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パコ・ラバンヌ

【パコ ラバンヌ】ファントム(ドミニク・ロピオン/アン・フリッポ/ジュリエット・カラグーゾグー)

パコ・ラバンヌ
©Paco Rabanne
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ファントム

原名:Phantom
種類:オード・トワレ
ブランド:パコ・ラバンヌ
調香師:ドミニク・ロピオン、アン・フリッポ、ジュリエット・カラグーゾグー、ロク・ドン
発表年:2021年
対象性別:男性
価格:日本未発売

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一流調香師とAIプロセスを史上初めて融合して生み出した香り

フランソワーズ・アルディ、1968年。

ジョアンナ・シムカス、1967年。

オードリー・ヘプバーン、1967年。

1960年代半ばにピエール・カルダン、アンドレ・クレージュが前衛的なファッション・デザインを発表しました。しかし、この男のデザインは明らかに前衛的という概念を突き抜けていました。「縫うを否定したデザイン」。彼の名をパコ・ラバンヌ(1934-2023)と申します。

まず最初にジバンシィ、ディオール、バレンシアガ、シャネルのためにジュエリーデザインを行うことからキャリアをスタートしたパコ・ラバンヌは、「新しい素材で武装した戦い」を起こすんだ!と、1966年に自身のメゾンを設立しました。

そして金属、紙、プラスチックなどを使用した前衛的な〝着ることのできない12着のドレス〟を発表しました。その中のひとつ甲冑ドレスこそが、『冒険者たち』(1967)の中でジョアンナ・シムカス、『いつも二人で』(1967)の中でオードリー・ヘプバーンが着て、さらにファッション・フォトのためにフランソワーズ・アルディが着た『ファッション革命を起こした一着のドレス』なのでした。

そんなパコ・ラバンヌの香水はプーチ社により作られています。

21世紀に入り「ワンミリオン」「インビクタス」といったメンズ・フレグランスのヒット作により、欧米のメンズ・フレグランス市場で飛ぶ鳥を落とす勢いのパコ・ラバンヌが、チーフ・ブランド・オフィサーのヴァンサン・ティロワの指揮の下、2021年に生み出したのが「ファントム」です。

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ピエール・ディナンがデザインしたロボット・ボトル

©Paco Rabanne

©Paco Rabanne

〝ファントム〟という名が採用されたのは、〝幻影、まぼろし、亡霊、化身〟という意味だけでなく、ゲームや高級車を強く連想させるからでした。

ボトルの上部でスマートフォンをタップして使う、NFC(近距離無線通信)タグICを搭載した業界初のネットワーク接続型ボトル(100mlのみ)を採用したこの香りは、IFFのドミニク・ロピオンアン・フリッポジュリエット・カラグーゾグーロク・ドンとパコ・ラバンヌ独自のAIプロセスによって調香されました。史上初の「パフューム 3.0」とうたわれています。

AIプロセス:つまりこの香りは欧米の18歳から35歳の若い男性を対象に、4500万回の測定テストを行い、セクシーさ、機敏さ、漲る力という3つの心地よい感情を喚起させる究極の香りを誕生させたのでした。

ちなみにこの香りが発売された当時、パコ・ラバンヌの「ワン ミリオン」は世界で4番目、「インビクタス」は7番目に売れているメンズ・フレグランスでした。

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今まで、地球上に存在しなかった唯一無二のラベンダーの香り

©Paco Rabanne

©Paco Rabanne

流星のように煌めくレモンと、青々しくみずみずしいアップルをミックスした(マンゴー×パイナップル×グアバ×ライチ×ドラゴンフルーツがミックスされたような)スムージーが素肌に引き伸ばされていく感覚からこの香りははじまります。

その上からグリーンでフレッシュなラバンディンハートが重なってゆき、ほろ苦い甘さに満たされてゆきます。ちなみにイタリア産の天然のレモンの香りは、 (ガーデニアを思わせる)合成香料スチラリル アセテートによりピリっとした躍動感を与えてくれます。

ラバンディンハート、ラベンダーオイル、オーガニック・ラバンディン・アブソリュート・アンフルラージュという風に三段変速するラベンダーがこの香りの中心にあります。

すぐに、滑らかなラベンダーオイルが注ぎ込まれることにより、クリーミーでフルーティなラベンダーアイスクリームが素肌の上でとろけて匂い立ちます。

やがて、アンフルラージュにより抽出されたオーガニック・ラバンディン・アブソリュートが、スモーキーなベチバーとダークチョコレートのようなパチョリと共に現れ、ガルバナムのようなアイシーでメタリックなグリーンノートに包み込まれた、アロマティックなクリーミーラベンダーの余韻が残されてゆきます。

想定外であるラベンダーとグリーンシトラスの遭遇からはじまり、だんだんとメタリックなロボットを腐食して、人間の温かい心を与えていくような、ふんわりとパウダリーなバニラ・アブソリュートが侵食している感覚が、「ファントム」に唯一無二な中毒性を与えているようです。

月の裏側にある宇宙基地で量産され、地球に舞い降りてきたような、ピエール・ディナン(1931-)がデザインした、(50年代風)レトロ調のロボット型のボトル・デザインが、ユニークです。

シルヴェスターの「You Make Me Feel (Mighty Real)」に乗り、ジュリアン・ドッセーナの服を着て、イサマヤ・フレンチのメイクが施された異星人や人間が登場するキャンペーン・フィルムも、とても軽快です。

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香水データ

香水名:ファントム
原名:Phantom
種類:オード・トワレ
ブランド:パコ・ラバンヌ
調香師:ドミニク・ロピオン、アン・フリッポ、ジュリエット・カラグーゾグー、ロク・ドン
発表年:2021年
対象性別:男性
価格:日本未発売


トップノート:ラベンダー、レモン・ゼスト、アマルフィ・レモン
ミドルノート:ラベンダー、アップル、スモーク、パチョリ
ラストノート:バニラ、ラベンダー、ベチバー