天使の翼をつけたジュリエット像の誕生
彼女は、16歳にして、30歳のような女性なんだ。でも何よりも重要なのは、成熟したムードを持つ彼女がときおり発散するフレッシュな若々しさとの強烈なギャップなんだ。私はジュリエットにこの感覚を求めていました。
バズ・ラーマン
クレア・デインズ(1979-)は、現在継続中のテレビシリーズ『ホームランド』でも、CIAの諜報部員を見事に演じ上げている本当に素敵な女優です。
本作の素晴らしいところは、ロミオ役のレオナルド・ディカプリオ(1974-)のこの世のものとは思えない美しさに対して、同じような美女をジュリエット役に持ってこなかったところにあります。
女性版ジャック・ニコルソンのような表情が見ていてクセになるこのクレア・デインズという女優は、当時16歳にしてすごい演技をする人でした。後に彼女自身回想しているように、はじめて会ったディカプリオの魅力は衝撃的だったようで、その分だけ、彼には冷たく対応したということでした。
特に、キスシーンの後は大変だったと回想しています。ディカプリオ自身も、年下で生真面目な彼女に触発され、(若気の至りで、ちょっとした意地悪もしたのですが)俳優の仕事に対して真摯に向き合うようになったと回想しています。
ちなみにこのジュリエット役は、当初ナタリー・ポートマンで内定しており、シドニーのテスト撮影において、ディカプリオと共に撮影に望んだのですが、彼女の年齢が当時、14歳だった(ディカプリオは当時21歳)ことと、身長差により、どうしても青年のディカプリオが少女にいたずらしているように見えてしまうので、降板することになりました。
そして、クレアが選ばれたのでした。シェイクスピアに対する二人のコメントの違いを見ているだけでもとても面白いです。ディカプリオは、「眠たくなるような内容の学校の授業で読まされる本」と言っているのに対して、クレアは「シェイクスピアは読めば読むほど、その奥の深さに、大いなる愛を感じるのです」とコメントしているのです。
そういったお互いの感性の違いが、二人の役柄に見事に反映されていたのでした。
ジュリエットのファッション1
リトルホワイトドレス
俺が見ている限り当時二人共恋人がいたはずなんだけど、お互い惚れ合ってた感じがしたよ。撮影現場で、すごい言い合いをしたりして見せるんだけど、俺から言わせれば、恋人のような喧嘩なんだよな。二人は撮影中、仲が悪かったなんて書かれてたけど、20年も経って、お互いにいまだに親友同士なとこを見てみると、間違いなく撮影当時二人は惚れ合ってたんだと俺は確信してるよ。だから、あの作品は永遠に人々の心を打つのさ。
ジョン・レグイザモ
ジュリエットのファッション2
ウエディングドレス
- ホワイトシルクサテン・ウエディングドレス、くるみボタンディテール、レトロなデザイン
- 白のショートグローブ
- ピンクベージュのメリージェーン・ヒールサンダル
ボクがいて、オーディションがはじまったんだ。ボクは、相手役をするんじゃなくて、見ていただけだったから、女優たちは、ボクを見ないで台詞を言ってたんだけど、クレアだけは、椅子に座っていたボクの前まで来て、ボクの目を見つめて台詞を投げかけてきたんだ。ほんと、圧倒されたよ。彼女、当時まだ16歳だったんだよ。
レオナルド・ディカプリオ
ジュリエットのファッション3
セーラールック
クレオパトラとドラァグクイーン
ジュリエットの母親は、クレオパトラの仮装をし、ロミオの大親友のマキューシオはドラァグクイーンの仮装をします(キャピュレット家の大豪邸の概観は、メキシコ・シティのチャプルテペック城で撮影された)。
この二人が、キャピュレット家の仮面舞踏会のシーンにおいて文句の付けようのない素晴らしい空気を作り上げています。彼らの混沌としたケバケバしさが存在したからこそ、ロミオとジュリエットのミニマルな恋愛空間とのコントラストが生きたのでした。
ちなみにジュリエットの母親を演じたダイアン・ヴェノーラ(1952-)は、ジュリアード音楽院で演技を学んだ生粋のシェイクスピア女優です。
作品データ
作品名:ロミオ+ジュリエット Romeo + Juliet (1996)
監督:バズ・ラーマン
衣装:キム・バレット
出演者:レオナルド・ディカプリオ/クレア・デインズ/ジョン・レグイザモ/ハロルド・ペリノー