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ミラー・ハリス

【ミラー ハリス】スケルツォ(マチュー・ナルダン)

ミラー・ハリス
©Miller Harris
この記事は約6分で読めます。

スケルツォ

原名:Scherzo
種類:オード・パルファム
ブランド:ミラー・ハリス
調香師:マチュー・ナルダン
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/23,650円、100ml/33,990円
公式サイト:ミラー・ハリス

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女傑サラ・ロザラムの〝新しい試み〟

©Miller Harris

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2000年に創業された高級フレグランスブランド、ミラー・ハリスから、2014年に創業者のリン・ハリスが離れた後、新生ミラー・ハリスから2018年に発売された「スケルツォ」は、ロベルテのマチュー・ナルダンにより調香されました。

この香りは、2017年にミラー・ハリスのCEOに就任したサラ・ロザラムがプロデュースしました。彼女はモルトン・ブラウンの世界進出を手がけ、2007年よりペンハリガンのジェネラル・マネージャーに就任し、さらにはラルチザンの最高責任者として、両ブランドの世界的な飛躍の立役者だった人です。

2016年夏の休暇中に『グレート・ギャツビー』(1925年)で知られるF・スコット・フィッツジェラルドの最後の小説『Tender is the Night(夜はやさし)』(1934)を読んでいてその一節に衝撃を受けたことからこの香りのものがたりははじまります。

小説の中の同じ一節を、二人の調香師に与え、二種類の全く違うフレグランスを生み出すという珍しい試みにより誕生した二つの香りのうちのひとつです(もうひとつの香りはベルトラン・ドゥシュフールによる「テンダー」)。

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同じ小説の一節から、全く違う香りを生み出した二人の調香師

彼女はまた歩き始め、ピンク色の雲に覆われた万華鏡のようにのように色鮮やかに咲き誇るピオニーや、黒と茶色のチューリップ、菓子屋のショーウィンドウに飾られた砂糖菓子で作られた花々のように、透明でもろそうな藤色の茎をもつバラの花などを両側に見ながら歩み続け…やがて色彩の交響楽―スケルツォも最高潮に達したが、急にそれが空中にとだえてしまった。

『Tender is the Night(夜はやさし)』の一節

『Tender is the Night(夜はやさし)』は、フィッツジェラルドを愛する村上春樹が、若き日に最初に読んだフィッツジェラルドの作品としても有名です。

ちなみにこの小説には、有名な「シャネルNo.16」が登場します。〝恋人が迎えに来る瞬間にこの香りを身にまとうと、自分自身を咲き誇る手入れの行き届いた麗しの庭園に変えてくれる〟という幻のエリクサー「シャネル・シックスティーン」。当時、人々はこの香りを手に入れようと躍起になったのですが、実はNo.16はフィッツジェラルドの架空の創作でした。

サラ・ロザラムは、『Tender is the Night(夜はやさし)』の一節にインスパイアされたフレグランスを欲しがっていました。そして、そのテキストをベルトラン・ドゥシュフールと私に託すというアイデアを思いつきました。

香りの方向性もコンセプトもなく、ただただ文学的なインスピレーションで全てを自由に創造してくださいとのこと。幸いなことに、私は読書が大好きなので、そのコンセプトは私の心に響きました。最も素晴らしいのは、私たちは2つの全く異なるコンポジションを作ったということです。

マチュー・ナルダン

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フレンチリビエラの甘いバラ色の恋の香り

©Miller Harris

私は昔から『夜はやさし』に親しんできたので、香りに小説全体のムードを刷り込むことにしました。ものがたりの舞台は南フランスのフレンチリビエラで、海、太陽、暑さについての素晴らしい描写があります。「スケルツォ」の背景を満たすため、私は頭の中でこの本と登場人物のための独自の色彩とパレットを組み立てました。

マチュー・ナルダン

18歳の映画女優ローズマリー・ホイトが、輝く日差しの中、フレンチリビエラの庭園を歩いている情景のように、色鮮やかに甘やかなタンジェリンの香りに遭遇するところからこの香りははじまります。

すぐに、ハーバルに酔わせるようなダバナとウードが注ぎ込まれてゆきます。それはまるでとてもハンサムな洗練された34歳の医師ディックと遭遇し、恋に落ちる瞬間のようです。

ディックには、ニコルという絶世の美女でありながら統合失調症の妻がいます。その事実を知らせる警笛のように…甘さと苦みの濃厚なコントラストの中から、活気に満ちたリキュールのような軽やかさの中に、不穏なるインセンスの風が交錯してゆきます。

そして、可憐なるローズ(パウダリーでもジャミーでもない自然なみずみずしさ)とピンクのふわふわした雲のようなピオニー、太陽のように黄色い水仙が、甘くも官能的なトベラによって、カラフルな色彩に包まれたロマンスを奏でるように香り立ちます。

トベラ

トベラとは、南フランスでは生垣によく使われるとても強いスパイシーで甘い花です。オレンジフラワーとジャスミンが合わさったような香りが特徴です。

やがて、トベラはクリーミーなバニラとパチョリと結びつき、滑らかなウードローズが、まるで半分は砂糖菓子で作られた花々、残りの半分は生きている花々の花粉、それらが共存しているように、フレッシュなグリーンとフローラルブーケの甘やかさを肌の上に咲き残してくれるのです。

スイートノートとしてマルトール(天然由来)が使用されているので、砂糖の甘さよりも深みのある焼き菓子のような甘い香りで包み込んでくれます。

ローズマリーは、ディックを愛すると同時に、一見とても洗練されているニコルにも強い憧れを抱いています。二人の大人の洗練に包まれながら、彼女も大人になり、やがて、ディックは二人の女性に捨てられることになるのです。

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香水データ

香水名:スケルツォ
原名:Scherzo
種類:オード・パルファム
ブランド:ミラー・ハリス
調香師:マチュー・ナルダン
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/23,650円、100ml/33,990円
公式サイト:ミラー・ハリス


トップノート:タンジェリン、ダバナ
ミドルノート:オリバナム、水仙、ピットスポルム(トベラ)、ダークローズ、ピオニー
ラストノート:パチョリ、バニラ、ウード