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【ル ラボ】ムース ド シェーヌ30 アムステルダム(ダフネ・ブジェ)

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ムース ド シェーヌ30 アムステルダム

【特別監修】Le Chercheur de Parfum様

原名:Mousse de Chene 30 Amsterdam
種類:オード・パルファム
ブランド:ル ラボ
調香師:ダフネ・ブジェ
発表年:2017年
対象性別:ユニセックス
価格:1.5ml/990円、15ml/13,200円、50ml/29,700円、100ml/42,900円
公式ホームページ:ル ラボ

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2017年、香水の歴史に「ネオシプレ」が加わる。


ル ラボが出店している都市ごとの限定の香り「シティ エクスクルーシブ コレクション」。その中のひとつとして2017年に発売されたアムステルダム限定の香りが、「ムース ド シェーヌ30」です。ダフネ・ブジェにより調香されました。

「ムース ド シェーヌ」とは、フランス語で〝オークモス〟という意味です。IFRA(国際香粧品香料協会)によって制限されたオークモスを蘇らせた香りです。

ある香料が制限され、その香料を使いたい時、考えられる方法は2つあります。1つは代替の合成香料を探すこと、もう1つは同じようなエフェクトを出すアコードを生み出すことです。この香りは、その両方の方法を駆使して作られました。

元々、オークモスが制限されたのは、アレルギー性の成分が含まれているからでした。アレルギーを引き起こすメインの成分がatranol(アトラノール)とchloroatranol(クロロアトラノール)です。

これらを取り除き、アトラノールの割合が低くなったのがlow-Atranol oakmossです。フィルメニッヒ社が開発した、そのうちの一つである合成香料クリスタルモスは、2009年ごろから使われています(ダフネは2009年に「ア セント バイ イッセイ ミヤケ」から使用している)。

さらに、この香りにはフィルメニッヒ社が、ホワイトバイオテクノロジーをはじめて採用し、2014年に開発した合成香料クリアーウッド(Clearwood™)が使用されています。天然のパチョリ精油から、アーシーさとレザーぽさを取り除いた透明感あふれる香りが特徴です。

ウッディな成分をオーバードーズしたいときに使用するのですが、パチョリの代わりになるのではなく、パチョリを補完するものとして使われます。

この尖ったグリーン調のモスの香り(クリスタルモス)と深みがあり爽やかでウッディなパチョリ調の香り(クリアーウッド)を組み合わせることで、「ムース ド シェーヌ30」の核となるスモーキーかつシャープで深みのある香りが生みだされているのです。

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アムステルダムの香りがなぜ「オークモス」なのでしょうか?


伝統と先進が融合した都市、それがアムステルダム(オランダ)です。まず先進的な部分としてあげられるのが、2001年の同性婚を世界で初めて合法化した部分と、大麻と売春が合法した部分です。一方、伝統としては、レンブラントやゴッホ、フェルメールなどの絵画、ハイネケンのビール、そして何と言っても17世紀に設計された運河と街並みでしょう。

そんな伝統を大切に残しつつも、世界でも最も進んでいると言われるサーキュラーエコノミーという概念により、古い造船所や跡地を新たなオフィスやホテルへと生まれ変わらせているのです。

これは、使用できなくなった天然のオークモスを現代に甦らせることと似ています。シプレ最初の香水「ルシープル」は、地中海の島キプロス島にインスピレーションを受け作られましたが、ル ラボにとってネオシプレは、キプロスではなく、同じくらい美しいアムステルダムから始まるという意志表示なのかもしれません。

実に興味深いのは、「ムース ド シェーヌ30」は通常シプレに使用されるベルガモットが使用されていることが記載されていません。通常のシプレにおいて、ベルガモットの弾けるフレッシュさはとても重要なのですが、「ムース ド シェーヌ30」にはこのフレッシュさが存在しないのがこの香りを面白くしています。それでいてシプレだと分かるのです。

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雨上がりのヒカリゴケの煌めき


香水の世界において古典的な香調であるシプレ(オークモス、ラブダナム、ベルガモットの組み合わせ)に、新しい調べを奏でさせようとしたこの香りは、革新的な二つの合成香料クリアーウッドとクリスタルモスをブレンドして、新しいオークモスとパチョリの恋のものがたりをはじめるようにしてはじまります。

何よりもこの香りが魅力的なのは、従来のシプレを合成香料で生み出そうといるのではなく、新しいシプレを生み出そうとしているところにあります。

通常のシプレに不可欠であるベルガモットの閃光なしに、パチョリがとても情熱的に、オークモスへの深い愛を伝えていきます。すぐに、シナモン、ピメント、ピンクペッパーがパチョリの応援に加わります。特にロージーなピンクペッパーが弾ける感覚が、香り全体に、ネオシプレの表情をはっきりと肌の上で示してくれます。

雨の運河、水草、雨に塗れたパチョリ、湿気を帯びたスパイス類。唐招提寺の雨上がりの苔庭。降り注ぐスパイスシャワーがオークモスと溶け合い、感涙にむせびながら、色々なきらめきを生み出してゆきます。

やがて、スパイスシャワー=雨は止み、水滴を含んだ苔に木立の隙間から降り注ぐ太陽光が、ハーバルに泡立つベイラムの香りを伴いながら、温かみを帯びた優しいスパイス類と見事な調和を見せてくれます。

さぁ、スモーキーかつクリーミーなネオシプレの恋はここに成就したのです。21世紀に、1940年にクリフ・エドワーズがディズニー映画「ピノキオ」の挿入歌として歌った『星に願いを』を聞くように、20世紀半ばのシプレの感動の歌を、肌を透かして、心に響かせてくれるようです。

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「ムース ド シェーヌ30」と比較したくなる香り

1968年。©GUERLAIN

ピンクペッパーがフローラル感だけでなくフルーティさを生み出しているので、フルーティシプレの香水との比較をお勧め致します。フルーティシプレは、シプレのエレガントさもありながら、フルーティ感があるので、クラシックすぎません。若い女性との相性がとても良いと思います。

ゲランの「ミツコ」、ディファレント・カンパニーの「スブリーム バルキス」、フレデリック・マルの「オー ドゥ マグノリア」、パルルモアドゥパルファムの「シプレ モジョ」と比較してみると興味深いでしょう。

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香水データ

香水名:ムース ド シェーヌ30 アムステルダム
原名:Mousse de Chene 30 Amsterdam
種類:オード・パルファム
ブランド:ル ラボ
調香師:ダフネ・ブジェ
発表年:2017年
対象性別:ユニセックス
価格:1.5ml/990円、15ml/13,200円、50ml/29,700円、100ml/42,900円
公式ホームページ:ル ラボ


シングルノート:パチョリ、オークモス、シナモン、ベイラム、ピンクペッパー、ピメント