究極のフレグランスガイド!各ブランドの聖典ページ一覧にすすむ
ルラボ

【ル ラボ】マッチャ26(フランク・フォルクル)

ルラボ
この記事は約5分で読めます。

マッチャ26

原名:Thé Matcha 26
種類:オード・パルファム
ブランド:ル ラボ
調香師:フランク・フォルクル
発表年:2021年
対象性別:ユニセックス
価格:1.5ml/990円、15ml/13,200円、50ml/29,700円、100ml/42,900円
公式ホームページ:ル ラボ

スポンサーリンク

ルラボ史上はじめて〝名前のとおりの香り〟

© 茶匠六兵衛

©LE LABO

2006年3月に発表された10の香水と共に、ル ラボの歴史は始まりました。そして2010年に「ウード27」が誕生し、2011年に「サンタル33」が誕生しました。この香りの登場により、ル ラボは、ニューヨークを中心に世界中のファッショニスタの心を掴むきっかけになりました。

ル ラボ旋風の中、2013年に「イラン49」が「リス41」と共に発売されました。そして2014年にエスティローダーに買収され、新体制の中、2018年に「トンカ25」、2019年に「ベ19」が誕生しました。その後、2021年に、2年ぶりに発売された新作が「マッチャ26」でした。フランク・フォルクルにより調香されました。

「マッチャ26」の「26」とは、26種の香料により生み出されたという意味を持ちます。〝Thé Matcha〟とは、フランス語で〝マッチャ・ティー〟の意味です。

まず最初に何よりも重要なことは、〝侘び寂び〟をはじめとする日本の精神文化を愛している二人の創業者(エディ・ロスキーとファブリース・ペノー)により生み出された〝抹茶〟の香りを、外国人から見た日本文化の新たなる魅力と捉えるのは、あまりに浅はかであることは言うまでもありません。

この〝抹茶〟という香りは、日本人以上に日本の精神に精通したフランス人による、〝抹茶=茶道〟の精神を掘り起こし、世界に向けて、翻訳した香りです。

つまり、抹茶という素材を生かして抹茶ガトーショコラや抹茶ラテを作るような、和の文化を表面的に掬い取り、異文化とミックスした類のものではなく、もっと真摯な気持ちで、抹茶と向き合った香りだと言えます。だからこそ一切の媚びのない、風格がこの香りにはあるのです。

創業者の二人と、調香師が、心から日本に敬意を払い、その精神性を香水と結びつけようとしたからこそ、この香りは、どんな人の肌にも、すっと溶け込んでいく〝和を以て貴しとなす〟香りになったのです。

ちなみに英語版の公式サイトのこの香りの紹介の一文がとても興味深いです。

日本文化において抹茶が単なる飲み物以上のものであるのと同じように、「マッチャ26」は私たちにとって香り以上のものです。自己省察のひとときであり、優雅さと魂の美しさを静かに内面から賛美する自己のひとときである。香りを嗅ぐだけで、私たちは外の喧騒から離れ、「内」に戻ってくる。
スポンサーリンク

魂にまで、流れ込んでいく、泡立つイチジクの香り

©LE LABO

©LE LABO

早くも七二九年聖武天皇奈良の御殿において百僧に茶を賜うと書物に見えている。茶の葉はたぶん遣唐使によって輸入せられ、当時流行のたて方でたてられたものであろう。八〇一年には僧最澄茶の種を携え帰って叡山にこれを植えた。その後年を経るにしたがって貴族僧侶の愛好飲料となったのはいうまでもなく、茶園もたくさんできたということである。

宋の茶は一一九一年、南方の禅を研究するために渡っていた栄西禅師の帰国とともにわが国に伝わって来た。彼の持ち帰った新種は首尾よく三か所に植え付けられ、その一か所京都に近い宇治は、今なお世にもまれなる名茶産地の名をとどめている。

南宋の禅は驚くべき迅速をもって伝播し、これとともに宋の茶の儀式および茶の理想も広まって行った。十五世紀のころには将軍足利義政の奨励するところとなり、茶の湯は全く確立して、独立した世俗のことになった。爾来茶道はわが国に全く動かすべからざるものとなっている。

『茶の本』岡倉天心

その濃淡の配合は、喜びの光であり悲しみの影である〟という茶の精神を香りに投影したこの香りは、心に茶道の精神を注ぎ込んでゆく香りです。

素肌に舞い落ちる抹茶パウダーが、温かくミルキーなイチジクの果汁と冷たくスパークリングするビターオレンジにより引き延ばされてゆきながら、この香りははじまります。

ティーではなくマッチャティーと名付けられたこの香りは、透き通るように苦い緑茶の香りが広がっていくのではなく、山沿いにある禅寺に向かうような、しづやかに泡立つ酸味を伴うミルキーな森の空気の広がりを感じさせます。

澄み渡る清らかな空気を全身で受け止め、深呼吸して、瞳を閉じたくなる、ゆらゆらと幽玄に煙るベチバーと、心を洗い清めてくれるビターオレンジで磨き上げられたシダーウッドの香りが、素肌に浸透したクリーミーなイチジクとひとまとめになり、厳かにお香のような〝香りの余韻〟を素肌から立ち上らせるように香り立つのです。

近くにいる人の心にも〝茶の精神〟をしずかに注ぎ込むこの香りは、相手が気づかないうちに、相手のテリトリーに入り込んでゆく、禁じ手のような香りとも言えます。

スポンサーリンク

香水データ

香水名:マッチャ26
原名:Thé Matcha 26
種類:オード・パルファム
ブランド:ル ラボ
調香師:フランク・フォルクル
発表年:2021年
対象性別:ユニセックス
価格:1.5ml/990円、15ml/13,200円、50ml/29,700円、100ml/42,900円
公式ホームページ:ル ラボ


シングルノート:フィグ、シダー、抹茶、ビター・オレンジ、ベチバー