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作品データ
作品名:素直な悪女 Et Dieu… créa la femme(1956)
監督:ロジェ・ヴァディム
衣装:ピエール・バルマン
出演者:ブリジット・バルドー/クルト・ユルゲンス/ジャン=ルイ・トランティニャン/イザベル・コーレイ
ピエール・バルマンによるウエディング・ドレス
ジュリエット・ルック4 ウエディング・ドレス
- デザイン:ピエール・バルマン
- 白の総レースのウエディング・ドレス
- 白の総レースのコーンブラ・ビスチェ
- 白のフラットサンダル
ブリジットが自分のスタイルを見つけ出したのはこの頃(1954年夏)のことだ。ブロンドにして前髪を切り、後ろはポニー・テールにするかそのまま肩に垂らす。ブラウスは胸のふくらみや肩がみえるぐらい大きく前を開ける。盛り上がった胸に締めたウエスト。膝の下までくるスカートから見え隠れするふわふわしたペチコート。靴下をはかない足にパンプス。このとおりの格好をした何十万人もの娘たちが、フランスに、イタリアに、英国に、社会主義国ではないヨーロッパのあらゆる国に、町にも田舎にも、氾濫した。
ロジェ・ヴァディム
ピエール・バルマンの手によるウエディング・ドレスは、一見すると、裕福ではない、ジュリエットとミシェルに相応しい地味なワンピースに、ベールを纏うような通常のウエディング・ドレスのイメージからはかけ離れたものでした。しかし、よくよく見てみると、贅沢な総レースにハイウエストの太ベルトのホワイト・ワンピースは、バルマンの大親友であるクリスチャン・ディオールのニュー・ルックのムードを反映したロマンチックなシルエットを生み出しています。
大都会のラグジュアリー・ホテルやリゾート地でのウエディング・プランナーによるウエディングが興覚めするのは、すべてそのプランナーという存在により作り出されたベルトコンベアーの上を流されていくような感覚に包まれているからです(何よりも一昔前の演歌歌手が着るような光沢のあるシルバーのタキシードを着る新郎の姿が寒気を誘います)。しかし、まだリゾート化する前の閑散としたサントロペの漁村の教会での二人のウエディングは、質素で、寂しげなものですが、21世紀の今見てみると、逆にすごく新鮮で眩しいです。
イザベル・コーレイ・スタイルその3
リュシエンヌ・ルック3
- 赤のヘンリーネックの半そでカットソー
- 白地に赤のポルカドットのフレアスカート
- 赤のバレエシューズ
王道のフィフティーズ・シルエットがここにあります。スカートは落下傘のようにふくらみ、膝丈でキープしつつ、ウエストをきゅっと絞り、トップスは胸の谷間を強調するというバランス感覚が、エロスとキュートさの間を行き来する砂時計のようであり、絶妙です。
一部の衣装はバルドー自身で選んだもの
ジュリエット・ルック5 バスローブ
- レインボー・バスローブ
保守的な精神を怒らせたのは裸で日光浴するブリジットではなくて、教会での結婚式のあと親類や客たちが食堂で待っているのにブリジットが夫と愛し合うシーンだった。・・・そして、夫婦になっても、夫を主人としてではなく、恋人として扱っているのだ・・・そして、まだ真昼間だというのに客たちに言う。「お休みなさい」と・・・
ロジェ・ヴァディム
映画史上最も美しいバスローブのひとつが登場します。七色に輝くその絶妙なカラーバランスは、バルドー自身が衣装係と服を選び購入したものであり、バルドーのセンスの良さを伺わせます。ちなみに本作の中のシャツドレスやサブリナ・パンツも彼女自身が選んだものでした。
イイ女は赤を使い、イイ男はその赤の意味を知る
ジュリエット・ルック6 赤色のカーディガン
- 赤色のVネック・ロングスリーブ・カーディガン
- 黒の太ベルト
- ペールグレーのペンシルスカート、膝下丈
フレンチ・カジュアルの本流にあるのは、〝赤を攻略する〟ということです。クリスチャン・ルブタンの一大旋風もこの概念から始まっています。トリコロールカラーの中のひとつであるこの色は、その組み合わせによって全く違った解釈を生むカラーです。
フランス女性が、男性の前で赤を身につけるときは、その男性に対して何らかのメッセージを発しているということです。トップスが赤の時は、情熱的な気分であり、ボトムスが赤の時は、相手に対する赤信号です。ネイルとリップが赤の時は、その女性はどちらかの戦闘モードに突入しています。そして、靴が赤の時は、その男性を蹴飛ばしてやりたいときなのです。
〝赤い衝撃〟とでも言いましょうか?男性にとって、赤信号であれ、闘牛士としての赤ケープの意味であれ、女性があなたに会うときに、赤を着用させたということはもうそれだけで一つの勝利なのです。