ミラク ソー マジック!
原名:Miracle So Magic!
種類:オード・トワレ
ブランド:ランコム
調香師:アニック・メナード
発表年:2004年
対象性別:女性
価格:50ml/7,000円
10代の少女のための「幸せをはこぶ魔法のミラク」

©LANCOME
2000年を迎えるにあたり、ランコムが20代から30代という広範囲な女性層をターゲットにした〝奇跡の香り〟「ミラク」は、未曽有の大ヒット作となりました。その成功を受けて、2004年にターゲット層を10代後半の少女たちへと下げたのが「ティーンエイジャーのためのミラク」です。
名づけて「ミラク ソー マジック!」=〝幸せをはこぶ魔法のミラク〟は、アニック・メナードにより調香されました。
キャンペーン・モデルとして、ミック・ジャガーとジェリー・ホールの娘エリザベス・スカーレット・ジャガー(1984-)が起用されました。ビジュアル・イメージが全てを物語るように、光沢のあるキャンディカラーが少女たちに愛された時代の香りです。
ジューシーチューブ世代のためのミラク

一世風靡したジューシーチューブの広告 ©LANCOME

©LANCOME
この香りのターゲットは、「ジューシーチューブ」世代です。
「ジューシーチューブ」とは、ランコムから2000年に発売され、アメリカのスクールカーストの上層に位置する美少女たちを魅了したリップグロスです。その鏡をほとんど必要としない斜めのチューブに入った塗りやすい形状と、フルーティーな香りのキャンディテイストの斬新な感覚により、瞬く間に世界中の少女たちを虜にしました。
特にアメリカでは大流行し、少女たちは、放課後、20ドルを握り締めショッピングモールのランコム・カウンターに殺到したのでした。
半透明で中の色がよく見えるチューブが、ランコムの運命も変えたのでした。この瞬間、成熟したフランスの洗練の代名詞だったランコムは、完全に21世紀に向けて生まれ変わったのでした。
一方、日本においても上陸と同時に、当時のギャルたちが、109スタイルに即効取り入れたのでした(2016年に発売された「ジューシー シェイカー」にバトンタッチする形で、2018年に販売終了しました)。
この当時の10代の少女にとって、ブリトニー・スピアーズや浜崎あゆみのような少し背伸びしたギャルこそが崇拝の対象でした。そしてこの〝素肌に吹きかけるジューシーチューブ〟は、驚きと奇跡に満ちたピンクペッパーと共に弾けるヴァイオレットの甘やかな香りからはじまります。グルマンなヘーゼルナッツのサクサク感がアクセントとなり、ヴァイオレットに若々しさを与えてゆきます。
すぐに四つ葉のクローバーの新緑の輝きと共に、フレッシュでピュアなローズとスズラン、ジャスミン、水仙が広がってゆきます。
このピンクと白の花々を取り囲む、グリーンとフルーティーフローラルのほど良いバランスの中で、15歳なのに、ド派手なメイクと服装で背伸びしたギャルたちの大人びたムードを、その背景に絶妙なチープさを混在させながら香り立たせていくのです。
今の時代にこそ必要な〝奇跡の守護神〟

デヴォン青木、2003年 ©LANCOME
フレンチ流チープシックではなく、アメリカ流チープシックな、ゴージャスの中に隙のあるチープさが混在する、ミニスカートに小麦肌と厚底サンダルに、ブロンドヘアとキラキラツヤツヤメイクが香りと溶け合い、テンションが上がってゆくようです。
何よりも、この香りの素晴らしい点は、汚らしいギャルではなく、清潔感と洗練を感じさせる、手入れの行き届いたギャル像を、キラキラ輝くフルーティーローズが感じさせてくれる所にあります。
それは非常につけやすいのですが、アクアやグリーン、シトラスのようなフレッシュすぎる感じではなく、石鹸のようなありきたりな清潔感もありません。溢れんばかりの淡いピンクの世界へと誘われるロマンティックな花の香りです。
もし、今、再販されたら、レディ・ディオールとグラフのバタフライと、整形とボディメイクとブロンドヘアで武装した美女たちの〝奇跡の守護神〟となることでしょう。
なぜならこの香りの創造主は、アニック・メナード様だからです。ただの〝ピンクの奇跡の天使〟では終わらない〝ピンクの小悪魔〟が隙を窺い、身をひそめている、ほのかな〝悪徳の栄え〟を感じさせてくれます。
香水データ
香水名:ミラク ソー マジック!
原名:Miracle So Magic!
種類:オード・トワレ
ブランド:ランコム
調香師:アニック・メナード
発表年:2004年
対象性別:女性
価格:50ml/7,000円
トップノート:ピンクペッパー、ヴァイオレット、ヘーゼルナッツ
ミドルノート:ジャスミン、水仙、ローズ、スズラン、クローバー
ラストノート:ムスク、ヴァージニア・シダー、アンバー、バニラ