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【ディプティック】オレーヌ(セルジュ・カルギーヌ)

ディプティック
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オレーヌ

原名:Olene
種類:オード・トワレ
ブランド:ディプティック
調香師:セルジュ・カルギーヌ
発表年:1988年
対象性別:女性
価格:50ml/16,940円、100ml/23,100円
公式ホームページ:ディプティック

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心の中の春を呼び覚ますジャスミンの香り

©Diptyque

ディプティックから1988年に発売された「オレーヌ」は、夕日が美しく花々を照らすヴェネツィアの庭園をイメージした香りです。セルジュ・カルギーヌにより調香されました。

夕暮れ時、ヴェネツィアの庭園のパーゴラの下で楽しむディナー。涼しげな春の風に乗り、ウィステリア(藤)とジャスミンの甘い香りが漂ってくるというイメージです。

『プリマヴェーラ』サンドロ・ボッティチェッリ、1482年頃。

フローラが、ボトルのラベルの裏に描かれている。©Diptyque

ボッティチェッリの『プリマヴェーラ』の中にも描かれたローマ神話の女神フローラが、ボトルのラベルの裏にイラストで描かれています。花、春、豊穣を司るとても美しい女神です。

この香りの本当の名前は『プリマヴェーラ(春)』ではないでしょうか?と考えてしまうほど美しいこの香りに言葉は必要なのだろうかと今考えています。ただ単に〝心の中の春を呼び覚ます香り〟で十分この香りの魅力のすべてが伝え切れていると思います。

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まるで私の夢の中から飛び出してきたジャスミンのよう


色彩やか、香り鮮やかな花々で溢れる春のヴェネツィアの街を歩いているように最初から最後まで花で満たしてくれるこの香りは、〝舞い散る春の香り〟です。

花蜜が太陽の光で溶けていくようなバニラのように甘いハニーサックルの香りから「ボトルの中の春」は解き放たれます。少し経つと、水仙が甘さの中に切り花のみずみずしさを与えてゆきます。

だんだんと太陽が傾き夕闇が迫る中、ジャスミンとウィステリアは、沈む太陽を惜しみ、迫りくる闇に期待と不安を募らせるように、甘く甘く甘く花の香りを放ちます。

それは澁澤龍彦の素敵な表現である「花とは植物の性器である」を体現した瞬間とも言えます。だからこそ、妖艶さよりも、大いなる母性のような優しさを感じさせてくれます。うっとりするほどに魅力的なジャスミンです。

このジャスミンは、太陽が沈み、満天の月明かりの中で、日中よりも明るく輝いています。ただ甘いだけでなく、インドールもハニーもしっかりと存在し、慈愛に満ちています。まるで私の夢の中から飛び出してきたジャスミンのようです。

そして、そこには、確実にパウダリーかつスパイシーな甘さを持つウィステリアが、ジャスミンのインドールの部分を肥やしに、静かに微笑むように存在しています。しかし、何よりもこの香りを素晴らしいものにしているのは、幻想的なハープの音色のような、ペールグリーンの芳香をそこはかとなく放つ水仙の存在なのです。

この香りの世界観を最も的確に伝えてくれるのは、セルジオ・メンデス&ブラジル ’66の「You Stepped Out of a Dream」以外にないでしょう。

ちなみにこの香りは、セルジュ・ルタンスの「アラニュイ」(2000年)とよく比較される香りです。私的には、「オレーヌ」には、スプレーを一吹きするたびに〝春の女神と再会できる喜び〟を感じさせる特別な何かを強く感じます。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「香水製造の歴史に自然が投げかけた多くの難点のひとつに、インドールがあげられる。インドールとスカトールの2つは、食べ物を消化するときに分解されて生まれる物質のため、排泄物に含まれる成分と共通している。」

「同時に、ジャスミン、イランイランなどの白い花々に多量に含まれていて、これはおそらく、花粉を集める昆虫をよせつけないためだろう。これらの匂いは「糞のよう、希釈すると花のよう」と教科書に述べられているが、ナンセンスだ。排泄物に含まれているときは排泄物の匂いが、花に含まれているときは花の香りがするのである。」

「インドールだけではインクか防虫剤のような匂いがする。では何が問題か?とあなたは訊くだろう。そこに含まれているインドールの量をはかると、たとえばジャスミン精油の場合、ピュアなものと同じ量を混ぜて合成香料を作り出すと、天然とは違い、防虫剤の匂いがする。どうして?誰にもわからない。だがこれこそ白い花々を還元するとき、天然香料に見られる、喉の奥がかゆくなるような感じがほとんどない大きな理由だ。」

「調香師たちはめいいっぱいインドールを入れてみるが、たいてい最大限の域になる前にやめる。そこで出てくるのが「オレーヌ」だ。実物に限りなく近く、正当インドールのジャスミンである。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:オレーヌ
原名:Olene
種類:オード・トワレ
ブランド:ディプティック
調香師:セルジュ・カルギーヌ
発表年:1988年
対象性別:女性
価格:50ml/16,940円、100ml/23,100円
公式ホームページ:ディプティック


トップノート:水仙、ハニーサックル
ミドルノート:ジャスミン、ウィステリア
ラストノート:ホワイト・フラワーズ、グリーンノート