フレンチシック=アクセサリーを多くつけすぎないこと
ほぼ全編にわたるジュヌヴィエーヴのアクセサリーはきわめてシンプルです。
- 右手首にパールのステーションタイプのブレスレット
- 細いチェーンのゴールドのコインネックレス
この2つだけをつけています。そして、結婚後にギィと再会した時も、同じブレスレットだけはずっとつけています。豪華な指輪とイヤリングとは不揃いなバランスでつけ続けているのです。
ちなみにこの時、21歳のカトリーヌ・ドヌーヴは、すでに1963年に一子を産み、ロジェ・バディムとの別れの洗礼を受け、未婚の母の時期でした(1965年“ミスター・スウィンギング・ロンドン”デヴィッド・ベイリーと結婚)。彼女のその経験が、16歳から22歳の女性の役柄に見事に反映されています。女性の中で、絶対に外せないアクセサリーというものが存在するならば、それは、その女性が日々呼び覚ましたい愛の記憶であり、男性にとって、女性のそんなアクセサリーの存在を知ることは、過去の愛さえも大切にする、信頼の置ける人のように感じられるわけなのです。
ジュヌヴィエーヴ・ルック11 ダークブラウンファーコート
- 母のかたみの茶色のファーロングコート。ラウンドカラー
- 黒のヘアリボン
- ブラックワンピース
- パールイヤリング
- ブラック・ローヒールパンプス
第17回カンヌ国際映画祭パルム・ドール
私は、カトリーヌ・ドヌーヴが大好きです。大好きと言うよりも神の如く崇めています。特に、歩き方が美しくない(ちょっとがに股)所が大好きなのです。スーパーモデルが歩くマネキンであるならば、女優は、歩くマネキンである必要はない。美しさの中に、人々の心を捉えるエスプリが重要です。カトリーヌのエスプリは、その歩き方です。
どこか微妙にバランスの悪いアンバランスなバランスを誇る人。美しいという領域を超えてしまった人。バーバリーのトレンチコートでさえも、実に自然に着こなす人。ファッション・モデルを越えたファッション・アイコン。オードリー・ヘプバーンと唯一並びうるファッション・デザイナーに愛されたミューズ。オードリーが、ユベール・ド・ジバンシィならば、カトリーヌは、イヴ・サンローラン。
カトリーヌは、21世紀に至っても進化形であり、女性とは?という「語り」を最も聞かせて欲しいトップランカーに位置する人。60年代のこの作品が、なぜ現在の10代~30代の女子の心をときめかせるのだろうか?それは年月が、この作品を映画から芸術(ファッションなどの色使いの匠を含め)へと昇華させたからでしょう。もはや、この作品を見ずしてトレンチコートを着るなかれと言い切れるほどの、トレンチコートのエスプリが全て詰まった作品。バーバリーが愛したカトリーヌ・ドヌーヴがここにいます。