オードシャルロット
原名:Eau De Charlotte
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:アニック・グタール
発表年:1982年
対象性別:女性
価格:不明
アニック・グタールが娘シャルロットのために創った香り
ピアノの神童として、英才教育を受け、ファッションモデルとして、若き日々を英国で過ごし、グラースで出会った、香水文化に一瞬で恋に落ち、生涯を〝香り〟に捧げたアニック・グタール(1946-1999)。
1981年に生み出した「オーダドリアン」の成功により、同年ベルシャス通りに一号店をオープンしたアニック・グタールは、1980年に再婚した夫アラン・ムニエ(有名なチェリスト)の連れ子シャルロットのために1982年に「オードシャルロット」を調香しました。
子供特有の傲慢さが伴うフェミニンで無邪気な香りを作りたいと思いました。
アニック・グタール
当時11歳だったシャルロットは、母に「どんな香りをつけてみたい?」と聞かれ、〝ブラックカラントのジャムとココア〟が欲しいと答えたところから全てははじまりました。
香水の素晴らしさとは何か?突然青いネコ型ロボットが、つくえの引き出しから現れて、その中に導いてくれるように、ある時代に連れて行ってくれる所にあります。「オードシャルロット」は、間違いなく50年代から70年代のパリに連れて行ってくれる香りです。
ジャンヌ・モローが愛した香り
25歳で老けている人もいれば、まるで大人にならない人もいる。カップルの年齢差なんてそれを見る人の心にあるのよ。若い人、年取った人、それは白人対黒人と同じように差別なのよね。年齢は重要じゃないわ。
ただ、生きているってことが重要なの。若作りでも、実際に若々しく見えることだってある。でも若さが過ぎ去った後は、感情がもろに顔に出るものよ。若々しい表情が目から消える代わりに人生の経験が目に現れてくるの。
ジャンヌ・モロー
まだ高級コスメが一般的ではなかった時代の高級コスメの匂いを連想させる、香りという名のタイムトラベルがはじまります。パウダリックなミモザの花の蜜にやわらかく全身が包み込まれていくような感覚からこの香りははじまります。
ミモザの中から立ち上る凛としたスズランと甘酸っぱいブラックカラント(カシス)の香りのコントラストはあくまでも優しく心の中を吹き抜ける郷愁の風のようです。
きみは風まかせで飛んでいる羽根のようだ
ピエール・カルダンからジャンヌ・モローへのラブレター
そして、だんだんとクリーミーなカカオとバニラが、心の中に溶け込んでいくように、まろやかに滑らかな余韻を残してくれます。
それはまるで、オードリー・ヘプバーンやブリジット・バルドー、そして、実際にこの香りを愛用していたジャンヌ・モローが輝いていたあの時代のパリに飛んでいけそうなメランコリーな気分を運んでくれます。
アニック・グタールの真骨頂、それは、失われたすばらしき世界を、香水瓶の中で、未来永劫のものに出来る感性にあります。彼女の手にかかれば、古臭い化粧品のようなパウダリーな香りの中に、スズランの鈴の音を聞き、カシスジャムのついたクッキーで食欲をそそらせ、カカオのクリーミーな余韻にうっとりさせることを同時にやってのけることが出来るのです。
タニア・サンチェスは『世界香水ガイド』で、「オードシャルロット」を「石鹸様グリーン」と呼び、「ホワイトフローラルとカシスの組み合わせは、それ自体も石鹸風の香りがする安い男性向け香水のような感じだけれど、ふしぎなことにけっこう良質な原料から作られているみたい。時間が経つにつれて、香りがなじんでくる。ジャムと葉の多いローズの濃い香り。」と3つ星(5段階評価)の評価をつけています。
香水データ
香水名:オードシャルロット
原名:Eau De Charlotte
種類:オード・トワレ
ブランド:グタール
調香師:アニック・グタール
発表年:1982年
対象性別:女性
価格:不明
トップノート:百合、ブラックカラント
ミドルノート:ミモザ、スズラン
ラストノート:カカオ、バニラ