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アニック・グタール

【グタール】ソンジュ(カミーユ・グタール/イザベル・ドワイヤン)

アニック・グタール
©Goutal Paris
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ソンジュ

原名:Songes
種類:オード・パルファム
ブランド:グタール
調香師:カミーユ・グタール、イザベル・ドワイヤン
発表年:2006年
対象性別:女性
価格:100ml/33,330
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

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「ソンジュ」=トロピカル・ドリーミング

©Goutal Paris

©Goutal Paris

ハネムーンで訪れたモーリシャスのビーチで毎晩嗅いでいた香りに私はうっとりしていました。真っ暗で、木も見えないので、どこから何が香ってきているのかわかりませんでした。

そして、チェックアウトの時にレセプションの男性に、毎晩ビーチで嗅いでいたあの素晴らしい香りは何ですか?と尋ねたら、「ああ、あれはホテルの裏にあるフランジパニだ!」と言われたのです。

カミーユ・グタール

2006年にグタールより発売された「ソンジュ」は、フランス語で〝白昼夢/夢〟の意味を持つ香りです。カミーユ・グタールイザベル・ドワイヤンにより調香されました。

それはカミーユがハネムーンでモーリシャスを訪れたときに、夜のベル・オンブルビーチを散歩していた時に嗅いだフランジパニ(プルメリア)をイメージして生み出した香りです。なんと構想から完成まで5年の歳月をかけて生み出されたトロピカル・フラワーの香りです。

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フランジパニとバニラが織り成す〝夢の楽園〟の香り

ベル・オンブルビーチ

私が最も誇りに思っている作品は「ソンジュ」です。ひとつの香りの中で昼と夜を感じさせるために、ソーラーアコードとフローラル、スパイシーの絶妙なバランスを見つけ出すために5年近くの歳月をかけました。そして、並々ならぬ苦心の末、私にとって〝完璧な夕暮れ=光り輝くような暗さを持つ香り〟が誕生したのでした。

カミーユ・グタール(2021年のインタビュー記事より)

夜の帳が降りたころ、モーリシャスのビーチを散歩していると、日中はなりを潜めていたフランジパニが目覚めはじめます。ピーチのニュアンスも持つ甘さを解き放つ中、インドールの効いた(グリーン/バナナのような)ジャスミンサンバックとガーデニアも加わってゆきます。

さあ、南国の夜の白い花々の饗宴のはじまりです。それはクリーミーでありながら、ココナッツのような甘さではない、実に爽やかでエアリーな甘さです。

すぐにティアレ・フラワーとイランイランが加わり、白い花びらの上に白い花びらを重ね、自然なエモーションを大いに刺激してゆきます。ここから〝ソンジュ=夢〟という言葉が生み出す、さまざまな感情を、南国の花々を通じて、万華鏡のように見せてくれるのです。

ときに華やかに、ときに幻想的に、ときにミステリアスに、ときにしとやかに、しかし、決して濃厚にならず香りを放つフランジパニに誘われ、クリーミーなバニラ(サリチル酸メチル)とサンダルウッドが、光りつつとろけつつ、奥深くに苦みを秘めつつ、白昼夢のようなうっとりするようなパウダリックな余韻で包み込んでくれるのです。

はじまりの予定調和なトロピカルの香りが、まるで良く出来たメロドラマを見ているように、そのドロドロの人間模様に、知らぬ間に引き込まれ、ロマンティックな展開に涙すら流してしまう、そんな中毒性のある香りです。

グタールの香りの素晴らしさは、感情まで揺さぶる所にあることを、肌と心に教えてくれます。ムエットだけや、最初の五分で判断してしまうと本当に勿体無い、とんでもなく洗練された〝愛と涙と憎悪〟まで含んだ、人生そのものを香りに投影した〝トロピカル=南国の香りの金字塔〟です。

特に、クミン。このクミンが、あらゆる南国の花々(特にジャスミン)の香りと結びつき閃光を放つ瞬間。あなたの心の中に生息する一羽の鳥が飛び立つことを知るでしょう。香りの素晴らしさと恐ろしさを同時に感じさせてくれる〝生命を生み出す魔法のクミン〟がそこにはあります。

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そして、最愛の母を失った娘の〝癒し〟の香り

30歳のときのアニック・グタールと娘のカミーユ。

実はこの香りのインスピレーションの源となったカミーユのハネムーンには、1999年に最愛の母を失った強い喪失感から、フォトグラファーの仕事を続けるべきか、母の遺志を継ぐべきかの答えを出す旅というテーマも秘められていました。

母が亡くなって半年経ったある日、彼女のスカーフを手に取ると、母が生きていた頃の匂いがまだ残っていたのでした。でも私にはこの香りが何の香りなのかはっきりわかりませんでした。しかし、これは私にとって、香りを仕事にすることを前向きに考えさせる第一歩の出来事でした。

そして、自分の心を癒すことも兼ねてハネムーンでモーリシャスを訪れたのですが、この時感じた不思議な香りにとても癒されたのでした。この香りこそがフランジパニの花の香りでした。

カミーユ・グタール

このフランジパニの香りが、カミーユの調香師兼香りのクリエイティブ・ディレクターとして全身全霊を捧げる決意を導き出したと言えます。カミーユは、母親のスカーフに残っていた香りに、ハネムーンで訪れた地で思いがけなく再会したのでした。

そして、イザベルにその花を見せるためにひとつ持ち帰るも、途中で枯れてしまいました。しかし、イザベルはタヒチに住んでいたことがあったので、その花=フランジパニの香りをよく知っていたのでした。

香りが生み出す奇跡。それは奇跡ではなく、運命だったのでしょう。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ソンジュ」を「ウッディ・ジャスミン」と評し、「時間の経過を完全に掌握しているネオクラシックなフレグランス。ソンジュは輝かしい天然のジャスミンのアコードで始まり、場面の変化とともに香りが変化する。」

「かすかに「アビルージュ」に似たウッディ・パウダリー調の核となる香りに近づき、そして徐々に、とても洗練された、濃厚で長時間持続するウッディバニラ調のホワイトフローラルのドライダウンへと落ち着いていく。これもまら、アニック・グタールの傑作だ。」と4つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:ソンジュ
原名:Songes
種類:オード・パルファム
ブランド:グタール
調香師:カミーユ・グタール、イザベル・ドワイヤン
発表年:2006年
対象性別:女性
価格:100ml/33,330
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム


シングルノート:プルメリア、タヒチ産ガーデニア、ジャスミンサンバック、マダガスカル産イランイラン、ブルボンバニラ、ベチバー、サンダルウッド、アンバー、パチョリ、シナモン、クミン、ブラックペッパー