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トム・フォード

【トム フォード】タスカン レザー(ジャック・キャヴァリエ/ハリー・フレモント)

トム・フォード
©TOM FORD
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タスカン レザー

原名:Tuscan Leather
種類:オード・パルファム
ブランド:トム・フォード
調香師:ジャック・キャヴァリエ、ハリー・フレモント
発表年:2007年(日本発売 2012年)
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/39,600円
公式ホームページ:トム・フォード

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愛と憎しみを呼び覚ます〝悪魔のささやき〟の香り

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©TOM FORD

2007年にトム・フォードが発表した新たなるフレグランス・ライン「プライベート ブレンド コレクション」。それは一挙に12種類の香水を発売するという画期的な試みでした。

「タスカン レザー」とは英語で「(イタリアの)トスカーナ地方の革」という意味です。ジャック・キャヴァリエハリー・フレモントにより調香されました。

ちなみにトスカーナ州には、世界的に有名な歴史都市フィレンツェがあります。そして、フィレンツェは、薬品などは一切使わずに植物性のタンニンでなめしたフルベジタブルタンニンレザー(ヌメ革)の世界的な産地であり、ラグジュアリー・ブランドのためのヌメ革を多く生産しています。

何よりもこの香りについて驚かされるのは、レザーアコードにブレンドされたジャミーなラズベリーの存在です。トム・フォードの香りは、衝撃的であり、価値観を揺さぶることこそが信条です。だからこそ、トム・フォードの香りに対して人々の反応ははっきりと三つに分かれるのです。

  1. 絶対に生理的に受けつけることが出来ない
  2. ハートを射抜かれたように一瞬で恋に落ちる
  3. 最初は憎しみからはじまり、最後は愛に到達する

この香りもそのトム・フォード色、いいや、トム・フォード節と呼んだほうが相応しいその特色がはっきりと刻まれている香りなのです。

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レザーに憧れ、やがて、レザーに愛される香り

©TOM FORD

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まずはサフランと共にトスカーナ産レザーがスモーキーに香り立つ中、ラズベリーがブレンドされていきます(ドライウッドのようなアンバーの温かみが隠し味)。

ミドルノートにおいて、(ゴムのようなケミカル臭になってしまうほどに)天に向かって昇華するように強く香り立ちはじめるレザーに対して、クリーミーなジャスミンがオリバナムに包まれ投入されていきます。こうして、天に向かっていたレザーは人肌に急転直下し馴染みはじめます。ここでレザーは激しい側面を、静謐さへと転換させていくのです。

まさに圧巻のトップからミドルへの香りの変化です。

レザーの香りには、高級バッグの香りから、野生の馬の香りまでかなりの開きがあります。そして、この香りは、その両極のレザーの香りの美学を集約することに成功しています。それはまさに身に纏い身体に馴染んだレザーの雰囲気を見事に捉えているのです。

だからこそ、宝石は買えないけど、そのブランドの香水は身に纏いたいという人々のために作られた香水ではなく、トム・フォードのファッションに身を包んだ者のみが、使用を許される〝恐るべき大人のため〟の香りなのです。

手入れの行き届いた人肌か、もしくは上質なレザーにのみ真価を発揮する〝選民フレグランス〟なのです。私はそういったフレグランスの観念が大嫌いなのですが、しかし、心の奥底で、〝この香りに対する憧憬の念〟が潜んでいることも了解しています。だからこそトム・フォードは恐ろしいブランドなのです。

ルカ・トゥリンは『世界香水ガイド』で、「タスカン レザー」を「新車」と呼び、「透明感のある、ウッディなスモーキー調で、背景では軽やかなフルーティな香りがする。この種の香水のよい見本となるが、同系統の香水なら、私はランコムのキュイールのほうが好きだ。より深みがあって満足できる。興味深い点は、原材料にベチバーを使っていないのにもかかわらず、アコードからそれに近い香りがするということだ。」と2つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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香水データ

香水名:タスカン レザー
原名:Tuscan Leather
種類:オード・パルファム
ブランド:トム・フォード
調香師:ジャック・キャヴァリエ、ハリー・フレモント
発表年:2007年(日本発売 2012年)
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/39,600円
公式ホームページ:トム・フォード


トップノート:サフラン、ラズベリー、タイム
ミドルノート:オリバナム、ジャスミン
ラストノート:ブラックスエード、レザー、アンバーウッド