【昼下りの情事】
Love in the Afternoon オードリー・ヘプバーンがユベール・ド・ジバンシィと本格的にタッグを組んだ『パリの恋人』(1957)に次ぐ第二弾の作品となります。(『麗しのサブリナ』は、二人の出会いの作品であり、ジバンシィが彼女のためにデザインしたのではなく、ジバンシィのデザインしたオートクチュールの中からオードリーが衣裳を選びました)。
『麗しのサブリナ』のビリー・ワイルダー監督と再びタッグを組み、相手役にゲーリー・クーパーを配し、磐石の体制でオードリーのメジャー映画第五弾となるロマンティック・コメディ『昼下りの情事』は、1957年に公開されたのでした(撮影は1956年8月から12月にかけて行われた)。
「魅惑のワルツ」が主題曲として使用され大流行し、オードリー扮するアリアーヌのアリアーヌ巻きが大流行しました。
あらすじ
チェロを学ぶパリの女学生アリアーヌ(オードリー・ヘプバーン)の父親シャヴァス(モーリス・シュヴァリエ)は私立探偵をしています。アリアーヌの最近の趣味は、父親の事件ファイルを盗み見することでした。
特にアメリカの大富豪・フラナガン(ゲーリー・クーパー)の浮気事件のファイルがお気に入りでした。ある日、フラナガンの浮気相手の夫が、今晩彼を射殺すると父親のオフィスで言い残し立ち去る姿を盗み聞きしてしまうのでした。
アリアーヌは早速、フラナガンのいるホテル・リッツに向かいます。そして、二人は出会い、アリアーヌはフラナガンの窮地を救い、謎の美少女としてデートを重ねるのでした。
本当はまだ男性経験もないアリアーヌなのですが、父親の事件ファイルを活用し、男性遊びに長けた美少女を演じて、フラナガンの向こうを張るのでした。すっかり彼女に夢中になったフラナガンは、あろうことかシャヴァスに彼女の素行調査を依頼するのでした。
シャヴァスは、その謎の美少女がアリアーヌであることを知り、フラナガンに真実を告げ、パリを離れるようにお願いしました。突然、ホテル・リッツを去りアメリカに帰国すると告げるフラナガンの前で、心中穏やかでないにも関わらず、冷静さを装うアリアーヌ。
そして、リヨン駅で二人は永遠の別れを誓い合うのでした。発車する列車の前で、本当は悲しくてしょうがないのに、そんな姿を見せまいとする健気なアリアーヌの姿に、フラナガンは彼女を列車に抱えあげるのでした。
ファッション・シーンに与えた影響
1957年に公開された『昼下りの情事』は、オードリー・ヘプバーンがユベール・ド・ジバンシィのデザインした衣装を着た三度目の映画作品でした。この作品がファッション・シーンに与えた影響として以下の四点を上げることが出来ます。
- 世界中に流行したアリアーヌ巻き
- リトルブラックドレスの多面性を世に示す
- 女性のためのパンツスーツ・バイブル。クロップドパンツの組み合わせ
- オードリーとルイ・ヴィトンの初対面
現在よく見かける女性のパンツスーツ・スタイルのクロップドパンツ・ルックの始祖は、『昼下りの情事』のアリアーヌ=オードリー・ヘプバーンでしょう。世界中でそういう指摘をしているファッション誌&ファッションブログを、私はまだ確認したことがありません。しかし、これは恐らく真実です。
作品データ
作品名:昼下りの情事 Love in the Afternoon (1957)
監督:ビリー・ワイルダー
衣装:ユベール・ド・ジバンシィ
出演者:オードリー・ヘプバーン/ゲイリー・クーパー/モーリス・シュヴァリエ