作品名:紳士は金髪がお好き Gentlemen Prefer Blondes (1953)
監督:ハワード・ホークス
衣装:ウィリアム・トラヴィーラ
出演者:マリリン・モンロー/ジェーン・ラッセル/チャールズ・コバーン/トミー・ヌーナン
紳士はブロンドがお好き。淑女はダイヤモンドがお好き。
マリリン・モンロー(1926-1962)が、ハリウッド・スターの頂点に登り詰めたのは1953年7月から8月にかけて全米で封切された『紳士は金髪がお好き』によってでした。
この作品によってマリリンは、アメリカのセックス・シンボルになり、あっという間に世界のセックス・シンボルになったのでした。まず最初に、世界中の男性の熱い胸と股間を刺激したマリリンは、その死後、世界中の女性が憧れる存在へと昇華し、21世紀に至り、全人類に対して、〝ダイヤモンドのような永遠の輝きに満ちた女神〟のような存在へと転生するに至ったのです。
スターという存在が、SNSの存在により軽くなってしまった今(自己発信はスターには不要)、ファッション感度の高い女性にとって、スタイル・アイコンとなる女性の5人としてあげられるのが、オードリー・ヘプバーン、グレース・ケリー、ブリジット・バルドー。カトリーヌ・ドヌーヴ、そして、マリリン・モンローです。
本作には、マリリンのスタイル・アイコンとしての魅力を決定づける3つのアイコンが登場します。
- (歌劇団の)レビュー・スタイル
- レッド・スパンコールドレス
- そして、ショッキングピンクドレス
特にショッキングピンクドレスが、マリリン・モンローのイメージに与えた影響は、計り知れません。
マリリン・モンローのオープニング・ドレス
マリリンは、必ず私よりも先に撮影所入りして、リハーサルも済ませているのよ。そう、すべてすっかり用意ができているのに、いざ撮影開始となると、怖くなってセットに出られないの。アラン・スナイダー(『モンキービジネス』(1952)以降全てのマリリンのメイクアップを担当し、プライベートにおいても。そして、彼女の葬儀で棺をかついだ)と相談して、ぎりぎりになったら私が迎えに行っていっしょにセット入りすることにしたの。
ジェーン・ラッセル
マリリン・モンローは、ついに勝ち取ったスターの座を決定づけるこの作品の撮影において、初めての主役であり、初めてのミュージカル出演ということもあり、極度の緊張の中で撮影に臨んでいました。そんな彼女の状況を知った上でこの作品を見ると、どこかぎこちなく、ビクビクしているマリリンがそこにいることが分かります。そして、そんな彼女が、ある瞬間に、一瞬にして、すさまじい魅惑の雰囲気を醸し出すのです。この豹変の不思議さこそが、マリリン・モンローだけが持っている魅力なのです。
どこか危なっかしく踊るマリリンが魅力的!
マリリン・モンロー・ルック1 レッド・スパンコールドレス
- レッド・スパンコールのロングスリーブ・ロングシルクドレス、フロントスリット、腰にダイヤモンドジュエリー、深いⅤ字型のネックライン
- ダイヤモンド・ネックレス&イヤリング
- 左手首に蛇タイプのダイヤモンドバングル
- 白と赤のフェザー&スパンコールヘッドドレス
- 黒ドットのレッド・オープントゥセパレーテッドパンプス
赤のスパンコールドレスを着た2人の女優だけが登場するオープニングを見るだけで、50年代のハリウッドの凄さがよく理解できます。衣裳も、音楽も、セットデザインも、そして、振付けまでもが超一流の人々の仕事による空間がそこにはあります。
そして、これほど派手なドレスを着て踊る女優2人が、女優とファッション・モデルの違いを明確に教えてくれます。非日常的なショーダンサーを女優が演じることによって示すファッションの非日常的な要素は、ファッションショーのランウェイで、非日常的なファッションに身を包み、澄ました表情で歩き去っていく感覚とは全く違うものです。女優だけが、ストーリーの中で非日常的なファッションに真実味を生み出すことが出来るのです。