リズム・ネイション。僕はリズムの奴隷です。
「ブラック・オア・ホワイト」 1991年11月リリース。全米第1位/全英第1位
もうボクはジャクソン5の少年マイケルじゃない。マイケル・ジャクソンとして完全に新しいキャラクターとルックスで、別人になるべきなんだ。
マイケル・ジャクソン 1979年11月メモ書きより
アルバム『デンジャラス』(プロデューサーはテディー・ライリー)からの先行シングル。作詞・作曲はマイケル・ジャクソン自身です。ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュがギターを担当しています。ショートフィルムの中で、色々な人種の顔が、踊りながら次々に別人に変わっていくモーフィングが話題になりました(タイラ・バンクスも出演)。
『スリラー』も監督したジョン・ランディスがマイケルに再起用され、『ホーム・アローン』(1990)で大ブレイク中のマコーレー・カルキンが競演し、こちらも話題になりました。曲調は、ダンスとラップとハードロックがミックスされた当時斬新なスタイルです。
マイケル・ジャクソン・ルック23 ホワイトシルクシャツ・スタイル
- 白のチャイナシルク・ボタンダウンシャツ。ロングスリーブ
- 白のVネックシャツ
- ブラック・コーデュロイパンツ
- ブラックレザーにブラックメタルのレガース
- 右手に白のレザーアームプロテクター
- 白のソックス
- 黒レザーのペニーローファー
1990年代に入り、マイケル・ジャクソンのライブからハンドマイクは脇役へと追いやられていきます。それはヘッドセットタイプのワイヤレスマイクの登場によってです。そして、彼のライブパフォーマンスはさらに激しさと同時にエモーショナルな舞踏が生み出す芸術性を帯びることになります。
ちなみにショートフィルムは、トゥイステッド・シスターの「We’re Not Gonna Take It」(1984年)からインスパイアされています。しかし、この曲の中身はより深いものです。黒か白?マイケル自身から急速に失われていく黒人のカラー。鏡の前で常に自分と向き合う日々の中で、かつての男性らしさが失われていくのも目の当たりにしていたことでしょう。
白人でも黒人でも、男性でも女性でも、そんなこと重要じゃないだろ?ノーレイス、ノージェンダーの時代。いや、クロスカルチャー、クロスジェンダーの時代なんだ!というのがショートフィルムで示されています。そして、ブラックパンサーになったマイケルが中盤以降に、踊り狂います。男性のシンボルをひたすら誇示しながら、ジェンダーをクロスして、両性をドキリとさせるのです。諸君、彼こそが、アンドロギュヌスなのです。