゆる場所で、人々の注目と絶賛を浴びたからです。そして、私はこの香りには、他の香水にはない何かがあると確信したのでした。

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香水データ

香水名:オンブレ ノマド
原名:Ombre Nomade
種類:オード・パルファム
ブランド:ルイ・ヴィトン
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2018年
対象性別:男性
価格:100ml/55,000円
公式ホームページ:ルイ・ヴィトン


シングルノート:アガーウッド、ゼラニウム、ラズベリー、ローズ、アンバーウッド、ベンゾイン、バーチ、インセンス、サフラン、レザー