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【ステラ マッカートニー】L.I.L.Y(リリー)(ジャック・キャヴァリエ)

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©Stella McCartney
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L.I.L.Y(リリー)

原名:L.I.L.Y
種類:オード・パルファム
ブランド:ステラ・マッカートニー
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2012年
対象性別:女性
価格:50ml/9,975円

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ステラ・マッカートニーのプライベート・ブレンド

©Stella McCartney

2003年にステラ・マッカートニーが、ロレアル・グループの協力の下で、ファースト・フレグランス「ステラ」を発表してから9年後に発売されたセカンド・フレグランス、それが「リリー」です。

フローラル・シプレのこの香りは、「ステラ」に引き続きジャック・キャヴァリエにより、3年もの歳月をかけて調香されました。

そんなに長くかかるはずではなかったのですが…香水は私の専門分野ではないので、ジャックから教わりながら、私のルールに従いこの香りを誕生させました。

私はいつも、自分自身に正直にものを作ろうと思っています。だから、私が着たくないものは、着ないという個人的なルールがあるのです。

ステラ・マッカートニー

幼少期に、サセックスの田園地帯で育てられたステラ・マッカートニー自身の子供時代の思い出からインスパイアされた香りです。

この「リリー」とは、父ポール・マッカートニーが、(1998年に乳癌で亡くなった)母リンダ・マッカートニーにつけた愛称から来ています。それはリンダ・アイ・ラブ・ユー(Linda I Love You)という意味です。それにステラ自身と母が愛した花スズラン(英語名リリー・オブ・ザ・バレー)を掛け合わせています。

この香りは、ブランドのための香りというよりは、ステラ自身が本当に使用したいスズランの香りを作ることを念頭に生み出された香りです。

私はフレグランスをあまりつけません。つける時も少量です。このフレグランスは、身につける女性に自己表現の余地を残そうとするものです。だからとてもピュアで、シンプルなものにしたかったのです。

ステラ・マッカートニー

それはステラ自身のフレグランス哲学 ――華やかな香りに対しては、自分の元々の個性が消されてしまうように感じ、拒否反応が生まれてしまう―― を反映した香りなのです。

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ステラ・マッカートニーのスズラン

リンダ&ポール&ステラ・マッカートニー

私はスズランという花を愛しています。私のブライダルブーケの一部でもありました。それは息を呑むほど美しい花です。本当に新鮮で、純粋無垢に見える花です。日の光を直接浴びなくても、日陰でもよく育ち、春のほんの一時だけ咲くという儚さもまたスズランの持つ魅力です。

壊れやすくて、無垢で、繊細で、白い花と緑の葉のコントラストが素晴らしくて、そんなスズランのすべての面を捉えた香りを作ることは大変なチャレンジでした。そして、古臭いというイメージもあるスズランの香りを現代的に捉えることにも同時に挑戦しました。

ステラ・マッカートニー

「リリー」は、スズランの男性的な側面と素朴さ、森林に咲く花なので、根っこやアーシィな側面、そして、〝春のイギリスのカントリーサイドの情景〟を捉えた香りなのです。

キャヴァリエに調香を依頼するに当たり、ステラは、パリのレストランでインスピレーションを受けた、(高級レストラン用の)ペリゴール産トリュフの天然エキスを使用することを提案しました。

そして、いくつかのスズランの試作品を作ってもらいその中から彼女自身が、〝クリーンで単純な香りが良い〟とチョイスしたのがこの香りでした。

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スズランの二面性を、淡い光の中で捉えた香り

香水とはコントラストの芸術で成り立っていると言っても過言ではないです。白を魅力的に見せるためには、黒が必要になることと同じです。

ステラは、スズランの持つ極めてナチュラルでフレッシュなイメージを再定義するフレグランスを求めました。さらに深みを出すために、フランスのペリゴール地方で採れるトリュフの香りを加え、拡散するような、愛撫するような質感を加えました。

ジャック・キャヴァリエ

ステラ」がローズのフレグランスに興味がなかった人々の心を捉えたように、「リリー」もまた、スズランのフレグランスに興味がなかった人々の心に刺さる香りと言えるでしょう。だからこそ、スズランのフレグランスが好きな人には物足りなさを感じさせる可能性もある香りです。

男性的なブラックペッパーと共に、フレッシュグリーンなスズランが、(ダークで官能的な)トリュフにより、塩気のあるウォータリーな淡い輝きを放つようにしてこの香りははじまります。小川のせせらぎが聞こえてくるようなはじまりです。

それは森の持つダークさとスズランの持つ純真無垢さのコントラストも感じさせます。

すぐにブラックペッパーからピンクペッパーにバトンタッチし、ホワイトムスクとオークモスの広がりの中、スズランは、エアリーな軽やかさと素朴さ(温かさ)を解き放ちます。

ステラ・マッカートニーのファッション哲学に実に忠実な香りです。決して主張しすぎず、〝シンプルこそが洗練の極み〟であり、スズランをより少なくすることが、より多く感じさせるということを身にまとうと周りの反応から実感させてくれる香りです。

それは涼しげな森林の木漏れ日と、近くにある草原の輝き、さらにそこに咲く白い花々の淡い煌きに包まれた、儚いスズランの幻影なのです。花の甘さよりも、花の自然なムードを捉えた香りです。

アールデコ調のカットクリスタルグラスを使用したボトルデザインは、英国のアンティークな花瓶や食器を連想させ、思い出を集める額縁のようなメタルフレームにより、光と闇、円と四角、女性らしさと男性らしさの交錯をイメージしています。

キャンペーン・モデルとしてポーランド出身のファッション・モデル、マウゴザタ・ベラ(1977-)が起用され、ステラ自身が望んだコンセプトであるナチュラル・メイクと自然光によりフォト撮影は行われました。

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香水データ

香水名:L.I.L.Y(リリー)
原名:L.I.L.Y
種類:オード・パルファム
ブランド:ステラ・マッカートニー
調香師:ジャック・キャヴァリエ
発表年:2012年
対象性別:女性
価格:50ml/9,975円


トップノート:トリュフ、ペッパー
ミドルノート:ピンクペッパー、スズラン
ラストノート:ムスク、パチョリ、オークモス、アンブレット