伊勢丹新宿メンズ館 フレグランスコーナー
日本でフレグランスの総本山と呼べる場所があるとするなら、それは間違いなく伊勢丹新宿のフレグランスコーナーでしょう。そして、2021年3月にメンズ館のフレグランスコーナーがリニューアルされ、伊勢丹新宿はさらに充実したフレグランスのラインナップを揃えるようになりました。女性にとっても素敵な香水が集まっている穴場です。本館が混雑している時には、こちらに移動をオススメします。
場所 東京・伊勢丹新宿
住所 東京都新宿区新宿3丁目14-1 フレグランスコーナ メンズ館 1F
電話 03-3352-1111
ART EAU取り扱いの「フラパン」(コニャックを造り続けている老舗メゾン)が置かれている棚の辺りにおられる女性販売員様は、「19-69」「オブヴィアス」などの取り扱いブランドだけでなく、あらゆる香りについての知識が豊富で、この売り場において最高峰のフレグランス・スペシャリストだと思います。
阪急メンズ東京と伊勢丹新宿メンズ館のフレグランスコーナーの違い

©ISETAN MITSUKOSHI
2021年3月にリニューアルされる前から伊勢丹新宿メンズ館のフレグランスコーナーは充実しつつありました。そして〝二人の救世主〟が現れるまで都内で最も残念なフレグランスコーナーだと言われていた阪急メンズ東京のフレグランスコーナーとは、あらゆる意味において対極を成す聖地への道を歩んでいました。
ちなみに、阪急メンズ東京のフレグランスコーナー(2019年3月にリニューアル)が良くなかったのは、この館自体が、活気がないことは勿論のこと、販売員の方々それぞれに、活力がないことも原因でした(香水接客の基本が出来ていない人がほとんどで、やる気のある人もやる気が削がれていくような環境だった)。更にその中に混じっている百貨店の社員の方はさらに香水接客が出来ません。
私が不思議でしょうがないのは、百貨店の社員としてフレグランスコーナーに配属されているのに、何ヶ月経ってもほとんど知識がない状態で販売を続けている実態です(仕事に対する誇りはないのでしょうか。いいえ、それ以前に香水販売の基礎トレーニングを受けていないので、暗闇の中にいるような状態なのです)。
この売り場ではほとんどの香水販売員の皆様は、どうやら自分たちの仕事は、ムエットを渡すだけと思い込んでいる節があります(2025年10月現在、素晴らしい新任のブルーベルの男性チーフ様の活躍により、聖地の中の聖地になっています)。
基本的に、香水販売員にとって最も駄目な接客は、無気力な接客とお客様の感想を否定することです。
一方で同じメンズ館である伊勢丹新宿は、活気はあるのですが、本館と比べて接客力がどんよりと停滞している気がします(本館からメンズ館に移動された時に、多くのお客様は「なんか冴えないな」と感じてしまうことでしょう)。2021年3月にリニューアルした頃は活気に満ち溢れていたのですが、現在はそれほどでもありません。
本館にはないセルジュ・ルタンスもフルラインナップで揃っているのですが、キリアン、フレデリック・マルをはじめとする接客において、調香師についてしっかりと学んでおられる方がほとんどいません。現在の香水接客において、調香師の知識は絶対必要な事ですが、そういった知識を常にブラッシュアップすることの重要性を教わっていないようです。
サステナビリティ、エシカルな香水販売の時代にとって、香りを作って頂いた調香師の存在や香料について隠すという姿勢は、もはや時代遅れ以外の何物でもないのです。
全体的に香水販売員は低い賃金とトレーニング不足に泣いています。
伊勢丹新宿メンズ館のフレグランスコーナーは大きく分けて
- ブルーベル・・・ペンハリガン、キリアン、フレデリック・マル、セルジュ・ルタンス、パルル モア ドゥ パルファム
- カワベ・・・アクア ディ パルマ
- フォルテ・・・ソンボン
といった三つの香水代理店と、19-69、オブヴィアス、ディプティック、ヒーリー、マルジェラ、ノンフィクション、トム・フォードが集まる売り場となっています。これは今後のこういった売り場の課題なのですが、担当販売員のいないブランドは、なんとなく適当な説明(ボトルの裏を見てカンニングしながらのゾンビ接客、もしくは説明なし)でやり過ごされています。
フレグランスコーナーが、『香水の墓場』にならずに『香りの楽園』になるために必要なこと、それは香水販売員を、フレグランス・アドバイザーとして育成してゆき、適切な給与を保証することです。もはやヤリガイ搾取を継続する気満々の企業には、明るい未来なぞ存在しないことを知らねばなりません。
まず、香水の接客力の低すぎる百貨店社員のトレーニング・システムを作り変えること(フレグランス・トレーニングすら存在しない百貨店もあります。あと素人のなんちゃってトレーニングほどダメなものはありません。それはスポーツと同じです)。
残念ながら、今まで、香水に関わる企業の多くは、貧困ビジネスと言って良いほど、販売員が豊かに生きていけないシステムを変える事なく、その上に胡坐をかき続けてきました。この香水業界=貧困ビジネスの構図をなんとか打ち崩していかないと、日本の香水文化に明るい未来はございません。
これからの香水販売を行う会社に求められること。それは以下の三点でしょう。
- 取扱商品の調香師・香料をお客様にお知らせ出来る情報の開示(=商品の透明性)
- 販売員に対するトレーニングの徹底(なんちゃってトレーナーではなく、まずは本物のトレーナーを雇用しないといけない。トレーナーとはスポーツにおけるコーチなのです)
- 何よりも販売員が、「私は香水販売員です」と胸を張って言えるほどの給与
こちらのカワベの販売員の方々は、特に素晴らしいように思います。伊勢丹メンズ館8Fのイセタンメンズ レジデンスで取り扱われているアクアディパルマの最高級ライン「ノート ディ コロニア」(約5万円)の接客も素晴らしいです。
