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アニック・グタール

【グタール】ニュイ エトワーレ(イザベル・ドワイヤン/カミーユ・グタール)

アニック・グタール
©Goutal Paris
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ニュイ エトワーレ

【特別監修】カイエデモードが崇拝するフレグランス・スペシャリスト様

原名:Nuit Etoilee
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:イザベル・ドワイヤン、カミーユ・グタール
発表年:2012年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/11,550円、100ml/16,275円

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絵本を読み進めるように香る=香りの童話

©Goutal Paris

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アニック・グタール(1946-1999)により1981年に創業された「アニック・グタール」は、アニックの死後、娘のカミーユ・グタールと調香師のイザベル・ドワイヤンに引き継がれました。そんな二人によって2012年に生み出されたのが「ニュイ エトワーレ」です。

ゴッホの名画『星月夜』からインスパイアされ生み出されたこの香りは、香りが生み出しうる〝絵本を読み進めるような感覚〟を突き詰めていった幻想的な香りです。それはまさにロマン・ロランが「ジャン・クリストフ」において登場人物に言わせた以下の台詞を体現したような香りです。

クリストフよ。キミがお家のなかで作っているもの(楽譜)は、どれもこれも音楽ではないよ。家の中の音楽は部屋の中の太陽さ。音楽はキミが神様のなつかしい新鮮な空気を吸っているときに、家の外にあるんだ。

それは「こおろぎの鳴き声のするどいトレモロが星々のきらめきにこたえているよう」であり「川の上のほうの丘から一羽のナイチンゲールのかよわい歌声が真夜中に降ってきた」という真夜中の大自然の中にこそ、至福の音楽が演奏されるという感覚を香りに置き換えたフレグランスなのです。

つまりは、自然との孤独な交わりを、香りにより絵本のような物語にした香りなのです。

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ゴッホの『星月夜』から生まれた香り


この香りは、二人の調香師がフィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の代表作である『星月夜』(La nuit étoilée)からインスパイアされ生み出された香りです。

1888年12月23日、フランス南部のアルルで、ゴッホは自身の左耳を切断し、翌年の1889年5月8日にサン=ポール・ド・モゾル修道院の精神病院に自主入院することに決めました。『星月夜』は、同年6月、ゴッホが療養中に描いた絵画でした。

異様に大きな星々が煌く中、夜空が渦巻き、地上さえも飲み込んでしまいそうなすごい迫力があるこの絵画に存在する二つの怪物のような存在。それは今にも爆発しそうな三日月と燃えるような糸杉です。

『星月夜』の素晴らしさは、一瞬で、鑑賞者を別世界に招き入れるだけでなく、色々な疑問を抱かせると同時に、鑑賞者それぞれの物語を紡ぎ出していく所にあります。そして、この香りの素晴らしさも同じ部分にあります。

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もしひとつ星を手に入れたとしたら、こんな香りかしら

©Goutal Paris

ひと吹きで、透き通るような摘み取ったばかりのペパーミントが解き放たれ、物語のように情景が流れるように香り立ちます。それは家族がいるお家から夜中にこっそり抜け出すと、どこまでも澄み渡る凍てついた空気に包まれていく感覚のようです。

そして、空を見上げると、優しく煌くシトロンと爽やかに甘いスイートオレンジの香りが、星が降るように辺りを明るく照らします。すぐにミントの葉は砕かれ、まるで降り注ぐような満天の星空と、湖に反射して輝きを増した月明かりの広がりを全身に感じてゆきます。

やがて、パイン(松の木)や(温かくて甘い)バルサムモミの木々の温もりに誘われるように、お家の傍にある深い深い森の中へと彷徨い込むのです。この香りからは、本当に夜の森の中に迷い込んだような森の香りがします。

ハーバルでアーシィーなアンジェリカとメープルシロップのようなイモーテルの儚くも苦甘いパウダリーな香りに包み込まれたとき、あなたは地球上にただ一人っきりの存在になるのです。そして、ふと背後にほのかに感じる焦げたスモーキーな香りの正体を突き止めたくなります。それはまるで遠くから狼の遠吠えが聞こえるような幻想的な香りです。

「ニュイ エトワーレ」それはまるで空想の〝ユニコーン〟に出会えるような夢の世界。もしひとつ星を手に入れたとしたら、こんな香りかしらと想うような香りです。

ちなみにこの香りは、セルジュ・ルタンスの「ニュイ ドゥ セロファン」の世界観にとても近いのですが、〝森〟に迷い込んだかのようなバルサムモミ、パイン(松の木)がよりしっかり香ります。

一方でルイ・ヴィトンの「ニュイ ドゥ フ」=〝砂漠の夜〟の神秘性ともまた違う、夜の森に迷い込みその幻想的な光景に目を奪われて、言葉を失ってしまうような物語が香りできちんと表現されています。

ちなみに調香師のイザベル・ドワイヤンはこの香りについて「松林の傍を流れる小川のせせらぎを聞きながら、近づく夕暮れの情景を表現した香りです」と説明しています。特にミントは「川の流れの音」であると仰っているのですが、どうやらこの香りには、調香師の思惑を飛び越えた世界観の広がりを持つ力があるようです。

同じ香りでありながら、女性用と男性用のボトルデザインが存在する珍しいフレグランスです。

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オード・パルファム版について

伊勢丹新宿店限定で発売されたバタフライボトル。100ml/24,150円 ©Goutal Paris

トップノート:ミント、シトロン、オレンジ
ミドルノート:シベリア産パイン(松の木)、バルサムモミ、アイリス
ラストノート:イモーテル、アンジェリカシード、トンカビーン、アンバー

オード・パルファム版には、アイリスとアンバーが追加されています。香りの持つ世界観は同じなのですが、トップからドライダウンへのコントラストが、ダークチョコレートのようなアンバーにより、よりバニリックではっきりとしています。

それは針葉樹の中に混ざり込んだアンバーと、ミントやアンジェリカの冷たさすら感じる清涼感のコントラストです。更に、パウダリーなアイリスが、ひんやりとより神話的なムードを香りの中に生み出しています。こちらの方が、ユニコーンの気配をより感じ取ることができます。

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香水データ

香水名:ニュイ エトワーレ
原名:Nuit Etoilee
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:イザベル・ドワイヤン、カミーユ・グタール
発表年:2012年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/11,550円、100ml/16,275円


トップノート:ミント、シトロン、オレンジ
ミドルノート:シベリア産パイン(松の木)、バルサムモミ
ラストノート:イモーテル、アンジェリカシード、トンカビーン