【女囚さそり】さそりルック=女優帽とロングコートをオールブラックでまとめる

梶芽衣子
梶芽衣子
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【女囚さそり】

『北斗の拳』のケンシロウのキャラ設定に影響を与えたのは松島ナミではないかという程、セリフの少ない主人公が活躍する『女囚さそり』は、1970年に「ビッグコミック」で連載された篠原とおる(代表作『0課の女』『ワニ分署』)の人気劇画の映画化として梶芽衣子主演で1972年から4作品制作されました。

昭和の女性像を一瞬でゲームチェンジした奇跡の作品『女囚さそり』シリーズの記念すべき第一作目『女囚701号さそり』は、1972年8月25日に公開されました。

さそりと呼ばれる女囚の松島ナミが、過去に自身を裏切った男に復讐するストーリーで、ただ耐えて耐えて、一気に反撃する美しきさそり女の劇画の世界でのみ許されるキャラクターに、梶芽衣子は違和感なく命を吹き込みました。

東映の上層部が全く期待していなかったにも関わらず、予想外の大ヒットとなり、梶の歌う主題歌『怨み節』は急遽発売されることになり1972年12月1日に発売されオリコンで第6位、売り上げ枚数34.3万枚を記録しました(同時代に発売されたアグネス・チャンの『ひなげしの花』は32.8万枚、麻丘めぐみの『わたしの彼は左きき』は、45.6万枚)。

シリーズ4作品を通して、名優・怪優たちが嬉々と濃ゆいキャラクターを演じる姿を見ることが出来るものこのシリーズの特色である。以下、その代表例

  1. 『八つ墓村』の小川由美子並みにバケ猫に変身する三原葉子
  2. フルスロットルな沼田曜一無双
  3. もはや敵なし状態の白石加代子。さそりを越えた女
  4. ほとばしる小物感とその死にざま・小松方正
  5. 偽善者を演じたらこの人の右に出るものはない戸浦六宏
  6. 映画史上もっともぶっ飛んでるアイメイクの李礼仙

そしてほとんどの作品で、昭和の闇を一身に背負う渡辺やよい。昭和の俳優の凄みを感じます(物語の内容が頭に入ってこないレベル)。

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あらすじ

第1作目『女囚701号/さそり』

看守のリンチや過酷な懲罰によって管理されている女子監獄から脱獄した松島ナミ(梶芽衣子)とユキ(渡辺やよい)。

ナミは3年前に、警視庁の麻薬捜査官で恋人だった杉見(夏八木勲)に出世の道具として裏切られ、ヤクザたちにレイプされてしまう。その裏切りに対する復讐を果たそうと杉見を警察署前で襲撃するも、包丁で刺そうとしたナミは取り押さえられ最も過酷な監獄に投獄されるのだった。

脱獄は失敗に終わり、さらに地獄のような責め苦を受けながら、ナミは虎視眈々と脱獄の機会を待ち耐え続けるのだった。そして暴動が起きたどさくさにまぎれ脱獄に成功したナミは、全身黒ずくめの服を着て、かつてレイプしたヤクザたちを一人一人殺し、最後には、杉見に復讐を果たすのでした。

第2作目『女囚さそり 第41雑居房』

復讐を果たすも再び女子監獄に入れられたナミは、所長の郷田(渡辺文雄)から執拗に苛め抜かれていた。ナミが自分の片目を失明するきっかけを作ったからだ。さらに職員たちにナミをレイプするように差し向け、徹底的にナミをいたぶるのだった。

ただひたすら静かに脱獄のチャンスを待つナミの前に絶好の機会がやって来た。過去に夫が浮気した腹いせに自身の2人の子供を殺害している女囚のリーダー格である大場(白石加代子)ら6人の女囚たちと共に移送中の車から脱走するナミ。

追跡から逃れるために、追い詰められバスジャックするも、ナミ以外は全員死んでしまう。果たして、ナミは凌辱の限りを尽くされ復讐を誓った郷田の命を奪うことが出来るのだろうか!

