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サンタ・マリア・ノヴェッラ

【サンタ マリア ノヴェッラ】アックア デッラ レジーナ(王妃の水)(サンタ・マリア・ノヴェッラ)

サンタ・マリア・ノヴェッラ
©Santa Maria Novella
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アックア デッラ レジーナ(王妃の水)

原名:Acqua della Regina
種類:オーデ・コロン
ブランド:サンタ・マリア・ノヴェッラ
調香師:不明
発表年:1533年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/15,400円、100ml/22,000円
公式ホームページ:サンタ・マリア・ノヴェッラ

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サンタ・マリア・ノヴェッラを象徴する『王妃の水』

©Santa Maria Novella

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カトリーヌ・ド・メディシス

サンタ・マリア・ノヴェッラは、世界中で現存する最古の薬局です。正確な名前をOfficina Profumo-farmaceutica di Santa Maria Novella(オフィチーナ・プロフーモ・ファルマチェウティカ・ディ・サンタ・マリア・ノヴェッラ)と呼ぶこの薬局は、1221年に、フィレンツェに移住したドミニコ会の修道僧たちが薬草を栽培し、薬剤、軟膏、鎮痛剤などの調剤活動をしたことからはじまりました。

14世紀からイタリアではじまるルネサンスの時代には、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)がオレンジの花の冷浸法を試みたように、イタリアのフィレンツェが香水文化の中心にありました。

やがて1612年に、メディチ家の盟主であるトスカーナ大公国より、正式に薬局として認可され一般に薬局として開放されるようになりました。

修道院の名が世界中に轟くようになったのは、カトリーヌ・ド・メディシス(1519-1589)が、1533年9月2日にフランス王家ヴァロワ朝のアンリ2世(父王は〝フランスのルネサンスの父〟と呼ばれるフランソワ1世)に嫁ぐ際に、王への愛の贈り物として、ドミニコ修道士たちに「アックア デッラ レジーナ(王妃の水)」というオーデコロンの原点ともいえる香水を作らせ、フランスに持ち込んだことからでした。当時二人とも14歳でした。

この香りは、彼女と共にやって来たお抱えの香水商レナート・ビアンコと共に宮廷で認められ、やがて、カトリーヌが持ち込んだ、イタリア料理や演劇、ファッションといったイタリアのルネサンス文化と共に、宮廷を訪れた世界各国の王族たちも虜にしていきました。

「アックア デッラ レジーナ」は、2021年10月まで日本では「サンタ マリア ノヴェッラ」の名で販売されていました。

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『王妃の水』が、三つのオーデコロンの母となりました。

©Santa Maria Novella

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ジョヴァンニ=パオロ・フェミニスという、イタリア人の薬剤師が、旅の途中に立ち寄ったサンタ・マリア・ノヴェッラ修道院で、「王妃の水」のレシピを修道尼より手に入れました。そしてドイツのケルンに移住した後、このレシピに触発され、1693年(1725年とも)に〝アクア・ミラビリス(驚異の水)〟を生み出しました。

この水はやがて「オーデコロン=〝ケルンの水〟」と呼ばれるようになり、三つの大きなブランドへと分かれてゆきます。ひとつは、本流であるファリナ社の「オーデコロン」です。

そして、もうひとつが、ナポレオン・ボナパルト(1769-1821)が愛用したと言われる創業一族の血を引く調香師ジャン=マリー・ファリーナ(1785年生まれ)により1806年に生み出された「オーデコロン」です。このコロンは、1862年に創業されたロジェ・ガレの「ジャン=マリー・ファリーナ」となります。

さらにもうひとつの「オーデコロン」の遺伝子を引き継いだものとして上げられるのが「4711」です。一般的にこのコロンが、世界初のオーデコロンと呼ばれているのですが、それは真実ではありません。

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現存する世界で最も古いオーデコロン

©Santa Maria Novella

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名前は〝王妃の水〟なのですが、実際のところは〝王家の水〟と呼ぶ方が相応しいでしょう。つまり、ユニセックスなのです。すべてが摘み立ての自然の恵みで生み出されたような〝王妃の水〟は、木からもいだばかりのベルガモットとオレンジが、その皮と果汁をピリっと弾けていくようにしてはじまります。

遥か昔のフィレンツェの青空の下で生み出されたこのオーデコロンに、フランスの宮廷の人々はどうして夢中になったのでしょうか?それは当時パリでは珍しかったイタリアの太陽の恵み=イタリアンシトラスの輝きを、一瞬で感じることが出来たからでしょう。

そんな心の中まで澄み渡るようなグリーンとジューシーさが広がる中、ミントのようなバジルが清らかなカリオンの音色のような静謐さで香りを包み込んでゆくのです。

深呼吸したくなる、心の澱みが洗い流されてゆく、涙を流した後に、大いなる希望と共に笑顔を取り戻してゆく、そんな言葉すべてを与えるに相応しい、ハーバルで涼しげなローズマリー、ラベンダーと、温かなクローブが注ぎ込まれ、うっとりするようなムスクの余韻が満たされてゆきます。

たとえば、京都の古寺で悠久の歴史に触れるとしましょう。その瞬間に、心を捉える様々な感情、いにしえの空間に身を置いたときの、ある種の感情が覚醒する感覚と、心から安らぎを覚える感覚、そういったものが、わずか「王妃の水」一吹きで全身にきらめくようにひろがってゆくのです。

どんなに電子機械に支配されようとも、人間が本能で感じることが出来る〝安らぎの水〟それが、世界で最も古いオーデコロンであるこの香りが、ずっとずっと時代を超えて存在してきた理由なのかもしれません。

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香水データ

香水名:アックア デッラ レジーナ(王妃の水)
原名:Acqua della Regina
種類:オーデ・コロン
ブランド:サンタ・マリア・ノヴェッラ
調香師:不明
発表年:1533年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/15,400円、100ml/22,000円
公式ホームページ:サンタ・マリア・ノヴェッラ


トップノート:イタリアンシトラスフルーツ、プチグレン
ミドルノート:ネロリ、ローズマリー、クローブ、ラベンダー
ラストノート:ムスク