オードリー・ヘプバーンと夫メル・ファーラー
わたしは13歳のときから自立して、多くの重要な問題を慎重に考えてきましたが、判断を誤ったことは少なかったと思います。自分で物事を考える能力があることをとても誇りに思っています。わたしの判断に逆らって、わたしに何かをさせることは、誰にも、たとえ愛する夫にさえできないのです。
オードリー・ヘプバーン
上のオードリーの発言は、本作公開時に、夫メル・ファーラー(1917-2008)が、彼女の仕事を完全にコントロールしており、まるで操り人形のように、大スターの妻を利用して、アンドレイ役を獲得したという風評に対してのものです。
そういった見解が全くの中傷だったことは、その後のオードリーの主演作が示しています(この後に二人が共演したのは、1957年のテレビ映画『マイヤーリング』のみ)。
ナターシャのファッション9
グリーンストライプ・ドレス
- グリーンストライプのドレス、首元にはオーガンジー、スクエアカット、パフスリーブ
ナターシャのファッション10
ダークブラウンドレス
- ボールショルダーのダークブラウンドレス、チャイナボタン、スタンドカラー
- ダークブラウンの手袋
- ダークブラウンのピルボックスハット、ピンクのシフォンリボン
隠れた逸品ともいえるのが、このオールダークブラウンのドレスです。20代のオードリーの野性の小鹿のような魅力を引き出しています。アンドレイの父と妹の失礼な対応に対して、怒りを抑えるオードリーの表情がとても凛々しく、そして、気高く美しいのです。
本作の衣裳デザイナーであるマリア・デ・マッテイス(1898-1988)について、少し語らせて戴きます。イタリアの舞台及び映画の衣裳デザイナーである彼女は、本作においてアカデミー衣装デザイン賞カラー部門にノミネートされました。
『天地創造』(1966)などの歴史劇を得意とする彼女は、1970年に『ワーテルロー』にて再びナポレオンの衣裳を担当しました。
ナターシャのファッション11
グレー・シュミーズドレス
- グレーのシュミーズドレス、パフスリーブ、ハイウエスト
- ネックレスとバングル
- ヘッドアクセ
- グレーのオーガンジーロンググローブ
黒とグレーの着こなしがとても上手なのがオードリー・スタイルの特徴です。そして、これらのファッションの時には、オードリーはほとんどアクセサリーをつけません。
しかし、社交界にデビューしたばかりの洗練されていないお嬢様という役柄上、このドレスにおいてのみ、オードリーはごてごてにアクセサリーをつけています。
センスの良い女性には、女たらしは近づいてきません。女たらしが、女性に対してまずすることは、その女性の隙を見つけることです。アナトーリーがナターシャを見る目はまさにそういう目つきでした。
ナターシャのファッション12(リトルブラックドレス)
リトルブラックドレス
- 厳密にはリトル・ダークグリーン・ドレス、スクエア・カット、コットンベルベット
- ティアラ
そして、黒を着るオードリー、アクセサリーはティアラ以外全くなし。これこそ、オードリースタイルの真骨頂です。その美しい首筋とデコルテ自体が最上級のアクセサリーであり、どんな宝石も不要なのです。
作品データ
作品名:戦争と平和 War and Peace (1956)
監督:キング・ヴィダー
衣装:マリア・デ・マッテイス
出演者:オードリー・ヘプバーン/アニタ・エクバーグ/ヘンリー・フォンダ/メル・ファーラー/ヴィットリオ・ガスマン/ハーバート・ロム/ジェレミー・ブレット