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その他の男優たちフェイ・ダナウェイ

【俺たちに明日はない】ふたりのラストダンスは87発の弾丸と共に

その他の男優たち
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【俺たちに明日はない】

Bonnie and Clyde 1967年8月13日、二人のカップルが行き当たりばったりで、人を殺したり、物を盗んだりするB級映画として公開された作品が、それまでの映画の常識を変えてしまいました。スローモーションの中、永遠に終わらないダンスを踊るように死んでいった、みじかくも激しく燃えた二人に撃ち込まれた87発の銃弾は、沈滞していたアメリカ映画界の心臓部も撃ち抜いたのでした。

大恐慌時代に実在したボニー・パーカー(1910-1934)とクライド・バロウ(1909-1934)というアメリカ中西部で殺人と強盗を繰り返した犯罪者カップルの出会いと逃走を描いた犯罪映画により、主人公が救いようのない最期を迎えるという作品群が大量に生み出されるアメリカン・ニューシネマ旋風を巻き起こすことになりました。

当初、フランソワ・トリュフォージャン=リュック・ゴダールに監督を依頼したが果たせず、『奇跡の人』(1962)のアーサー・ペンが監督することになりました。この作品により、フェイ・ダナウェイ(1941-)は一躍ハリウッド・スターの仲間入りを果たすことになりました。

一方、クライド役をプロデューサーのウォーレン・ベイティ(1937-)は、当初ボブ・ディランで考えていましたが、実現せず、彼自身が演じることになりました。

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あらすじ

1930年代はじめの大恐慌時代のアメリカ中西部の田舎町で、刑務所から出所したばかりのクライド・バロウ(ウォーレン・ビーティ)が道端の車を盗もうと考えていたとき、近くの家の二階の窓からそんなクライドを見つめている娘と目が合い微笑みを交わす。

その娘の名はボニー・パーカー(フェイ・ダナウェイ)。彼女はウエイトレスをしているが、刺激のない生活に退屈していました。お互いに一目惚れした二人は一緒に町の中心部に向かって歩いていきます。そしてクライドは勇気のほどを見せるため、彼女の前で食料品店へ押し入り手際よく強盗を働いた。そんなクライドを見て刺激されたボニー。

二人は勢いに任せ車を盗み、町を出る。のちにFBIよりパブリック・エネミーに認定される稀代のギャング・カップル「ボニーとクライド」が誕生した瞬間です。

町から町へ気の向くまま銀行強盗を繰り返しているうちに、車に詳しい小悪党C・W・モス(マイケル・J・ポラード)とクライドの兄バック(ジーン・ハックマン)、その妻ブランチ(エステル・パーソンズ)も仲間に加わり、ボニーとクライドの強盗団はバロウズ・ギャングとして新聞で大々的に報道されるようになります。貧しい人々からはお金を奪わないスタイルにより、アメリカのロビン・フッドとして持て囃されるようになります。

テキサス、ミズリー、カンザス、アイオワと捜査の網を掻い潜り強盗を続けていたバロウズ・ギャングは、アイオワの空き家に潜伏していたところをテキサス・レンジャーたちに襲撃されバックは重症を負い、ブランチと共に逮捕されます。

ボニーとクライドも銃弾を受けるが、命からがらC・Wと共に逃走する。やがてC・Wの父親アイヴァン・モスの人里離れた農場に身を潜めることになります。

1934年5月23日がやって来た。ルイジアナ州アーカディアのさびしい田舎道で、買い物から帰る途中のボニーとクライドは、待ち伏せしていたレンジャーたちの一斉射撃を浴び、87発の銃弾を受け、ラスト・ダンスを踊るように、死に絶えるのでした。

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ファッション・シーンに与えた影響


1967年に全米公開された瞬間、衰退していたアメリカ映画界を蘇らせるアメリカン・ニューシネマ旋風をもたらしたこの作品が、ファッション業界に与えた影響も爆発的でした。

当時、アメリカは、1964年から本格的に介入していたベトナム戦争に対する反戦運動が盛り上がりを見せていました(1967年10月21日には、10万人以上が参加するペンタゴン大行進が行われた)。一方、チェ・ゲバラ(1928-1967)やブラック・パンサー党の影響もあり、ベレー帽というものに対する人々の憧れが、深層心理に刷り込まれていました。

そんな中、1930年代の「明日なき若者」を描いたこの作品の中で、ベレー帽をかぶる女性が現れ、世界中の女性が、ベレー帽を手に取ることになったのでした。

この作品がファッション・シーンに与えた影響は以下の4点です。

  1. ボニー・ルック(ベレー帽がモード界に進出した瞬間)
  2. スタイリッシュなボニー・ボブ
  3. ミニスカート時代に終焉をもたらした、ミディアム丈のスカートを履くクールビューティの登場
  4. 1930年代のギャングスター・ダブルスーツの復権

ボニー・ルックという言葉は今では、世界中のファッション誌上において、ココ・シャネルのリトル・ブラック・ドレスやクリスチャン・ディオールのニュールックと同じくらい頻繁に使用されるファッション用語として定着しています。

作品データ

作品名:俺たちに明日はない Bonnie and Clyde(1967)
監督:アーサー・ペン
衣装:セオドア・ヴァン・ランクル
出演者:フェイ・ダナウェイ/ウォーレン・ベイティ/マイケル・J・ポラード/ジーン・ハックマン