第3作目『女囚さそり けもの部屋』

脱獄して逃亡生活を送っていたナミは、彼女の足取りを追っている敏腕刑事・権藤(成田三樹夫)に地下鉄で発見され手錠をかけられる。ナミは隠し持っていた刃物で、権藤の右腕をぶった切り、逃亡に成功する。

新宿の墓場で権藤の右腕とつながった手錠を外そうと震えているところを街娼のユキ(渡辺やよい)が助ける。ユキは頭がおかしくなった兄を売春をして養いながら精一杯生きているのだ。

縫製師としての仕事を見つけたナミは、ユキに友情を感じる中、彼女がヤクザ組織のボス・鮫島(南原宏治)から、フリーで売春していることに対して嫌がらせを受けていることを知る。

そんなある日、ついに権藤に見つかってしまったナミは、警官隊総動員で追跡され、下水道に逃げ込んだところを閉鎖され、焼き払われるのだった。しかしナミは死んでいなかった。炎の中から甦るナミ、権藤に対して殺るか殺られるかの戦いにのぞむのだった。

第4作目『女囚さそり 701号怨み節』

結婚式のウエディングドレスの着付師として働いていた逃亡中のナミは、教会で着付けの仕事をしている所に乗り込んできた元公安の敏腕警部・児玉(細川俊之)に捕まるが、護送中逃亡に成功する。

負傷したナミを偶然助けたのは、ヌードスタジオの照明係であり、元学生運動過激派のメンバー・工藤(田村正和)だった。工藤は以前、公安時代の児玉に取り調べの際リンチされ片足が不自由になっていた。

ナミは工藤に惹かれるようになり、愛し合うようになる。しかし工藤は児玉に捕まってしまい激しい拷問の末、ナミの居場所を吐いてしまい、ナミは逮捕されてしまう。

再び囚人となったナミを私的に処刑してやろうと考えていた児玉は、ナミを連れ出し、荒れ地に設置した絞首台でナミを処刑しようとするも返り討ちにあい、自らが絞首台で散ってしまいます。そしてナミは愛していたのに裏切られた工藤への復讐を果たすため、ヌードスタジオに向かうのだった。

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ファッション・シーンに与えた影響


『女囚さそり』シリーズと言えば、必殺仕事人のように暗殺=復讐を遂げる時、全身黒ずくめのロングコートに女優帽スタイルで現れるところにあります。このスタイルは梶芽衣子自身が百貨店でチョイスした組み合わせです。

そんなこの作品が、ファッション・シーンに与えた影響は以下の二点です。

  1. 1972年から73年にかけて作られた『女囚さそり』シリーズの全身黒ずくめのさそりルックが、コムデギャルソンの川久保玲やヨウジ・ヤマモトに与えた影響は計り知れない可能性があります。
  2. かなり着心地の良さそうな女囚ワンピース=ラグジュアリープリズン・ファッション

梶芽衣子の存在が日本のファッションとビューティー・シーンに与えていった影響は、日本以上に海外において凄まじく、山口小夜子に匹敵する影響力を拡大しています。

派手なメイクやヘアカラーやファッションが流行ると、その反動として純和風のスタイルに回帰する流れとなります。恐らく、露出狂スタイルがピークに達している今、これからは『見せない美学』へと、世界中の女性たちは回帰していくのでしょう。

作品データ

作品名:女囚さそりシリーズ Female Prisoner 701: Scorpion(1972-1973)
「女囚701号/さそり」「女囚さそり 第41雑居房」「女囚さそり けもの部屋」「女囚さそり 701号怨み節」の4部作。
監督:伊藤俊也(最終作のみ長谷部安春)
衣装:内山三七子
出演者:梶芽衣子/渡辺やよい/夏八木勲/成田三樹夫/田村正和