作品データ
作品名:ショウほど素敵な商売はない There’s No Business Like Show Business (1954)
監督:ウォルター・ラング
衣装:ウィリアム・トラヴィーラ/チャールズ・ルメイアー
出演者:エセル・マーマン/マリリン・モンロー/ミッツィ・ゲイナー/ドナルド・オコーナー/ダン・デイリー
マリリン・モンローのシークレット・ドレス
マリリン・モンロー・ルック5 フローラルドレス
- 白地にショッキング・ピンクのフェザーがついたフローラルドレス
- 白のケープ
- ハイヒールサンダル
- ピンクのサンゴのイヤリング
1950年にマリリン・モンローは、20世紀フォックスでコスチュームを試着するために、フィッティング・ルームを借りることが出来るかトラヴィーラを訪ねました。黒の水着姿のマリリンが、フィッティング・ルームのドアを開けた途端に、トラヴィーラの目の前で、水着のストラップが落ち胸が剥き出しになりました。その時のことを回想してトラヴィーラは言います。「もちろん、マリリンはわざとそうしたのさ」と。これが彼女の処世術でした。丁度この前年にトラヴィーラは、アカデミー衣装デザイン賞(カラー部門)を『ドン・ファンの冒険』で受賞していたのでした。
豪華な3人が共演する『レイジー』と〝スローの美学〟
マリリン・モンロー・ルック6 稽古着
- ブラックダンスウェア、7分丈のパンツ
- グリーンのサッシュベルト
- 黒のミュール
- バングル
- ゴールド・フープイヤリング
あの目で見つめられると、男は自分が魅力的なのだと思えてくる。マリリンは男に、俺こそ彼女にとってすべてなんだ!と思わせる才能をもっていました。
ウィリアム・トラヴィーラ
マリリンが衣装に何かを与えるとき、男の心にも何かを与ることになる。
ウィリアム・トラヴィーラ
この『レイジー』シーンにこそ、シンプルな衣装だからこそ、ストレートに伝わるマリリンの魅力があります。そこには、まるで対比するかのようにメリハリ良く踊るミッツィ・ゲイナーとドナルド・オコナーが奇跡的なまでに素晴らしい存在感を示しており、並みの女優ならば、絶対的に喰われてしまうほどの爆発力を持っています。
しかし、マリリンは、静を以って動を制するが如く、ゆっくりとした動作で魅せてくれるのです。この一連の振り付けの中にこそ、マリリンの魅力の真髄があるのです。その姿勢の優雅さと、どこかほんわかとした抜けたムードで、世界を包み込んでしまうスロームード。マリリン・モンローという女優には、スピード感とは対極に位置するスローリズムを支配した独特なリズム感があることを示してくれます。それこそが、彼女が、ただのセックス・シンボルとは、全くレベルの違う〝永遠のスタイル・アイコン〟になり得た秘密が隠されているのです。
スピード感たっぷりにセクシーさを誇示するのではなく、スローなリズムで、男性も女性も包み込んでしまうこと、つまりは、マリリン・モンローの魅力とは、実に綿密に計算された〝スローの美学〟なのです。