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【エルメス】ブラン ドゥ レグリス(ジャン=クロード・エレナ)

エルメス
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ブラン ドゥ レグリス

原名:Brin de Reglisse
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2007年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/41,360円

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エレナ、天然のラベンダーの分子を組み立て直す。

©Hermès

クールかと思えば情熱的、ドライなのに甘く柔らかなフレグランス。南仏プロヴァンスの乾いた大地。香り豊かなむらさき色のラベンダーの草原に、アルプスから吹き込むミストラルの風。

そんな豊かな風景を濃厚なレグリス(甘草)が包み込みます。澄んだ光を放つラベンダーを黒いレグリスのベルベッドでドレスアップしました。そよ風に乗ってふわりと香る干草と、オレンジの花の吐息に胸が高鳴ります。ただ自然を再現するのではなく、エレガントで華やか、ラベンダーが織りなす不思議な世界。

ジャン=クロード・エレナ

地中海の庭」の成功により、2004年にジャン=クロード・エレナエルメスの初代専属調香師に就任することになりました。そして、≪嗅覚の詩≫とも言える究極のフレグランス・コレクション『エルメッセンス』が誕生しました。

2007年に七作目として発表されたのが「ブラン ドゥ レグリス」です。フランス語で「リコリスのかけら」という意味を持つラベンダーの香りです。リコリスとはスペインカンゾウとも呼ばれ、紫色の花を咲かせる甘草の一種であり(リコリスの根は砂糖の50倍もの甘みがある)、リコリスのキャンディは、日本人の味覚に全く合わないことでも有名です。

エレナはまずこの香りを作るために、グラースのラボラトリー・モニーク・レミーに依頼し、天然のラベンダー(300もの分子から成る)から50の分子を取り出してもらいました。そして、それらをすべて嗅ぎ、汗やおしっこのような匂いをさせる不要だと考えた5つの分子(テルピネオール、ボルネオール、カンファーなど)を捨て、45の分子を組み立てなおしたのでした。

この結果、通常は60ユーロするラベンダー精油が、600ユーロしたのでした。

しかし、そのことにより、今まで存在しなかったピュアでクリーンなラベンダーの香りを生み出すことに成功しました。さらに、このラベンダーに欠けていると感じた部分をリコリスにより補うことにしました。

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ラベンダーとリコリスのランデブー


コバルトブルーの空に見守られながら、パープルのラベンダーが乾いた大地を覆いつくすように、しんみりと透き通るようなアロマティックな空気が到来します。すぐに、甘やかなリコリスが混じりあい、ラベンダーの苦みと見事なハーモニーを奏でてゆきます。

どこまでも穏やかに続いてゆくラベンダーとリコリスのランデブー。エルメッセンスの真骨頂は、極めてシンプルに、極上の素材を料理するところにあります。リコリスは、どこまでもラベンダーの魅力を支える役割に徹しています。

まるでパープルのイブニングドレスを着た女性を、優雅にアシストするブラックタキシードのダンサーのようです。

やがて、太陽に温められた干し草が心にホワッと灯が燈るような(どこか焙煎したコーヒーを連想させる)スモーキーレザーを広がらせてゆきます。そして、パウダリーなラベンダーのようで塩キャラメルのようでもある、はかない余韻にすべてが満たされてゆくのです。

耳を澄ますと、ほんのりと爽やかに香る、オレンジの花びらの香りが、ラベンダー畑を吹き抜けるミストラルの風のようで、なんともいえず詩情的です。

タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「ブラン ドゥ レグリス」を「リコリス・ラベンダー」と呼び、「「ヨウジ・オム」のスタイルに似て、甘い芳香の入ったフゼア調。」

「エレナの手によって、ベーシックな構造が見えるまでに削ぎ落されている。ラベンダーの中にローストしたキャラメルの香調、濃く塩っぽいリコリス、そして甘いクマリンのドライダウン。狙い通りのものになってはいるみたいだけれど、楽しみというよりはアカデミックな試みという印象を受ける。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。

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作品データ

香水名:ブラン ドゥ レグリス
原名:Brin de Reglisse
種類:オード・トワレ
ブランド:エルメス
調香師:ジャン=クロード・エレナ
発表年:2007年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/41,360円


シングルノート:ラベンダー、リコリス(スペインカンゾウ)、干し草