ベラミ
原名:Bel Ami
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン・ルイ・シュザック
発表年:1986年
対象性別:男性
価格:100ml/18,260円
公式ホームページ:エルメス
絶対に、たくさん売れてはいけない香り
1885年に発表されたモーパッサンの小説『ベラミ(美しい男友達)』。それはジョルジュ・デュロアという何も持たない青年が、その美貌だけを武器に、女性たちを利用し、裏切りを繰り返しながらのし上がっていくフレンチドリームを描いた作品でした。
ルックスだけで伸し上がっていく軽薄な男を描いたこの作品からエルメスは、最低な男だからこそ愛さずにはいられないという、女性の不思議な心理をくすぐる禁断の香りを生み出そうと考えました。
そんな究極の欲望マシーンの名を冠し、その世界観を基に、1986年に生を受けた「ベラミ」は、ジャン・ルイ・シュザックにより調香されました。
悪魔を自宅に誘い込んでしまうような、もしくは、純粋無垢な魂を悪魔の手に委ねてしまうこの香りは、とても魅力的な香りであるにも関わらず、エルメスの中でも売れ行きの悪い香りです。でも、エルメスは頑なにこの香りを廃盤にしようとはしない、謎の香りです。
いま、あなたの手によって新しい悪魔が解き放たれる。
男性にとって〝愛すべき友〟と言えるこの香りは、マンダリンオレンジ、ベルガモット、レモンのシトラスシャワーが全身に降り注ぐ中、カルダモンとセージ、シダーも加わり、渾然一体となり溶け合うようにしてはじまります。
スパイシーでハーバルなシトラスのきらめきを全身で受け止める〝輝くような男性の笑顔〟がそこにはあります。
すぐにスモーキーなレザーと、円やかなムスクとオークモス、パチョリが、シトラスとひとつになり、これ以上ないほどに、苦くて渋いシプレレザーで包み込まれていきます。そこにバジルとカーネーション、そしてクミンが加わり、女性にとってエレガントで洗練された〝美しき悪魔〟がここに現れるのです。
やがて、オリスルートの甘やかなパウダリーの風に乗り、ジャスミン、ココナッツ、アンバー、バニラといった〝甘い罠〟が張り巡らせていくのです。エルメスというブランドは本当に大したブランドです。ケリーやバーキンで女性の理性を失わせるだけでなく、香りにおいても、女性の理性を失わせようと画策するのですから。
〝美しき男〟の香りは、21世紀に入り、まるで、エルメスがその香りの効力を自主規制するかのように、少し控え目に、ジャン=クロード・エレナに再調香させました。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ベラミ」を「レザーシトラス」と呼び、「オリジナルのベラミ(1986)は大胆で風変わりで美しく、しかしながら商業的には失敗だった。」
「新しいバージョンはトップノートでウッディな感じを強め、コリアンダーはジャン=クロード・エレナのタッチだ。なくなってしまったのは、妙な不協和音を奏でるシトラスとレザーのアコードで、それはオリジナルにきわめて魅力的な柔弱さを醸しだしていた今度のドライダウンは「キャロン No.3」のようなムスクっぽい甘さに転じている。全体の効果は上々で、オリジナルを知らない人たちにとっては納得できる。しかし、残念。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:ベラミ
原名:Bel Ami
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン・ルイ・シュザック
発表年:1986年
対象性別:男性
価格:100ml/18,260円
公式ホームページ:エルメス
トップノート:マンダリン・オレンジ、セージ、ベルガモット、レモン、カルダモン
ミドルノート:カーネーション、パチョリ、オリスルート、バジル、ジャスミン、シダー
ラストノート:レザー、ココナッツ、バニラ、オークモス、ベチバー、スティラックス、アンバー