ミツコ オーデトワレ
原名:Mitsouko Eau de Toilette
種類:オード・トワレ
ブランド:ゲラン
調香師:ジャック・ゲラン
発表年:1919年
対象性別:女性
価格:75ml/17,600円
公式ホームページ:ゲラン
20代の女性のための〝ミツコさん〟
ピーチの香りがフレグランスの中に初めて登場したのは「ミツコ」(より詳しいミツコ誕生秘話はこちらの記事をお読みください)からでした。日本人女性の名がつけられたこのゲランの名香は、1919年に三代目調香師ジャック・ゲランにより調香されました。
この香りの特徴は合成香料アルデハイドC-14(γ-ウンデカラクトン、別名ピーチアルデハイド)とオークモスのブレンドにより生み出されたシプレノートの進化形にありました。
オードトワレは、極めて純粋培養されたパルファムの〝入門編〟ヴァージョンであり、名優が出演した娯楽大作のような香りです(パルファムは難解な通好みな作品)。
まさに20代の女性のための「ミツコ」とも言えます。その根拠として、この年代の女性の体臭に含まれるオスマンサスやピーチのような香りのラクトンC10と、ピーチやココナッツのような香りのラクトンC11が、この香りと恐ろしく相性がいいからです。
イタリア産のベルガモット(さらにその他にオレンジ、レモンといった柑橘類のパレード)が肌の上で爽快に駆け巡ります。ローズとオークモスが絡み合い生み出されるシプレノートもその軽やかなシトラスの邪魔をせず、見事な調和が取られています。
そして、香りの中心に立つローズに、ピーチがブレンドされ、どこか親しみやすいミツコさんの登場です。このミツコさんには、若尾文子様が昔演じていたような芸者と娼妓のムードが漂います。
極貧の両親に売られ、田舎から出てきた娘が、身体を張って生きながら、ふと窓の外に目をやります。そこには幼き姉と弟が手鞠で遊んでいる情景があります。そんな情景を見ながら、こみ上げる懐かしさを胸に秘めながらこの娘は「今日も頑張ろう!」と、前向きに生きる決意をするのです。この香りには、そんな健気さと、小さな喜びを大切にして生きている〝日本女性の美学〟の香りがします。
だからこそ、ラストノートには、彼女たちの出自を思わせる森と土と苔の香りが程よくドライダウンの中に紛れ込み、ピーチの中に母なる大地に包まれるような安らぎを感じさせるのです。
「ミツコ」の入門編というよりは、気合を入れすぎないで使うことが出来る「ミツコさん」。または、腕につけると、その部分に鼻を近づける度に、小さな喜びを得ることが出来る香りです。
香水データ
香水名:ミツコ オーデトワレ
原名:Mitsouko Eau de Toilette
種類:オード・トワレ
ブランド:ゲラン
調香師:ジャック・ゲラン
発表年:1919年
対象性別:女性
価格:75ml/17,600円
公式ホームページ:ゲラン
トップノート:ベルガモット、ジャスミン、ローズ
ミドルノート:ライラック、ピーチ、ジャスミン、イランイラン、ローズ
ラストノート:スパイス類、アンバー、シナモン、オークモス、ベチバー