ロー ド ネロリ
原名:L’Eau de Neroli
種類:オード・トワレ
ブランド:ディプティック
調香師:オリヴィエ・ペシュー
発表年:2008年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/23,100円
公式ホームページ:ディプティック
〝ネーロラの公妃〟の水
ディプティックが1968年に発売した最初のフレグランス「ロー」の40周年を記念して発売された3種類のコロンのうちのひとつが「ロー ド ネロリ」でした。三種類ともオリヴィエ・ペシューにより調香されました。
「ネロリの水」の名の通り、ビター・オレンジから水蒸気蒸留法によって抽出されるネロリ精油を主役にした香りです。
ネロリの語源は、この香りを愛用していたウルサン公爵夫人、マリー・アンヌ・ド・ラ・トレモイユ(1642-1722)が、イタリア・ラツィオのネーロラのオルシーニ城に住んでいたことから〝ネーロラの公妃〟と呼ばれていたことからです。
〝ネーロラの公妃〟は、ルイ14世の孫フェリッペ5世(1683-1746)が、スペイン・ブルボン朝最初の国王になることに成功したスペイン継承戦争(1701-1714、フランスと英国が世界の覇権をめぐり戦い、結果的に大英帝国の覇権が確立された)において暗躍した女傑でした。
公妃は、躁うつ病の夫フェリッペ5世を支えていた王妃マリア・ルイーザ・ディ・サヴォイア(1688-1714)の後見役として、権謀術の渦巻くスペイン王室において、中心的な役割を果たしていたのでした。
当時ヨーロッパの貴族の間で流行していた革手袋の悪臭を隠すために彼女はビター・オレンジの精油を使用しており、沐浴にも使用していたのでした。
実に興味深いのは、この戦争によりスペインは、シチリア島を喪失することになるのでした。シチリア島とは7世紀にアラブ人によりビターオレンジがもたらされた一大産地でした。
この香りは、カラブリア地方でビター・オレンジが収穫される頃、近隣で生息しているベルガモットのみずみずしい芳香と重なり果樹園を満たしてゆく爽やかな香りをイメージしています。
ネロリの持つ効し難い魅力で、優しく愛してくれる香り。
太陽の恵みを受けるベルガモットの透き通るような快活な煌きに、レモンバーベナが加わり、プチグレンが溶け込んでゆき、ピリッとグリーンウッディな上品な香り立ちからこの香りははじまります。すぐに、タラゴンがアクセントを効かせてゆきます。
やがて、爽やかなネロリとオレンジブロッサムが香り全体を包み込んでゆきます。弾けるようなキレのよいオレンジフラワーではなく、バニラのような蜜蝋により、温かい風に乗ってやって来たジューシーなオレンジフラワーの香りです。
この香りの名が、「オレンジの水」ではなく「ネロリの水」である理由がよく分かります。〝ネーロラ公妃〟の水、それは、美しいオレンジフラワーの芳香の中に潜む女性の情欲を呼び覚ます香りなのです。そして、男性がこの香りを身に纏うと、そんな女性の効し難い魅力に気づかないうちに心地よく引き込まれてゆくのです。
そして、ゼラニウムがほのかにソーピィーな側面を与えながら、ホワイトムスクが注ぎ込まれ円やかにクリーミーな軽やかなオレンジフラワーの余韻を残してくれるのです。
クラシカルなオレンジフラワーの香りでありながら、ほのかな官能性を感じさせる温かい香りです。
香水データ
香水名:ロー ド ネロリ
原名:L’Eau de Neroli
種類:オード・トワレ
ブランド:ディプティック
調香師:オリヴィエ・ペシュー
発表年:2008年
対象性別:ユニセックス
価格:100ml/23,100円
公式ホームページ:ディプティック
トップノート:カラブリア産ベルガモット、レモンバーベナ、パラグアイ産プチグレン、タラゴン
ミドルノート:ネロリ、チュニジア産オレンジブロッサム、エジプト産ゼラニウム
ラストノート:蜜蝋、ホワイトムスク、シダー、インドネシア産パチョリ