マンドラゴール プープル
原名:Mandragore Pourpre
種類:オード・パルファム
ブランド:グタール
調香師:カミーユ・グタール、イザベル・ドワイヤン
発表年:2009年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/33,330円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム
〝悲劇の恋の香り〟
2005年にグタールから発売された「マンドラゴール」(オード・トワレ)の究極形態として、2009年に発売されたのが「マンドラゴール プープル」(=パープルのマンドレイク)です。カミーユ・グタールとイザベル・ドワイヤンにより調香されました(ちなみに「マンドラゴール」の名は、カミーユがハリー・ポッターの本を読みインスパイアされた)。
〝マンドラゴール〟ことマンドレイクは、ナス科の植物であり、その根は人間のような形をしており、幻覚、幻聴を伴い時には死に至る神経毒が含まれる薬草として古代より知られてきました。
その根を土の中から引き抜くとき、悲鳴を上げるとも言われ、その神秘性ゆえに、古典文学においても、言及されることの多い植物です。特にシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』では、仮死状態をもたらす眠りの秘薬として使用されたのが、ベラドンナかマンドレイクの根と言われています。
ちなみに仮死状態になったジュリエットに捧げられた花はローズマリーでした。
「マンドラゴール プープル」は、ロミオとジュリエットが、愛のために生み出した陰謀の共犯者として、マンドレイクを選んだように、自らの肌に刷り込むと、〝愛を生む陰謀〟の共犯者にすることが出来る香りです。
つまりこの香りは、青空の下で明るく希望に満ちた愛を誓い合う香りではなく、古典文学のような、幸せに向かって進んでいくことは決してない、だからこそ燃えるような愛を感じさせる〝悲劇の恋の香り〟なのです。
肌に振りかけるというよりも、心に振りかけたくなる香り
最初から、不穏な空気が神秘的なムードに包まれながら運ばれてきます。グリーンなミントとビターに弾けるベルガモットを包み込むスターアニス(とジンジャー)が生み出す、香りのダーク・ファンタジーのはじまりです。
本来は、明朗快活なミントとベルガモットにその個性を発揮させないところに、スターアニスの〝決意〟を強く感じさせます。つまり、強すぎないが弱すぎない不思議な清涼感が心に届くようなトップノートです。
すぐにペッパーが静かに弾け、パチョリが、香り全体に黒魔術をかけるように、神秘的な温かみと透き通るような奥行きを与えてゆきます。
パチョリにより、この香りの奥に秘められていた熱情が、そこはかとなく香りを放ちはじめるのです。決しておもむろにではなく、あくまでそこはかとなく。それはローズマリーと(フレッシュな)ゼラニウム、そして、マートルです。どこか〝冷たい狂気〟さえも感じさせるハーバルな香りが、温かいシプレの中で、異彩を放つのです。
やがて、インセンスが、ブラックペッパーと結びつきスモーキーなヴェールで覆い尽くし、アンバー、ミルラ、ヘリオトロープの温かいほのかな甘さと溶け合いながら、心地よくすべてをスペルバウンドするように包み込んでゆくのです。
それはまるで、人肌の中で、すべての熱情を迸らせるように、内側から五感をくすぐるように香り立ちます。だからこそ、この香りと一晩付き合ってみると、芯の強い人と触れ合う心の安らぎと、自分みたいな相手で満足してもらえるのだろうか?という不安を同時に感じさせてしまうのです。
肌に振りかけるというよりも、心に振りかけたくなる香りであり、心に埋まるマンドレイクを引き抜きたくなる香りでもあります。それでいて、心の不安を押し隠すように、威風堂々としている自分を演出してしまう、他人に自分という人間の評価を過度に高めてしまう香りです。
香水データ
香水名:マンドラゴール プープル
原名:Mandragore Pourpre
種類:オード・パルファム
ブランド:グタール
調香師:カミーユ・グタール、イザベル・ドワイヤン
発表年:2009年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/33,330円
販売代理店ホームページ:ラトリエ デ パルファム
トップノート:スターアニス、ミント、ジンジャー、ベルガモット
ミドルノート:ペッパー、ローズマリー、ゼラニウム、アンバー
ラストノート:インセンス、パチョリ、ヘリオトロープ、マートル、ミルラ