【女が階段を上る時】和服を着た女性のハッとするほどの美しさが詰まった人・高峰秀子様

高峰秀子
高峰秀子
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【女が階段を上る時】

東京オリンピックが開催される4年前の1960年、高度経済成長で湧く東京・銀座のバーを舞台に、高峰秀子様(1924-2010)が、はじめて夜の女、雇われママを演じた成瀬巳喜男監督による作品。この頃、1955年に結婚したこともあり、主婦に専念しようとしていたところ、菊島隆三(『野良犬』『蜘蛛巣城』『隠し砦の三悪人』『用心棒』『椿三十郎』『天国と地獄』『赤ひげ』)のオリジナル脚本に感動し、出演を決心したという。

黛敏郎によるジャジーな音楽と、白黒のスタイリッシュな映像美が、今は失われた『夜の銀座』の魅力を伝えてくれる中、実に自然体で『昭和の女』の凛とした姿を魅せる秀子様自身が、衣裳監督を引き受け、「想像以上の大役で痩せる思い」だったという。

秀子様曰くこの作品の肝は、「バーのマダム役でありながら、特殊な世界でなくごく平凡な一般の女としての生きる哀しさを表現しようとした、一寸野心的な作品だった」という。何よりも彼女のナレーションが秀逸である。

共演している仲代達矢(1932-2025)は、この時期、1959年から1961年まで六部で総上映時間が9時間31分に及ぶ『人間の條件』で主人公を演じる中、この作品には絶対に出演したいということで、出演を決めたという。この後、仲代達矢は、黒澤映画と共に、大俳優の道を進むことになります。

出演している俳優がかなり豪華で、森雅之、加東大介、中村鴈治郎、小沢栄太郎というベテランから、団令子、淡路恵子、若林映子、菅井きんと女優陣もかなり豪華である。

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あらすじ

圭子(高峰秀子)は、銀座のバー「ライラック」の雇われママ(マダム)である。夫に交通事故で死なれ、実家を支え、妻に出ていかれた甲斐性なしの兄(役所に勤めていたが、課長の汚職の尻ぬぐいに首になったらしい)の面倒を見るため、女手ひとつで生きていく為に、5年前から夜の世界に生きている30歳の未亡人である。

そんな圭子は、バーに出勤し、その階段を上がる時が嫌だった。しかし上がってしまえば、別の世界の中で生きていく幕が開くのである。もう二度と人を愛さない、哀しみを貫いて独り生きる女である彼女は、客になびかないママとして人気があったが、バーがトラブル続きで、売り上げが落ちており、すっかり行き詰っていた。

そこでマネージャーの小松(仲代達矢)と相談した結果、自分のバーを開業する決意をする。しかし、女を使うことな苦手な圭子は、バーの常連客である裕福な男たちから、お金を出してもらったりする駆け引きが嫌いで、上客であり大阪の実業主・郷田(中村鴈治郎)からの資金提供も、肉体関係を持つ必要があるため、お断りすることになる。

一方、元従業員だったユリ(淡路恵子)は、圭子の常連客のほとんどを奪い、近所に自分のバーをオープンし、オーナーママになっていた。ある日、圭子は、常連客と共に、敵情視察とばかりにユリの店を訪れる。かなりの人気で活気に満ちていて、ユリも高級車や高価な衣服を沢山購入し、かなり羽振りがよさそうだった。

圭子は、「ライラック」を辞め、小松と共に「カルトン」という別のバーの雇われママになった。そんなある日、ユリが借金で首が回らなくなり自殺したのを知り、水商売の非情な現実を思い知らされるのでした。

ユリのお葬式でお線香をあげている時に、早速、借金の催促に利権屋でありユリに出資していた美濃部(小沢栄太郎)の使いがやって来た。年末が近づくその夜、美濃部が「カルトン」にやって来た。圭子は、美濃部の前で、悪態をつき、泥酔し、血を吐いてしまう。

軽い胃潰瘍のため、佃島にある実家で養生することになった圭子。しかしバーのオーナーが見舞いを装い、集金の催促に来たり、水商売を辞めろと母に責められたりと心が休まらない。そんな中、上客であるプレス工場の社長・関根(河東大介)が見舞いにやってくる。同じく上客である銀行支店長の藤崎(森雅之)に好意を持っていたが、ぽっかりと開いた心の隙間に入り込むように、関根と関係を持ち、結婚の約束を信じてしまう圭子。

しかし、実は関根は、プレス工場の社長でもなんでもない虚言壁の持ち主だった...

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ファッション・シーンに与えた影響

1960年1月に公開された『女が階段を上る時』は、1959年に撮影されました。太平洋戦争で日本が敗戦し、14年目を迎えたこの作品において高峰秀子様は、はじまりから終わりまで、着物だけを着て、ジャジーな音楽が流れる現代劇の主役を演じ上げます。

銀座の雇われママを演じる彼女のファッションは、すべて秀子様自身が選び上げた着物を着ておられます。この作品がファッション・シーンに与えた影響は以下の一点です。

  1. 日本を代表する『和の美学』を知り尽くしている大女優が、厳選したキモノの美学が凝縮されている。

この作品は、水商売が脚光を浴びている、明るい未来が見えない、ニュー・ロスト・ジェネレーションであるZ世代の人々にとっても、強い共感と共に、再評価されています。

白黒の映像の中から、浮き上がる昭和の銀座の夜の世界が、ひとつのアートへと昇華した作品。日本の女の優しさと哀しさと孤独を見事に描き上げたこの作品の中の高峰秀子様は「この人は、私だ!」と思わせる、時代を超えた輝きを放ち続ける名作です。

令和の女にこそ、キモノが似合う事を教えてくれる作品とも言えます。

作品データ

作品名:女が階段を上る時(1960)
監督:成瀬巳喜男
衣装:高峰秀子
出演者:高峰秀子/森雅之/仲代達矢/淡路恵子/団令子