「向こう側でキスをするのかい?」
ヴィットリア・スタイル7
- フロントプリーツ・フリルシャツ、ホワイト、ラッフルカフス、カラーを立ててシャツイン
- レザーベルト
- 黒のペンシルスカート
- 籐編みのカゴバッグ
ファッションは、その女性の心情を写し出す鏡です。こうして見るとボートネックとは、守りのスタイルであり、フリルブラウスは攻めのスタイルなのです。そして、そのブラウスのボタンを意識的に開けて、胸の谷間にピエロの視線を釘付けにし、「向こう側でキスをする?」という言葉を引き出したのです。
そして、結ばれた後、「わからないと答えるばかりだ!なら、どうして僕と会うんだ!」と感情的になるピエロに、返答するヴィットリアの表情。それはこの作品で最も美しい瞬間でした。そして、その返答の言葉は、「あなたのことをもっと愛したくて」でした。
恋はこうして始まり、こうして終わっていく。
ヴィットリア・スタイル8
- 白のボートネック、フレンチスリーブ・カットソーとスカート
- 大ぶりなネックレス
- 最初に登場したハンドバッグ
- ストラップパンプス
主人公の娘はローマ出身の際立ったブルジョワジーで、何と言いましょうか、ある種の道徳原理の犠牲者です。従って、彼女はあのような関係を続けていくのが少し怖いのです。
ミケランジェロ・アントニオーニ
本作の最後の5分間は、登場人物不在のエンディングを迎えるのですが、その前に二人の恋愛は沸点に達します。そして、「明日会おう、明日もあさっても」「午後8時にいつもの場所で」という会話を交わします。しかし、二人とも、その待ち合わせ場所には行きませんでした。
人間の声が完全に沈黙した5分間。もはやそこには野生は存在せず、単なる事物へと後退した人間が存在するだけでした。しかし、二人が、この日約束をすっぽかしたのは、没頭できた最初のキスだったガラス越しのキスを蘇らせるためだったのかもしれません。二人の間に存在する薄い無機質な物質。しかし、それがあることによって、二人には野生的な情熱を発する勇気が生まれたのです。
ただ一つ言えること。それは、一つの恋はこうして終わり、一つの愛がこうして始まるのです。この作品は、無機質なものを通して、人間の野生の心が再生する様を描いた作品なのです。