ニュイ ダムール
原名:Nuit d’Amour
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ジャン=ポール・ゲラン
発表年:2006年
対象性別:女性
価格:125ml/36,960円
クリムトの〝謎の美女〟に捧げた香り
ゲランの四代目調香師ジャン=ポール・ゲランは、芸術作品の中の美女に〝とびきり似合う香り〟を創造することに強い関心を持っていました。
そんな彼が2006年に、グスタフ・クリムト(1862-1918)の比較的マイナーな作品である『帽子と羽毛の襟巻の婦人』(1909)からインスパイアされ、その神秘的な美女のために生み出した香りが、「ニュイ ダムール」です。
「ニュイ ダムール」とは、フランス語で「愛の夜」の意味です。
2006年にパリ本店で限定発売され、80本のバカラ製500mlボトルは1800ユーロで販売されました(通常版60mlは500本限定で280ユーロで販売された)。そして、2010年に「パトリモワンヌ コレクション」から再販され今に至ります。
クリムトが永遠に愛した女性の香り
クリムトが『帽子と羽毛の襟巻の婦人』の中で描いた〝謎の美女〟の突出した存在感は、彼女から発散される3つの不思議なオーラを捉えている(創り出している)点にあります。
ひとつは、不恰好なほど微妙な女性の素顔が一部だけ見える構図。もうひとつは、決して美しいと言い難い細長い目の造形と奇妙な目線。そして、最後のひとつは、少しだけ見えるチェリーレッドの唇です。この三つの要素が三位一体となり、この女性に神秘性を生み出しているのです。
そして、この絵画のモデルは、エミーリエ・フレーゲ(1874-1952)のファッション・サロンに来ていた女性、もしくは彼女自身だと言われています。エミーリエとクリムトは、結婚こそしませんでしたが、クリムトが1918年にスペインかぜで死去した後、半分の遺産は、彼女に遺され、エミーリエは生涯独身を貫くほど相思相愛の仲でした。
この香りは、あの絵画の婦人のチェリーレッドの唇のような、ジューシーなライチの甘さからはじまります。すぐにピンクペッパーにより新鮮な柔らかさに包まれたメイローズが、まさに彼女の一部しか見えない素顔の大半を占める頬が、愛のささやきにより赤みを帯びるように甘く香り立ちます。
そして、ヴァイオレットが存在を明らかにし、フルーティーローズに甘くも冷静なパウダリーの側面を付け加え、壊れやすいほどに繊細なエレガンスが、愛が生む熱情を制御しようとする心を描き出します。
本当に意地悪な女性です。あと少しで愛の虜になりそうな雰囲気を見せながら、目線を逸らせ、思わせぶりな表情で、愛をささやいた男を逆に虜にしてしまいます。それは完全にアイリスに翻弄され支配されたクリーミーなサンダルウッドとホワイトムスクが燻る官能性のようです。
ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「ニュイ ダムール」を「ピーチフローラル」と呼び、「もし彼らが、明らかに「トレゾァ」風の香りを申し分のないピーチフローラルから取り去って、愛らしいパウダリーなミドルノートを「シャンダローム」の最新版にリサイクルするだけで、私は幸せになってしまう。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:ニュイ ダムール
原名:Nuit d’Amour
種類:オード・パルファム
ブランド:ゲラン
調香師:ジャン=ポール・ゲラン
発表年:2006年
対象性別:女性
価格:125ml/36,960円
トップノート:ライチ、ピンクペッパー
ミドルノート:メイローズ、ヴァイオレット
ラストノート:ホワイトムスク、サンダルウッド、アイリス