アガール エベンヌ
原名:Agar Ebene
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:クリスティーヌ・ナジェル
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/41,360円
公式ホームページ:エルメス
エルメス史上初のウード・フレグランス
私は、香水の原点に立ち返り、最初のエルメッセンスのためにその歴史に浸りたいと思いました。この5つの作品は、それぞれがオリエンタルの夢を表現したものです。
クリスティーヌ・ナジェル
「地中海の庭」の成功により、2004年にジャン=クロード・エレナはエルメスの初代専属調香師に就任することになりました。そして、≪嗅覚の詩≫とも言える究極のフレグランス・コレクション『エルメッセンス』が誕生しました。
2016年にエルメスの専属調香師の地位を引き継いだクリスティーヌ・ナジェルは、2018年6月に一挙に4つの素材(ミルラ、ムスク、アガーウッド、シダー)による5作品の〝クリスティーヌのエルメッセンス〟を発表したのでした。そのうちのひとつがオリエンタル・ウッディの香り「アガール エベンヌ」です。
2017年12月に、モロッコ、マラケシュ近くのアガフェ砂漠で大々的な発表会が開催されました。ナジェルはこのエルメッセンスを生み出すためにエジプト、オマーン、ドバイ、バーレーンといった国々にインスピレーションを得る旅に出かけていたのでした。
ウードを香水の中に入れるのは、エルメス的ではありません。それはお金を追う人たちがするマーケティング戦略なのです。
ジャン=クロード・エレナ、2015年(British GQにて)
ジャン=クロード・エレナは在任中「私はエルメスでは絶対にウード・フレグランスを作らないだろう」と言っていました。そんな彼の言葉から3年も経たないうちに、二代目専属調香師となったクリスティーヌ・ナジェルはその禁断の扉を開けたのでした。
ウード・フレグランスの歴史
ラグジュアリー・フレグランスの多くは、ラベルにウードの名前が刻まれてるのですが、ウードは含まれていないか、かなり少量、もしくは低品質なものしか使われていません。
加えて、ウードはアガーの木を侵食するバクテリアによってできるのですが、自然界でほとんど見つからないため、生産者たちはアガーの木に菌を植え付けて人工栽培しています。そういった理由から、私はこの流行にのりたくないと思いました。
クリスティーヌ・ナジェル
Ebeneとは、英語でEbony、日本語で「漆黒の」
アガーとは、アガーウッドのことであり、
この元になる木(
そのためウードは、
さて、香水の世界におけるウードの歴史は、2002年にトム・フォードの指揮の下、イヴ・サンローランから発売されたM7(アルベルト・モリヤス、ジャック・
しかし、同時に、
ウードではなくアガーを使用した香り
浸食されていないアガーの木は、暖かさを保つ軽やかなカシミアのように、バルサミックで包み込むような香りを感じさせます。
クリスティーヌ・ナジェル
一般的な流行にのることを拒む反骨精神を持つ調香師クリスティーヌ・
そして、これをファーバルサム(マツ科の針葉樹から採れる樹脂)
かくして、出来上がったエルメス初のウード・フレグランスは、
やがて黄金色のスエードと新緑色の樹脂が混じり合い、温かい粉雪のように肌の上に舞い降り、カシュメラン(カシミアムスク)により、渦巻く星雲のようにクリーミーに引き伸ばされてゆきます。それはまるで悠久の時を刻む大木に抱かれているかのような温かみを全身にもたらしてくれるのです。
この香りは、昨今流行しているウード・フレグランスとは一線を画したウード・フレグランスです。2つしか明かされていない原料は、まさに嗅覚の詩であり、
一日、ケリーバッグやバーキンが作られているエルメスの工房の中で、レザーを裁断、縫製している職人と一緒にその豊かな香りを胸いっぱい吸い込んでいるような贅沢な気分を運んでくれます。
〝奇跡のウード〟それは、とても静かに、本物を生み出す職人の、真摯な眼差しのように〝丁寧に作りこまれた控えめなウード〟の香りなのです。このような香りを淑女が身に纏うと、木ではなく、全裸に毛皮を羽織るような、〝沈黙のエロティシズム〟を漂わせることになるでしょう。
クリスティーヌ・ナジェルは「ムスク パリダ」との重ね付けを推奨しておられます。よりクリーミーにパウダリーな柔らかなフローラルがスエードレザー広がる肌の上に咲き誇るような香りとなります。
作品データ
香水名:アガール エベンヌ
原名:Agar Ebene
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:クリスティーヌ・ナジェル
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/41,360円
公式ホームページ:エルメス
シングルノート:アガーウッド(沈香)、バルサムモミ