カリヨン プール アン アンジュ 天使のカリヨン(組み鐘)
原名:Carillon pour un Ange
種類:オード・パルファム
ブランド:タウアー・パフューム
調香師:アンディ・タウアー
発表年:2010年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/24,200円
元々はガブリエルと名づけられた香り
2005年に、アンディ・タウアーによってスイスで創設されたニッチ・フレグランス・ブランド「タウアー・パフューム」。その11番目の香りとして、2010年に、アンディ・タウアーにより調香されたスズランの香りは、彼自身がスズランの香りを作りたいがために調香師になったということもあり、空前絶後の歴史的傑作といえる〝唯一無二のスズラン〟です。
アンディは元々、この香りを創造するにあたりガブリエルという名のスズランの香りを想定していました。
まず私たちがタウアーの香りを嗅ぐときに、心に留めておくべきことは、タウアーの香りは実に抽象的であるということです(つまり香りの特定が実に難しい)。
春の来訪を歌うように告げるスズランのフレグランスを創ることは、私が調香をはじめた頃からの宿願でした。だからこの香りは、素晴らしき森林の宝物への私の賛辞なのです。花々のグリーンコーラスをお楽しみください。
アンディ・タウアー
「カリヨン プール アン アンジュ」とはフランス語で〝天使のために捧げるカリヨン〟の意味です。カリヨンとは、17世紀にフランドル地方(ベルギー、オランダ)で流行した教会の鐘楼に設置された組み鐘(複数の鐘により旋律を奏でることが出来るようになっている)のことです。
私の中でのカリヨンのイメージは「リボンの騎士」のオープニングで登場する組み鐘です。それは幻想的であり、夢の国に存在するようなものです。
天使と悪魔の二面性を持つスズランの香り
スズランの香りでありながら、トロピカルなイランイランと(スパイシーなローズと、ハニーの強いライラックの調和が生み出す)プルメリアのような香りのブレンドからこの香りははじまります。実に見事なのは、温かい熱帯の甘い風と思いきや、突然、悪魔が横切る瞬間にあります。謎の死臭を放つハーブです。
私はどうやら「悪魔を憐れむ歌」もしくは「悪魔が来りて笛を吹く」という名の香りを身に纏っているのだろうかと感じた瞬間に、間髪入れずにグリーンノートが、天地創造のように、全ての香りの流れをひっくり返し、まるで組み鐘が鳴り響くようにスズラン(ヒドロキシメチルペンチルシクロヘキセンカルボキシアルデヒド)の香りを五感に鳴り響かせてくれるのです。
そして、その鐘の音に合わせて天使が光臨し、クリーミーな余韻をスズランに加えていきます。
やがて賛美歌が奏でられます。どうやらこの賛美歌は、甘いジャスミンのようです。ここでこの香りの非凡さとタウアーの天才性が示されるのですが、知らず知らずのうちにクミンのようなシダーのようなレザーの香りが、スズランの香りの中に紛れ込んでいくのです。
それは、天使は、天国から誕生するのではなく、大地から誕生したのだと言わんばかりのオークモスとウッディノートの大いなる大地の香りへと結びついてゆき、この天使に捧げられし鐘の香りは、賛美歌のクライマックスと共に、肌の上で、アンバーグリスの祝福を浴びながら、天使と共に、私たちの心を芸術に包まれるあの瞬間=至福のひと時へと導いてくれるのです。
この香りの面白さは、この香りに天使を見る人と、悪魔を見る人それぞれが生まれているという事実です。
悪魔を見る人々にとって、この香りは、真夏のゴミ袋の中で放置された二日目の野菜の香りであったり、ファストファッションの工場の産廃水が海に流れ込んでいるような汚染された海水の香りです。
一方で、この香りから天使への賛美の鐘の音を聞き取ることも出来るのです。まさに「天使と悪魔の二面性を持つスズランの香り」なのです。
この香りを調香した瞬間、アンディ・タウアーは、調香界のダンテ・アリギエーリと呼ぶに値する存在へと昇華したのでした。
香水データ
香水名:カリヨン プール アン アンジュ 天使のカリヨン(組み鐘)
原名:Carillon pour un Ange
種類:オード・パルファム
ブランド:タウアー・パフューム
調香師:アンディ・タウアー
発表年:2010年
対象性別:ユニセックス
価格:50ml/24,200円
トップノート:ローズ、イランイラン、ライラック、スズラン
ミドルノート:スズラン、ジャスミン、レザー
ラストノート:アンバーグリス、オークモス、ウッディノート