究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ
その他のブランド

【パロマ ピカソ】ミノタウロス(ミシェル・アルメラック)

その他のブランド
この記事は約5分で読めます。

ミノタウロス

原名:Minotaure
種類:オード・パルファム
ブランド:パロマ・ピカソ
調香師:ミシェル・アルメラック
発表年:1992年
対象性別:男性
価格:日本未発売

スポンサーリンク

パロマ・ピカソの父パブロが愛した『ミノタウロス』

パロマ・ピカソ

パロマ・ピカソより1992年に発売されたメンズ・フレグランス「ミノタウロス」は、Cosmair社を製造元として、ミシェル・アルメラックにより調香されました。

〝ミノタウロス〟とは、ギリシア神話に登場する、クレタ島のクノッソス宮殿の迷宮(ラビュリントス)に閉じ込められた、人の肉を喰らう牛頭人身の怪物です。ダンテの『神曲』では、「地獄篇」にも登場しています。

The Remains of Minotaur in a harlequin costume, 1936

La Minotauromachie, 1935

愛する娘に自身が愛した特別な存在・鳩(=パロマ)と名づけた父パブロ・ピカソ。彼が愛した作品のモチーフのひとつが、平和の象徴である鳩とは真逆な、ミノタウロスでした。それはスペイン文化の闘牛や牛追いといった牛にまるわる儀式に魅了されていたパブロにとって、運命的な存在でした。

男をなぶり殺し、女を陵辱し快楽の限りを貪るこの怪物に、非合理性や無意識の力を見出したパブロは、巨大な肉体的パワーと性的エネルギーを持つミノタウロスに自己投影しつつも、倒されねばならぬ絶対悪の役割を与えたのでした。

『ミノトール』創刊号, 1933

そして、1933年に創刊されたシュルレアリスム雑誌「ミノトール(Minotaure、フランス語でミノタウロスの意味)」(~1939年まで、計11巻)に全面的に協力しました。この創刊号の表紙はパブロが描いたミノタウロスでした。

1920年代から30年代にかけて、ミノタウロスと迷宮は、まさに男性の中に存在する秘められた非合理な衝動を表し、テセウス(意識)が迷宮に入りミノタウロスを倒して勝利するというフロイト的な解釈が持て囃されたのでした。

スポンサーリンク

パロマ・ピカソの中に眠る『ミノタウロス』



パロマ・ピカソ(1949-)が「ミノタウロス」という名の香りを作らせたことには、彼女と父パブロの関係が影響しています。それは、わずか4歳の時に、母フランソワーズ・ジローが、パブロと別居したため、(結婚していなかったことと)パブロの正妻の意向により、パロマは父と会うことが許されなくなりました。

さらに、1964年にフランソワーズが『ピカソとの日々』を出版したことにより、パブロは、娘パロマとその母との縁を永久に切ったのでした。まさにパブロがかつてフランソワーズに語った「女性は2種類しかいない。女神か、ドアマットだ」という言葉を実践したのでした。

そしてパロマは、1973年にパブロが死んだ後、イヴ・サンローランにも認められたジュエリー・デザイナーとしての道を進むことを辞めるのですが、数年後、不死鳥のように蘇り、1980年にティファニーのデザイナーとして活躍することになりました。

スポンサーリンク

〝香りのラビリンス〟に飛び込んで、ミノタウロスを打ち倒せ!

©Paloma Picasso

©Paloma Picasso

「ミノタウロス」は、クレタ島の地中海のシトラスとフルーツ(チェリーとオレンジ)の輝きに、ハーブ(ラベンダー、タラゴン)とスパイスが注ぎ込まれるようにしてはじまります。アルデハイドとマリンノートによってすべてが掻き混ぜられた、獣的なところは微塵もない、ソーピィーで鮮やかなはじまり方です。

すぐに、アルデハイドの渦の中に、ローズとゼラニウムのハーモニーが奏でられ、インドールの効いたジャスミンを中心とするスズラン、イランイランの甘い花の蜜のようなフローラルブーケに包み込まれてゆきます。その背後に流れる苦いガルバナムが見事なアクセントを生み出しています。

やがて、クリーミーなサンダルウッド、甘いバニラとトンカビーン、スモーキーなレザー、アンバリームスクによって、円やかに肌の上に引き伸ばされていくのです。

野蛮なミノタウロスの気配を一切感じさせない香りです。意気込んで、ダイダロスが作った迷宮に挑んだが、すでにテセウスが成敗した後だった、そんな〝甘い勝利の余韻と持て余した勇者の高揚する心〟に満たされていくような温かなオリエンタルの香りです。

ちなみにこの香りは、デヴィッド・ボウイが愛用している香りとして有名でした。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:ミノタウロス
原名:Minotaure
種類:オード・パルファム
ブランド:パロマ・ピカソ
調香師:ミシェル・アルメラック
発表年:1992年
対象性別:男性
価格:日本未発売


トップノート:フルーツノート、アルデハイド、ベルガモット、ガルバナム、タラゴン、コリアンダー
ミドルノート:ゼラニウム、ジャスミン、ローズ、スズラン
ラストノート:トンカビーン、バニラ、サンダルウッド、アンバー、ムスク、シダー