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グレース・ケリー

【真昼の決闘】グレース・ケリーの誕生

グレース・ケリー
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【真昼の決闘】

High Noon 赤狩り真っ只中のアメリカで、西部劇史上はじめてリアリズムに徹底した作品(脚本のカール・フォアマンも本作完成後、英国へ亡命。)。当時50歳のゲイリー・クーパーを初老の保安官として配し、敵対するガンマン4人とたった1人で立ち向かわないといけない焦燥感を描き、最後の最後に決闘で締めくくる、西部劇をそれまで一度も撮ったことのなかったフレッド・ジンネマン監督による西部劇です。

映画の中の時間と上映時間の経過がほぼ同じ85分です。唯一リアルではない部分は、グレース・ケリー(当時21歳)のような若い美人妻の設定だけです。

自分が守ろうとしている街の住民が、関わり合いを恐れ協力を拒むところは、今見てもリアルな描写であり、新婚の妻にまで見放され完全に孤立無援になる憐れなクーパーの姿が、勧善懲悪の従来の西部劇のスタイルから飛び越えていったのでした。

本作でゲイリー・クーパーは、アカデミー賞の主演男優賞を獲得し、音楽を担当したディミトリ・ティオムキンも同じくアカデミー歌曲賞を受賞しました。ドワイト・アイゼンハワー、ロナルド・レーガン、ビル・クリントンといった歴代のアメリカ大統領達が最も好きな映画として挙げている〝不滅の西部劇〟。

『真昼の決闘』の監督依頼を受けて脚本第一稿を読み、これは傑作以外の何物でもないと思った。優れていて、エキサイティングで、そのアプローチには新鮮味があった。…撮影している中で、これが普通の西部劇神話ではないことがわかってきた。それには時機を得た、そして時間を超越した、今日の生活に直接結びついている何かがあった。

フレッド・ジンネマン

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あらすじ

85分の物語は、午前10時35分からはじまります。ひとりのガンマンが小屋の丘の上に佇んでいます。この男の名は、ジャック・コルビー(リー・ヴァン・クリーフ)。やがて仲間が加わり3人になり、馬で並びながらハドリーヴィルという街へ入ってゆきます。一方、結婚したばかりのこの街の連邦保安官ウィル・ケイン(ゲイリー・クーパー)は、この機会に職を辞する予定でした。

駅に到着した3人のガンマンたちは汽車を待っていました。5年前にウィルに逮捕され、獄に繋がれていた3人のボスであるフランク・ミラーが釈放され、復讐のため、その汽車に乗って、午後0時=正午(ハイヌーン)に戻ってくる予定なのです。

状況を知り、若き新妻エミイ(グレース・ケリー)は、フランクが到着する前に街を出ようとウィルを説得し、午前10時55分、二人で馬車で街を出ました。

しかし、ウィルは自分の良心に従い思い直し、すぐに街に戻ることを決意しました。父と兄を殺されクエーカー教徒になったエミイは、正義よりも命が大事だと説得するが、ウィルは信念を曲げません。

4人との決闘に向けてウィルは仲間を集めるため街中を駆けずるが、保安官助手のハーヴェイ(ロイド・ブリッジス)も協力を断る始末だった。最終的に、ウィルを慕う少年だけが加勢を希望するが、ウィルは彼を家に帰らせ、ひとりで4人と闘う決意を固め、遺書を書きしたためるのでした。

時は来た!フランク・ミラーの乗った汽車の汽笛が聞こえ、エミイは一人でウィルのもとを去り、その汽車に乗り込む準備をしていた。フランクは3人と合流し、ウィルとの決闘にのぞむのだった。

一発目の銃声が鳴り響く!エミイはとっさに汽車を降り、街へ戻る。さあ、4人の荒くれと1人の保安官の闘いの決着は如何に!

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ファッション・シーンに与えた影響


全く無名の女優だったグレース・ケリーが、落ち目になっていたスーパースター、ゲイリー・クーパーの大復活作に参加するという幸運に恵まれた、ハリウッド・デビュー作『真昼の決闘』がファッション・シーンに与えた影響は、以下の一点のみです。

  1. グレース・ケリーというファッション・アイコンの誕生

つまりグレース・ケリーは、世界中の人々の前に現れた瞬間から、初々しさの中に、毅然とした気品と凛とした佇まいと所作を持つ、すでに完成された〝不滅のクール・ビューティ〟でした。

しかし、グレース・ケリーの恐ろしいところは、この作品を見て「私の表情からは何も感じられない」と考え、演劇学校ですでに2年間みっちりと演技について学んでいたにも関わらず、サンフォード・マイズナーという当時最も厳しい演劇界の神の下でまるまる一年、演技力を磨き上げたのでした。

グレース・ケリーがただのクール・ビューティではなく、不滅の存在になったのは、この見えない苦労を厭わない、意志の勝利とも言えます。

それはただ外見でハリウッドに生息しているのではなく「いい演技は心から生まれる」という考えが、〝外見は冷ややかだが、その陰に激しい情熱の炎が潜んでいる〟という、唯一無二の真のクール・ビューティの存在感を生み出させたのでした。

後年、マイズナーが1951年から52年にかけて教えたグレースについて聞かれたとき「あの女優には心があった」とだけ答えました。

作品データ

作品名:真昼の決闘 High Noon (1952)
監督:フレッド・ジンネマン
衣装:ジョー・キング/アン・ペック
出演者:ゲイリー・クーパー/グレース・ケリー/リー・ヴァン・クリーフ/ロイド・ブリッジス/ケティ・フラド