世界一美しいと言われた女ミッシェル・リー
女エージェントを演じるミッシェル・リー(1970-)は、1988年にミス香港に輝き、1995年当時、絶世の美貌とスタイルで、中華圏一の美女「楊貴妃の再来」とまで言われた人です。
しかしその美貌ゆえに、本作出演までは、お飾り程度の役柄(『スウォーズマン 女神伝説の章』(1992)と『レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター』シリーズ(1992-1993)に代表される)をつとめてきました。そんな彼女が、本作において、結果的には、唯一と言っても良い、女優としての存在感を示すことが出来ました。
撮影に対して、クリストファー・ドイル(1952-)に、ウォン・カーウァイはこう指示を出しました。「前回(『恋する惑星』)は、ロングレンズを使ったから、今回は超広角レンズを使おう」と。
かくして撮影の初日は、ラストに女エージェントが、煙草を片手に麺を食べるシーンから始まりました。
「良いアイディアだけれど、超広角レンズを使うと、役者がきれいに映らないよ」というドイルの言葉に対する答えが、映像の中で、ただただ美しく愛らしかったミッシェル・リーという女優に新たな一面を与えることになりました。と同時に、登場人物の周囲の世界からの孤立を伝える効果も生み出したのでした。

1989年度ミス香港、身長171㎝。圧倒的な美貌。

ミッシェルの父親はポルトガル人で、浮気をして中国人の母を捨てて去り、1995年に死去しました。

男性の理想というよりも、女性の理想を全て詰め込んだような人。

『スウォーズマン 女神伝説の章』の三枚目の役柄も可愛かった。
1997年、資生堂「ピエヌ」のコマーシャルに出演
女エージェントのファッション3
レオパルド・ルック
- 豹柄のロングスリーブ・タイトシャツ
- 黒のパテントレザーミニ
- 蛍光オレンジのアクリル板を丸く切ってリリアンを通しただけのペンダント
- 黒のチェーンショルダーバッグ、パテントレザー
- チャンキーヒールパンプス
1996年秋冬あたりから流行することになるアニマル・プリントが登場します。そこには明らかに21世紀のファスト・ファッション・ブームの息吹が見て取れます。
それは明らかに無機質な素材を使用したアンチ・ファッションであり、服を着る前に、メイクを着る新しい女性=ケミカル・ガールの誕生を予見していました。

女豹のようなレオパルド・スタイル。

肉まんを持って、男を小バカにする表情がとても良いです。

指輪に注目!お菓子のおまけについてそうなキッズリングみたいです。

チャンキーヒールのパンプスを履いていることが分かります。

シャギー・カットがとても似合っていて、タイムレスにクールです。

アジア人女性のみが放ちうる、独特なけだるい色気。
女エージェントのファッション4
90年代109スタイル
- 白地にカラフルな花柄のミニワンピ
- 黒のチェーンショルダーバッグ、パテントレザー
女エージェントのファッション5
フローラルプリント
- 派手な花柄ブラウス
- 白のミニスカート
- 白の総レーススリップ
そして、『忘記他』が流れる
1980年にテレサ・テンが歌った「忘記他」が、シャーリー・クァンのカバーにより流れます。殺し屋が女エージェントに送ったメッセージであるジュークボックスの番号〝1818〟の曲なのですが、〝彼を忘れるわ〟というこの80年代の中華バラードが、21世紀現代においては、ダサいと感じる以上に、不思議なノスタルジーを感じさせるのです。
ジュークボックスに抱きつくミッシェル・リーは、『素直な悪女』のブリジット・バルドーを彷彿させるものがあってとても良く、ただ、オシャレな英語の歌を挿入歌として使わないところに、この作品の真骨頂があると言えます。
本作の中華ソングに匹敵するだけの印象を与えた香港映画の中の中華ソングは『男たちの挽歌』(1986)の中で、最強にダサすぎて、クセになってしまい何回も聞いてしまう陳小雲(チェン・シャオユン)の「免失志」が流れるシーンだろう(ポンッという音が頭から離れない・・・)。
女エージェントのファッション6
クラブスタイル
- 光沢のあるボディコン
- 液体が中に入っているキッズリング
作品データ
作品名:天使の涙 Fallen Angels 堕落天使(1995)
監督:ウォン・カーウァイ
衣装:ウィリアム・チャン
出演者:ミッシェル・リー/カレン・モク/チャーリー・ヤン/レオン・ライ/金城武