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ペンハリガン

【ペンハリガン】ジ オムニシエント ミスター トンプソン(ファニー・バル)

ペンハリガン
©Penhaligon's
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ジ オムニシエント ミスター トンプソン

原名:The Omniscient Mr Thompson
種類:オード・パルファム
ブランド:ペンハリガン
調香師:ファニー・バル
発表年:2023年
対象性別:男性
価格:75ml/45,100円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム

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氷のように微笑むアイリス×セサミミルクティーの香り

©Penhaligon’s

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影のように控えめでありながら、大きな古時計のように頼もしいトンプソン。

スパイ術(本人に言わせれば観察術)に長けた彼は、羊飼いが空を見て天気を予測するように、家族のドラマや失望を読み取っています。

タブーや触れてはならない状況を察知し、見て見ぬふりをする。まさに彼は社会のルールを読み解く名人。彼がいなければ一家は崩壊してしまうでしょう。

お屋敷の一部の壁はとても薄いのです。

公式ホームページより

2016年11月、英国のフレグランスハウス・ペンハリガンより、イギリスの上流階級の秘密を表現したコレクション<ポートレート>が発売されました。

「19世紀後半、イギリスの田園地帯に建つ大邸宅に住むジョージ卿とその家族たち、一人ひとりのキャラクターとその人間関係、ユーモア、刺激的なエッセンスを香りで表現する。」(公式ホームページより)。

その第九章として2023年9月13日に発売された「ジ オムニシエント ミスター トンプソン」には、〝全知全能のミスター・トンプソン(あるいは、名スパイかもしれません)〟という『博士の異常な愛情』のようなサブタイトルが付けられています。

ジョージ卿の執事であるミスター・トンプソンを主題とした、アイリスとセサミミルクティーがブレンドされたこの香りは、ファニー・バルにより調香されました。

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〝女性をもっともっと美しくしてくれる男性〟の香り

©Penhaligon’s

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ラムやレザーを思わせるスモーキーな香りを、クリーミーなバニラとセサミが包み込み、力強くも穏やかな印象をまとったミスター トンプソンの香り。

一族の執事である彼は、いかなるときも頼りになる心強い存在ですが、同時にスパイの達人でもあるのです。執事は目にしたことを決して忘れません。そして、常に慎重です。最高の執事は、あなたの秘密を守ります。

公式ホームページより

ポートレート・コレクションは、まるでシャーロック・ホームズやエルキュール・ポワロの推理小説のような、英国推理小説の世界になだれ込むように、遂に有能な執事が登場します。

ルキノ・ヴィスコンティの名言である「貴族の邸宅における執事とは、高級家具のように、静かに主人の影のように絶えず控えている。やがて、彼がいないとこの邸宅は何も行えなくなっていくのだ」という言葉こそが、この香りの性質を端的に言い当てていると言えます。

穏やかに広がる清らかなラベンダーに、静かにピリリと弾けるピンクペッパーとほのかに煙ぶる(ラムレモンのような)エレミが注ぎ込まれるようにしてこの香りははじまります。とても優しく心地よい包容力を感じさせます。

すぐに氷のように微笑むアイリスが、泡立つミルキーなセサミクッキーの香ばしさとふんわりしたバニラの甘さにより、清らかなラベンダーと決してひとつになることなく、それぞれの良さを引き立ててゆきます。

まるで(ちょっぴりラム酒の入った)クリーミーなセサミミルクティーが、まろやかで華やかなスパイスを煌めかせながら素肌の上を流れるように満たしてゆきます。グルマンな甘さとアイリスの花の甘さのバランスが絶妙で、その控え目なハーモニーにとてつもない作り手の感性の鋭さを感じさせます。

セサミの香りは、香水に使われることが滅多にない香りです。ヘーゼルナッツ、温かいパン、コーヒー、ピーナッツを連想させる香りで、バニラやウッディまたはオリエンタルな香りと組み合わされることが多いです。

私のパティスリーへの愛情は、感嘆にとどまらず、私の香水へのアプローチに大きな影響を与える情熱です。パティシエが必要とする正確さと創造性は、香りを創り出す芸術と共鳴します。私はグルマン・フレグランスが好きですが、ムスクや、パティスリーの世界からインスピレーションを得ることで得られるテクスチャーに特別なこだわりを持っています。それはムスクのグルマン的な側面とも類似しています。

ファニー・バル

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今、最もアツい女性調香師のひとり、ファニー・バル。


私のスタイルは、主要香料の間にある緊張感とコントラストを、魅惑のハーモニーにまで高めていくところにあると思います。

ミスタートンプソンに対して私が持っていたイメージは、そこにいないときでも存在を感じられる人です。私にインスピレーションを与えたキャラクターの1つは007でした。なぜなら、彼は私の想像の中のミスタートンプソンによく似た神秘的なオーラを持っているからです。ミスタートンプソンは常に何かを発見、解明しようと使命感を持っています。このキャラクターの背景と歴史全体が、品格、給仕の芸術、お菓子作りの世界を組み合わせた伝統的な英国のティールームに私を直接連れて行ってくれます。

ファニー・バル

ファニー・バルという、香りの哲人ドミニク・ロピオンの下で本格的な調香術を磨き上げた若手女性調香師のセンスの良さを感じさせます。真にエレガントな男性とは、隣に立つ女性よりも派手に目立つことなく、穏やかに微笑みを絶やさず佇み、隙なく彼女をエスコートしてくれる、〝女性をもっともっと美しくしてくれる男性〟の香りです。

この香りの為に、アップサイクルしたターメリックの葉が新素材として使用されています。魅力的なスパイシーさを生み出すことに成功しています。

ボトルキャップのデザインは、それぞれの香りの主人公を動物に喩えた真鍮製のものとなっています。ミスター トンプソンはエレファントです。秘密を察知する大きな耳と長い鼻=象。さらに英語で「Elephant in the room」は、見て見ぬふりをするという意味です。

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そして、この香りの特徴を捉えたボックスパッケージはクリスティヤーナ・S.ウィリアムズにより描かれたものです。

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香水データ

香水名:ジ オムニシエント ミスター トンプソン
原名:The Omniscient Mr Thompson
種類:オード・パルファム
ブランド:ペンハリガン
調香師:ファニー・バル
発表年:2023年
対象性別:男性
価格:75ml/45,100円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム


トップノート:ラベンダー、エレミ、ピンクペッパー
ミドルノート:アイリス、ブラックペッパー、ゼラニウム
ラストノート:バニラ、セサミシード、オークウッド