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メゾン・マルジェラ

【メゾン マルジェラ】ミューティニー(ドミニク・ロピオン)

メゾン・マルジェラ
©Maison Margiela
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ミューティニー

原名:Mutiny
種類:オード・パルファム
ブランド:メゾン マルジェラ
調香師:ドミニク・ロピオン
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:90ml/19,800円
公式ホームページ:メゾン マルジェラ

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マルジェラ×ガリアーノの精神に忠実な〝幻のチューベローズ〟

マルタン・マルジェラの数少ない写真のうちの一枚。1997年頃。

メゾン マルタン マルジェラ1995年秋冬

マルタン・マルジェラ(1957-)は、ファッション業界においても神話的な存在です。アントワープ王立芸術アカデミーのファッション科で学び、卒業後、ジャン=ポール・ゴルチエのアシスタントとして1984年から87年まで働き、1988年にジェニー・メイレンスと共にフランス・パリでメゾン マルタン マルジェラを創立しました。

4区のカフェ・ド・ラ・ガールで行われた、1989年SSのファーストコレクションで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「Guess I’m Falling In Love」の大音量のイントロに乗って現れた女性モデルは、上半身裸で、未完成の白いズボン、ハンドブラでした。

彼女が履いていたタビシューズは、以後、マルジェラを代表するアイコニック・アイテムとして今に至ります。さらにこのコレクションの中盤で、匿名性を祝福するフルフェイスマスクも登場しました。

1997年から2003年にかけてエルメスのレディースのクリエイティヴ・ディレクターもつとめたマルジェラの私生活については、ほとんど何も知られておらず、彼の「きちんとした」公の写真さえ存在しません。

メゾンは、2002年にディーゼルの創業者兼社長であるレンゾ・ロッソにより買収され、2008年に引退後しました(マルジェラ自身はラフ・シモンズにブランドの後を任せたかった)。しかし彼の「脱構築・脱モード」の遺産は、デザインアプローチ、マーケティング手法、ブランド哲学を通じて生き続けています。

そして2014年にジョン・ガリアーノがクリエイティブ・ディレクターに就任し、2015年より、メゾン マルジェラにブランド名が変更されました。

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「脱構築・再構築」により生み出された、モード・チューベローズ

©Maison Margiela

©Maison Margiela

私は、特にチューベローズやバイオレットなど、古風な香りが好きです。今日、古風な香りを身にまとうことはモダンなことだ。

チューベローズという花は、夕方になると自然の魔法によってその姿を現す。ここでは、フルーティなココナッツ・パイナップルノートなど、あまり知られていない面を見せることで、サフラン、ウード、バニラのトリオによるレザリーなアコードとコントラストをつけ、ファッションと呼応させることを考えました。

ジョン・ガリアーノ

メゾン マルジェラがはじめてフレグランスを発売したのは、ロレアルと提携し2010年にダニエラ・アンドリエの調香により生み出した「(untitled) 」によってでした。2012年からジャック・キャヴァリエマリー・サラマーニュにより生み出された『レプリカ』コレクションが主流となりました。

そんな中、2018年9月26日(日本は27日)に、2019年SSコレクション終了後すぐ、8年ぶりに『レプリカ』コレクションではないマルジェラのフレグランスとして「ミューティニー」が発売されました。ジョン・ガリアーノがクリエイティブ・ディレクターとして指揮し、ドニミク・ロピオンにより調香されました。

〝ミューティニー〟とは、〝反逆、反乱〟を意味する英語です。「アマリージュ」(1991年)からはじまり「カーナル フラワー」(2005年)で、チューベローズの香りの頂点を極めたドミニク・ロピオンが、三種類の抽出方法により生み出したチューベローズの香料と新しい分子を、嗅覚のピラミッドに散りばめ、6年の歳月を費やし、1000回もの試作を重ね、「脱構築・再構築」により生み出した香りです。

2019年SSコレクションと連動して、〝型にはまらない、多様性に富んだ、創造的な世代を表現した〟ワードローブのひとつとして発表されました。

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〝白い炎〟に包まれるクリーミーなチューベローズの香り

©Maison Margiela

©Maison Margiela

チューベローズを破壊することにより私のビジョンを反映させました。私のファッションでは、同様に、洋服の構造を露わにする「デコルティケ」(衣服を核心まで脱構築し、予想外の、風変わりな方法でそれを再構築または再解釈すること)がすべてであり、その果てに感情を生み出していくのです。

ジョン・ガリアーノ

唯一無二なデコルティケなボトル・デザインも含め、今では〝幻のマルジェラの香り〟と言われているこの香りは、メゾン マルジェラを象徴するカラーである白を連想させる花チューベローズが、最初から最後まで、インドールやメントールを排除されたフルーティーに甘やかでクリーミーな〝白い炎〟に包まれていくようです。

そんな情熱と冷静のあいだに存在するチューベローズの香りは、ピリっと弾ける塩水で洗われたグリーンオレンジとプチグレン、スパイシーなピンクペッパーからはじまります。すぐにフルーティーなチューベローズとオレンジ・ブロッサムがココナッツのような甘みをとろけさせてゆきます。まるで濃厚な洋ナシのシャーベットが素肌の上でとろけて匂い立つようです。

さらにラクトンの甘さが全開のピーチも注ぎ込まれ、バターのように艶やかなチューベローズと流れる水の如く涼やかなジャスミンがひとまとめになり、陽炎のようなサフランも加わり、円やかなフローラルブーケの〝白い炎〟で包み込まれてゆくのです。

やがて、チューベローズはクリーミーさを増し、燃えるサフランにウードとバニラとパチョリが溶け合い、スモーキーウッディなレザーの香りとフローラルムスクの甘い余韻で満たしてくれます。

この香りのボトルデザインも、非常にユニークです。ネームが刻まれたプレートは、ボトル表面ではなく、ゴールドの液体に包まれた10面体のボトル内側に配されています。

「ノーマルなものなんてない」という言葉ではじまり、「自分の革命を始めよう。暴動を起こすのよ」という言葉で締めくくられる、ファビアン・バロンによるキャンペーンフィルムは、6人のミューティニスト(反逆者)が起用されています。

ウィル・スミスの娘ウィロー・スミスや、トランスジェンダーのファッション・モデル、テディ・クインリヴァンが参加しています。それにしても、6人それぞれのこの香水に対する感想は薄っぺら過ぎました(恐らく聞き手がダメだったのでしょう。多様性よりも、陳腐さの塊のような商業主義にまみれた答えなかりの退屈の極みでした)。

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香水データ

香水名:ミューティニー
原名:Mutiny
種類:オード・パルファム
ブランド:メゾン マルジェラ
調香師:ドミニク・ロピオン
発表年:2018年
対象性別:ユニセックス
価格:90ml/19,800円
公式ホームページ:メゾン マルジェラ


トップノート:オレンジ、マンダリン・オレンジ、ピンクペッパー、サフラン、ガルバナム
ミドルノート:チューベローズ・アブソリュート、洋ナシ、ピーチ、オレンジ・ブロッサム、アップル、ジャスミンサンバック・アブソリュート
ラストノート:インセンス、シダーウッド、セレノイド(ホワイトムスク)