オードリーの幻のトレンチコート
エリザベス・ルック19 ノーカラー・スーツ
- デザイナー:ユベール・ド・ジバンシィ
- ベージュのトレンチコート、エポレットなし
- 白のタートルネック、ジバンシィ・ ヌーベル・ブティック1978/79AW
- べっ甲のバタフライ・サングラス、ジバンシィ1978SS
- ベージュのレザーブーツ、ジバンシィ1978/79AW
- ベージュのコーデュロイパンツ、ジバンシィ・ ヌーベル・ブティック1978/79AW
オードリー・ヘプバーンが着たトレンチコートの中で最もアイコニックなものは『ティファニーで朝食を』の中で着ていたバーバリーであることは疑問の余地がありません。しかし、全く知られてないと言ってもいいのですが、本作においてのこのトレンチコートには、それに匹敵する程の、実に魅力的なシルエットと、タイムレスな〝大人の色気を纏う〟トレンチアイコンとしてのパワーがみなぎっています。
私は、このオードリーのトレンチコートの着こなしのためだけでも、この作品を見る価値があると考えます。元々は男性の戦争着だったトレンチコートが、女性の肉体を包み込んだことによって、最新モードへと転換していったのですが、その言葉に説得力を生む映像がこのシーンにはあるのです。
1979年、オードリーのオスカードレス

オードリーの『戦争と平和』(1956)を監督したキング・ヴィダーと。

50歳になっても美しいオードリー。
オスカーナイト・ルック ジバンシィドレス
- デザイナー:ユベール・ド・ジバンシィ
- ストラップレス・イブニングドレス、レッドシフォン生地にブラックポルカドット、ジバンシィ1979SS
- イヤリング、ジバンシィ1979SS
1979年4月9日に行われた第51回アカデミ賞授賞式のオスカードレスは、勿論ユベール・ド・ジバンシィがデザインしたものでした。オードリーはアカデミー名誉賞のプレゼンテーターをつとめ、オードリー自身も出演した『戦争と平和』(1956)を監督したキング・ヴィダーが受賞しました。ちなみに動画の中で確認できるゴールデン・レザーのサンダルは、ジバンシィの1978年SSです。
ヴィダーは自伝でオードリーについてこう述べていました。「オードリー・ヘプバーンほど、ナターシャの役にピッタリの女優はいない。彼女はその仕草とテンポについて監督を喜ばす直観的な頭の良さを持って動いていた」更に「あなたが指導した女優の中で最もお好みの女優は、と問われれば心に浮かぶ名前は一つで、オードリー・ヘプバーンである」とまで。
そして、最後にユベール・ド・ジバンシィと共に
1979年3月8日、本作の撮影も全て終わり、パリの老舗レストラン・マキシムでディナーした後のユベール・ド・ジバンシィとオードリーのショットです。オードリーのこの時のファッションは、ヴァレンティノのブラックニットケープ(1976/77AW)とルビーカラーのジバンシィの新作ハット、そして、ハンドバッグはルイ・ヴィトンでした。
オードリー・ヘプバーンの実質的な最後の主演作である『華麗なる相続人』は、映画としてはどこからどう見ても駄作以外の何物でもありませんでした。しかし、ファッションの観点から見たならば、これほど〝忘れ去られた貴重な作品〟はないと言っても過言ではありません。特に、中年女性に対してのタイムレスなスタイリングのヒントがこの作品には、たっぷりと転がっています。
そして、〝最後のジバンシィ〟作品として見ても、実に贅沢なコレクションの数々を見ることが出来る貴重な作品なのです。